14話 遭遇…?
今回は少し短いかもしれません。
あの後、俺は目的地である中学校へ向かって歩き続けた。もちろん、時々休憩を挟みながら。そうして、俺は中学校までの道のりの約半分程度まで来ていた。
「んー、こんなに遠かったっけか?」
当初の想定ではもう着いても良い頃だった。だが、まだ半分を過ぎたところ。
「モービルに慣れすぎて、距離感がバグってたのか?……いや、それもあるだろうけど、原因はやっぱりあいつら、だな」
ぼそぼそと愚痴のような独り言を漏らしながら、俺は遅れの原因となった奴らについて思い出していた。
俺が兎を殺し、その場を去った後から今までの間に、2度の襲撃があった。1度目は、突然脇道から飛び出してきた小さな豚。2度目は、休憩中に空から襲ってきたカラスもどき達。
前者の小さな豚に関しては、さほど問題ではなかった。おそらく子供だったのか、動きも遅いし、さほどの脅威も感じ取れなかった。あの兎に比べれば、この豚は楽な部類だったと思う。しいて言えば、動く相手に弾を当てるのが少し難しかったくらいだ。あの時の兎は動けない状態だったから一発で当てられたが、豚に関しては、仕留めるのに五発も使ってしまった。。
最悪だったのは、後者のカラスもどき達。こいつらは、3羽の群れで襲ってきやがった。しかも、俺が休憩している時を狙ってだ。悪知恵が回ることこの上ない。それに加え、相手は空を自由自在に飛ぶ鳥。最初は、四方から攻撃してくる奴らを交わしながら、隙を見てハンドガンで狙っていた。一羽は、それで撃ち落とせたものの、それ以降は向こうも慎重になり、当てることが出来なくなった。
弾が全然当たらないことに対して、俺は徐々にフラストレーションが溜まっていった。そして、我慢の限界に達した俺は、M4をフルオートでばら撒いた。マガジン一つを撃ち尽くした後、奴らを探すと2羽とも地面に落ち、死んでいた。
俺は弾を無駄にしてしまったことを後悔しつつ、身の安全が優先だと言い聞かせ、自分の行動を正当化した。そしてその後は、その場をすぐに離れた。予定よりも派手な戦闘をしてしまった為に、他の何かを呼び寄せてしまったのではないかと思ったからだ。
そうしてその場を離れた俺は、銃の弾を込めなおし、準備を整えてから再度行動を開始した。そして、少し歩いて今に至る。
ちなみに、準備を整えた後、気になってカラスもどきの様子を見に行くと、そこにはどでかい犬がいた。その犬は俺と同じくらいの大きさで、俺が殺したカラスもどき達を一心不乱に貪っていた。離れたところからそれを見ていた俺は、気付かれませんように、と祈りながら、ゆっくりとその場を後にした。
ちなみに、襲ってきた鳥をカラスではなく、わざわざカラスもどきと呼んでいるのには訳がある。それは、奴らの頭が1つではなく、2つあったからだ。つまり、一羽が二つの頭を持っていたのだ。
「あれは俺の知ってるカラスじゃない。というか、頭が二つある鳥なんて、聞いたこともない」
動物には時々、双頭で生まれてくるものがいるのは知っているが、それは単なる異常固体。今回のカラスもどき達は、おそらくそれではない。なにせ、3羽すべてが双頭だったのだ。十中八九、双頭であることはやつらの普通なのだと思う。
最初の犬、兎、豚までは、まだ地球の生物であると説明できた。ちょっと狂暴だったり、攻撃の威力が異常なことは置いておくとしても、最低限見た目はまともだったためだ。だが、カラスもどき達は違った。姿かたちからして、おそらく地球の生物ではない。
「…ゾンビ映画かっつーの」
もっとも、犬や兎たちもおそらくカラスもどきと同じ部類に入るのだろう。あまり認めたくはないが、あんな奴らを普通の動物と一緒にしてはいけない気がする。もし同じカテゴリでくくろうものなら、普通の動物たちが、やめてくれと泣いて懇願してくるに違いない。もし俺が動物の立場だったら、ゾンビと一緒にはされたくない。
「はぁ……こいつらがあって本当に良かった。父さんには感謝しないとな」
俺の身を守ってくれている銃たちを撫でながら、俺は天国の父さんへの感謝を口にする。
「こいつらが無かったら、とっくに死んでたかもな」
もしそうなっていた時のことを軽く想像し、身震いする。でかい犬やカラスもどきに食われている俺が容易に想像できた、できてしまった。
「…大事に使わないとな」
父さんの形見でもあるこいつらのことを、できるだけ大切に扱おうと俺は決心したのだった。
そんなことを考えながら歩いていると、視界の端で植物の葉が揺れた。俺は一気に警戒態勢に入り、手早くM4を構えた。勿論、セーフティの解除は忘れずに。
すると、その直後、揺れていた植物から何かが飛び出してきた。俺はすぐさま引き金に手をかけ、いつでも発砲できる状態に入る。
しかし、俺の視界に入ってきたのは動物などではなく、少女だった。しかも、その少女はとても綺麗なブロンドヘアを持ち、高級そうなドレスを身に纏っていた。
「なっ…」
俺は予想していなかった状況に一瞬硬直してしまう。この不思議な状況をなんとか処理しようと脳みそがフル回転を始めたその時、こちらを見た少女と目があった。
「助けてくださいっ!!!」
彼女はそう叫ぶと、こちらに向かって脱兎のごとく駆け出した、何かから逃げるように。すると、彼女の後ろからその何かか姿を現した。それは、真っ黒な犬だった。その犬は周囲を見渡すように頭を振る。そして、逃げている少女の姿を見つけると、獲物を見つけたと言わんばかりに地面を蹴った。俺の思い違いでなければ、犬は嬉しそうな楽しそうな表情を浮かべている。
こちらに逃げてくる彼女の背後に犬が見え、俺、少女、犬が一直線に並んだ。
その時になってようやく、彼女の叫びの意味を理解した俺は、彼女に向かって咄嗟に叫ぶ。
「避けてっっ!!」
それと同時にM4をフルオートにし、彼女に向かって照準を合わせる。すると、俺の意図を理解した少女が意を決し、真横に跳んだ。
俺は、彼女の身体が射線から外れた瞬間、思いっきり引き金を引いた。
「当たれぇぇぇぇっ!!」
セミオートという縛りから解放されたM4からは、銃弾が連続で放たれる。そして、その銃弾たちが犬の身体を蹂躙していく。
「ギャ⁉」
一発一発の銃弾が発射されるごとに、殴られたような衝撃が肩に伝わってくる。その衝撃に必死に耐えていると、突然銃声が止んだ。俺の指は引き金を引き続けたまま、つまり、マガジン一つを打ち切ったのだ。
今まで以上の白煙を吐き出しているM4をよそに、リロードとコッキングを手早く行う。なるべく、犬からは目線を外さないように。
そして、俺は次弾を発射しようと引き金に手をかけた。しかし、標的の犬が地面に倒れ動かないのを見て、引き金から手を離し、銃を腰の位置で構えなおした。
俺はそのまま、ゆっくりと犬に近づいていき、犬の少し手前で足を止める。少し離れた場所から犬の様子を観察した俺は、犬がすでに死んでいると判断した。念のため、数発撃ちこんでみるが、犬の身体は反応しない。
「…よし」
脅威が去ったことを確証した俺は、安堵の言葉を漏らした。そして俺は振り返り、震えながら地面にうずくまっている少女を見る。ぱっと見だが、彼女の身体に銃弾が当たった様子は無かった。
「よかった、無事みたいだ」
俺は震える少女に近づき、しゃがみながら彼女の肩に優しく触れた。
「もう、大丈夫だよ」
そう声をかけると、少女はビクンと体を跳ねさせた後、ゆっくりと体を起き上がらせた。そして、振り返り俺の顔を見ると、両手を広げ俺の胸に飛び込んできた。
「おわっ!」
咄嗟にM4から手を離し、彼女の身体を受け止める。すると、彼女のすすり泣く声が聞こえてきた。
(まぁ、怖いよな。こんな化け物に襲われたら)
俺は、彼女の背中を優しく叩きながら、大丈夫大丈夫と繰り返し呟いた。できるだけ優しく、彼女が落ち着けるように。
しかし彼女をあやす一方で、俺は別のことを考え、少し肝を冷やしていた。それは彼女が突然抱き着いてきた時のこと。
(M4、暴発しなくてよかった……)
一歩間違えれば、彼女のお腹に穴が開いていたかもしれない。
それゆえに、今後はもっと銃の扱いに気を付けようと俺は決心した。またそれと同時に、彼女に銃の危険性を後で伝えておこうと思ったのだった。
異世界と言えば金髪美少女ですよね。(違う)




