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異世界来訪譚  作者: yu-ki
10/14

10話 別れ

10話目です。

少し短いです。

「お父様っ!!」

気が付くと私はお父様の名前を叫んでいた。しかし、お父様から返ってきたのは拒絶の言葉だった。

「来るなぁぁっ!!」

感じたことのないお父様の声色に、一瞬足が止まる。

「アルベルトォッ!!」

お父様は最後にそう叫ぶと、男との戦闘を開始した。お父様の神剣が十数本に分裂したかと思うと、それが宙に浮き、男の攻撃をはじき返している。それを見た私は、勝てる、そう思った。そして私は、止まっていた足を動かし、お父様の元へと向かおうとした。しかし、それは叶わなかった。

「姫様っ、いけません!」

アルベルトはそう言いながら、私のことを後ろから抱きしめた。しかし私はそれに抗って、前に進もうとする。

「アルベルトっ、見てください!お父様が押していますっ!私たちが加勢すれば、あの男を倒せるはずですっ!」

目の前に勝利の糸があるのだ。それを掴まないわけにはいかない。

「ダメです、姫様!」

しかし、アルベルトは私を離そうとはしなかった。

「なぜですっ!?」

私には分からなかった。アルベルトが私を止める理由が。今、お父様に加勢すれば勝てるというのに。

「あれは―陛下のあのお力は、長くは持たないからです!」

アルベルトは、私の疑問にそう答えた後、さらに続けた。

「陛下のあのお力は、神剣の力を無理やり解放しているもの。わずかな時間であれば、あの男を圧倒できるかもしれませんが、決して長くは持ちません!」

アルベルトのその言葉を聞いた私の頭には、お父様の死が思い浮かんだ。

「で、では私たちで助け…」

「なりません!」

お父様たちを助ける提案をしようとしたが、アルベルトがその途中で言葉を被せる。そして、アルベルトは言葉を続けた。

「陛下は、自らの命を犠牲に時間を稼いでくださっているのです。それは私たちのためにではありません。他でもないアイスティア様、あなたのためにです」

アルベルトは苦しそうに言う。私はその言葉に、何も返せなかった。おそらく、私も心のどこかで気付いていたのだろう。お父様とお母様の覚悟というものに。

信じたくない現実を突きつけられた私は、俯き黙る。その様子を見たアルベルトが私に謝罪をした。

「…本来であればこのような無礼、極刑に値します。しかし、今だけはどうかお許しください」

そう言うとアルベルトは、私のことを横向きに抱えた。私の足が地面から浮き上がり、宙を漕ぐ。私はアルベルトが何をしようとしているかを察し、声を上げる。

「アルベルトッ!どうか、どうか最後に一言だけでもっ!!」

私はアルベルトの腕の中で、懇願した。

「お父様たちの覚悟は理解しましたっ…もう助けに行こうとは言いません!ですが、最後に一言だけ、お父様とお母様に感謝を伝えたいのです!!」

私の請願(せいがん)を聞いたアルベルトは、苦しそうな表情で唇をかんだ。彼の口から一筋の血が流れ落ち、私の頬を打つ。

アルベルトは私の願いに反し、お父様たちへ背中を向けた。

「申し訳ありません、姫様。私は託された身。それゆえ……」

アルベルトはそう言うと、地面を蹴り、方舟に向かって走り出した。

「アルベルト、お願いです!どうかっ!」

私はアルベルトへお願いをし続けるが、彼が止まる気配は一向にない。私はアルベルトの腕の中で、どんどんと遠ざかっていくお父様たちを見つめ、手を伸ばす。

「お父様っ、お母様っ、私はとても幸せでした!二人の子供として生まれ、今までの日々を過ごす中でお父様たちの子供であったことを後悔したことなどありません!」

ここからでは聞こえているか分からないが、私は精いっぱい声を張り上げる。

「楽しいこと、嬉しいこと、悲しいこと、辛いこと、そのどれもが私の宝物です!お父様たちと過ごした時間すべてが宝物ですっ!」

私の目からは涙が溢れ、お父様たちを見つめる視界が少しゆがむ。私の頬を伝った涙が、アルベルトの服を濡らすと、私を抱える彼の手が少し震えたように感じた。

「これからも私の宝物を増やしていきたい!もっとお父様たちと過ごしたいっ!…でも、それが叶わないと言うならば、私は!」

私はアルベルトの服を握りしめ、宣言する。

「お父様たちから貰った宝物を糧としてっ、強くなります!…強くなって、そして、必ず幸せになると誓います!!」

私がそう宣言した直後、アルベルトは速度を落とした。おそらく、方舟に着いたのだろう。そして、アルベルトは私を抱えたまま方舟へと乗り込んだ。

もう時間がない、そう察した私は、最期の一言を口にする。

「お父様とお母様のことを心から愛しています!これまでも、これからも、何があろうと……大好きだよっ!!!」

私がそう言い終わると同時に、方舟の扉が閉まった。アルベルトは、ゆっくりと私を降ろし、無言で私を抱きしめた。

これでもう、二度とお父様たちとは会えない。その悲しみと苦しみが心を覆いつくす。私はそれに耐えるように、アルベルトに抱き着き、しばらくの間、声を上げて泣いていた。

本作品を読んで頂き、ありがとうございます。


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