一話 いつもの日常
初めまして!yu-kiと申します。
投稿しようかどうか迷いましたが、思い切って投稿してみることにしました。
処女作ですので、至らない点が多々あると思いますが、手にとって読んで頂けたら幸いです!
階段を上る足音がかすかに聞こえる。
(もう朝か…)
うっすらと目を開けると、カーテンの隙間から漏れる光が目に入る。それがやけにまぶしく感じて、再び目を閉じる。起きなければ、と頭では分かっているが、体が言うことを聞かない。
昨日の疲れのせいもあるのだろうが、おそらく自分の怠惰な性格が根本の原因だろう。
うとうとした頭でそんなことを考えていると、部屋のドアがバンッと勢いよく開かれる。
「おはよう、お兄ちゃん!朝だよっ、起きて!」
薄目を開けると、制服の上にマイエプロンを身に着けた妹が腰に手を当て、満面の笑みをこちらに向けていた。
「…あと五分」
俺はそう言って、妹に背を向け、二度寝の態勢に入る。
「もうっ!」
俺のいつも通りの行動を見た妹は、ベッドのそばまで来ると、布団をつかんで、
「ご・は・んが冷めちゃうでしょ!」
と、勢いよく布団を剥いだ。
「さむっ!」
冷たい空気に当てられ、うとうとしていた頭が目を覚ます。反射的に体を縮ませ、暖を取ろうとするがその行動にさほど意味はなかった。
「もうっ、私がいなかったら毎日遅刻だよ?」
呆れながらも、少しうれしそうに愚痴をこぼす妹。
彼女の笑顔と、1年前から日常と化したこのやり取りに少し安心感を覚える。おそらくだが、朝の寒さとこの妹には一生勝てないと思う。
「分かった、起きる。起きるよ」
いつも通りの二度寝を妨害され、観念した俺はゆっくりと起き上がる。その姿を見た妹は、再度腰に手を当て、笑みを浮かべる。
「よろしいっ。じゃあカーテンも開けてっと」
ルンルンな様子で窓に近づき、カーテンを開ける妹。すると、太陽の日差しが部屋にいっそう充満する。
日光を浴び、一日が始まったことを徐々に認識し始めた体が空腹を訴える。
「そういえば今日の朝ご飯は?」
俺は妹にそう問いかけた。カーテンを窓の両脇で束ねていた妹はそれを聞き、こちらを振り返る。
「んーと今日はね、焼き鮭、わかめのお味噌汁、炊き立てごはん!あ、あと昨日の残りのポテトサラダだよっ。お兄ちゃん、わかめのお味噌汁好きでしょ?」
指を折りながら、得意げに今日の献立を披露する妹。
「ああ、好きだよ」
俺の好みはこの半年でとっくに把握されている。兄としては情けない話ではあるが、妹がいなかったら今頃どうなっていたか分からない。
「こんなできた妹をもって、お兄ちゃんは幸せだよ…。うぅ、ぐすっ…」
ふとした幸せをかみしめながら、腕で泣き顔を隠す。
「はいはいっ、いいからいいから。じゃあ、早く降りてきてよ?さっきも言ったけど、早くしないとご飯冷めちゃうよ」
バレバレな嘘泣きを披露した俺をいつものようにあしらい、妹は部屋を後にする。もちろん泣いたのは嘘だが、妹への感謝は本心からのものだ。
直接言うのはむずがゆく、冗談めかして言ってしまったが、彼女の足取りと陽気な鼻歌を見るに、俺の気持ちはちゃんと伝わっているようだ。
妹が階段を下る音を聞きながら、目一杯背伸びをすると、固まっていた体からポキポキと音がこぼれる。
「ふぅ。じゃあ今日も一日頑張りますか」
ベッドから立ち上がり、妹の後を追うように自分の部屋を出る。今日もいつもと変わらない、平穏無事な一日であることを願いながら。
少し短い一話でしたが、いかがでしたでしょうか?
ゆっくりと投稿していくことになるかと思いますので、気長に待ってもらえるとありがたいです!
感想や誤字脱字報告もお待ちしております〜