いままで の ごほうび
「みなさんおはようございます! 朝ですよー!!!」
スマホからハジメの声が聞こえてくる。
が、私はベットから起き上がることもなく二度寝を決める。
そして起きた時には昼になってて、食堂に向かい昼食を食べる。
他のメンバーと他愛ない話をしては部屋に戻り、
スマホやゲーム機をいじり、気づけば晩になり晩飯を食べ、風呂に入り寝る。
これが、組織の一員としての一日。
食堂のメニューはメンバーの希望通りになる。
ゲーム機や遊び道具は希望すれば支給してくれる。
だがこの世界に来て、一度も『対抗』行為を行っていない。
それどころか、この施設の中では転生者の力が禁止されている。
転生者としての武器である能力を禁じられ、
あろうことか能力の試用ですら禁じられ、
私は、なんのためにこの組織にいるのだろうか?
「”なんのために”、ですか。それはもう、戦ってもらうためにですよ~!」
何も言っていないのに、ハジメはひとりでに喋りだす。
彼女はまるでエスパーかのように私の思考を読んでくる。
喋る気力のない私は頭で言葉を思い浮かべた。
『戦うといって、もう7年も経ったじゃないか。』
「それはまぁ、確かに長すぎるような気がしますね……。
もしかして、戦いの衝動が抑えきれませんか? シュッシュッ!!」
『そうじゃない。外のことがまったくわからない。
自分たちはこんなことをしていて大丈夫なのだろうか?』
「これで34回目の類似質問ですよっ! 大丈夫ですってば!
ここは組織の人が作り上げた天国みたいな場所なんですから!」
天国? ここが?
確かに、前世の自分からすればここは天国だ。
好きなものを食べれる。好きなもので遊べる。
メンバーと一緒にスポーツをしたり、映画を見ることもできる。
仕事に追われに追われていた自分が求めていた癒しそのものだ。
だが、やるせない。
この世界に来て、ここに連れてこられて、自分は自堕落なままだ。
やるべきことがあるのなら、それに立ち向かいたい。
だが、なにもさせてくれない。
メンバーとしてここにいるはずなのに、役に立つことなどなにもしていない。
それでいいのか?
「それでいいんですって。なにせ、あえてそうしてますし。
ここで名一杯遊んでおけば、戦いで怠けるようなこともないですからね。
みなさんを勤勉にさせるために、遊びを飽きさせるという手法をとっています。
……って、もうこれ何回も言いましたよ! 記憶喪失にでもなってるんですか!?」
こんな日常など忘れたい。
こんな同じことの繰り返しでしかない日々は、いつ終わるのだろう。
いつかの終わりばかりを考えていたら、だんだん眠たくなってきた。
「……ね、寝るんですね。おやすみなさい……。」
心と耳に蓋をして、私は意識をベットに委ねた。
「……蓋できてませんよ。駄々洩れですよ。」
……Zzz