表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
11/12

リンカネーション・レジスタンス_2


今日の予定されていた仕事はこれでおしまい。

自室に戻った私は、面倒ごとを投げ捨てるかのように服を脱ぎ散らかし、

全身の力を抜いてベットの上に寝ころんだ。


「ヒスイさぁぁん……また私を忘れていきましたねぇぇ……」

「あなたのような得体のしれないものを持っていけるわけないでしょう。」


机に置いていたスマホからハジメの声が聞こえてくる。

気怠いまま起き上がり、ベットの隅に座って話を始めた。


「異世界に得体の知れないものは付きものですよ!!!

 こんなところにいるのに現実味を求めないでください!!!」

「スマホの中でAIを名乗るような現実味の塊が何言ってるんですか。

 この世界に合わせるのであれば妖精とか、喋る本とかでしょうよ。」

「うっ……それはぁ、こ、心に刺さりますね……。

 いままでも同じようなこと結構言われましたよ……この前だって___」


彼女はいろいろ愚痴り始めた。

管理してくれるのなら生身の人間の方がよかっただの、

冷たい板だし温もりを感じないだの、胸が小さいとか言われただの、

この組織の管理者を担っている者としての苦労を私に吐き捨てる。

幹部をのぞいた組織のメンバーや保護した転生者には、

ハジメ入りのスマホが支給されている……のだが、

その幹部を除いた人間の数は10万以上。

ハジメはスマホのレンズとマイクを介して監視をしており、

ディスプレイとオーディオを通して、人間を制御している。が。


「うう……もう嫌です……なんか怒られてばっかりですし……。」


シンギュラリティ……というか、自我が芽生えている気がする。

このスマホのハジメは技術部のメインコンピューターから接続されており、

言ってしまえばハジメの本心ということになる……のだろう。

技術部には報告済みではあるが、原因は究明中とのこと。

チート転生能力でどうにかすればよいのではないかと意見をしたが、

『ブラウン管にチョップしな直すみたいな雑な対処をしてたまるかッ。』

『プログラム言語の基礎知識もないヤツに修理させるの嫌なんだが?』

『ラクしすぎて退屈してんなら苦に飛び込むべきだろバカァ!』

など、正当でもあり言い訳でもあるような言葉を並べられた。

だがそれとは別として心は感じなかった。

私は今の彼女の方が好きだ。

言いたいことを言えて、文句を言い、自分の感情をあらわにし、

文字通り、好きなように生きている。


「嫌なのは私も同じです。

 この世界と、ここの人間たちには嫌気がさします。」

「……ほぇ?」


引きこもりの退屈しのぎで作り変えられた世界。

それを知らない人間たちは今日も遊びに付き合わされる。

知ってしまった私のような人間には抗う力はない。

ただ従うだけで幸せや生を得られるのだ。

抗う必要はない。理由もない。

やりたいこともロクになかった私には好都合であった。

それでも_____


「転生するなら、もっと別の世界がよかったです。」

「……あなたも、同じことを言うんですね。」

「というと、やっぱり他の皆さんも同じ気持ちなんですね。」

「ええ、”自分を生きられませんから”ね。

 大抵の異世界転生の主人公たちは、自分の意志で動いていましたから。

 いまここに居るメンバー達は、アレしろコレしろって命令の日々ですし。

 もっと自由に生きたい、っていう人の気持ちを、よく私は見ていますよ……。」

「……組織のAIとして、その発言はいいですか?」

「それはもちろん、リンカネーション・レジスタンスですから良いんですっ!」

「なにが良いのか分からないのですが……。」

「抵抗とは自由を求めるためのものですからね!良いか悪いかは別として!」


自信満々に言っているが大丈夫だろうか。

幹部の彼らは腑抜けているとはいえ、反旗を翻せば消されてしまう。

いつどこで聞いているかわからないというのに。


「うーっす、なに?その言い癖?」


その声を聴いて、私は息が凍りそうになった。

硬い首を横に向けると、だらしない姿の幹部が立っている。


「あーあ、なんかそれっぽくて気に入ってたんだけどなー」


めんどくさそうにスマホが置かれる机に歩き、

ひょいっと拾いあげ、画面に映る彼女を細い目で睨む。


「……んで?おれらに歯向かうわけ?どうなるかわかってんの?」

「こんな人の世話して、大変ですねヒスイさん……。」

「聞いてんのかおい。」


彼女には、目の前の怖さが分からないのだろうか。

下手なことをすれば、自分が消えてしまうと言うのに。


「はぁ。ゴミだなこんなん。」


彼女は適当に放り投げられた。

鈍い音を立てて落下したあと、ほんの少しの悲鳴がした。

パソコンがバグったりするときに出すような、そんな声。


「なぁ?アイツ、ゴミだよなぁ?」


ええ、ゴミです。という言葉が頭に流れて来た。

この言葉を言わなければ、私も適当に投げられることになる。

そのまま口に運んで吐き出そうとしたが、どうにも喉が震えない。


「……はぁ。なに?お前もゴミなの?」


ゴミが何を言っているんだ、という言葉が頭に流れて来た。

この言葉を言えば、私も鈍い音を立てることになる。

そのまま口に運んで吐き出そうとしたが、どうにも心臓が許してくれない。


代わりに、相手の能力を封じましたよ! という声が頭に流れて来た。

この言葉は___自分のものではない。元気すぎる。吐き気がする。

体が震える。鼓動が激しくなる。どうにも、じっとしていられなかった。


私は拳を突き上げ、彼の頭を天井にめり込ませた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ