NO,18 「雄大…」
この前、雄大が倒れた。
もう長くないといわれていた。
「ねぇ、ヤドちゃん」
「…」
「どうしてなの…」
「…」
「どうして、雄大はガンなのでしょうか。」
「…」
「って、ヤドカリに言っても無駄か。」
そんな暇つぶしをしていると電話が来た。
愛菜からだった。
「もーしもし」
「雄ちゃんが…雄ちゃんがぁ……」
「は?」
「雄ちゃんが危ないの!」
「何!?」
「早く病院に来て!」
「分かった!」
俺は何が起きたかわからないまま自転車をこぎだした。
信号を待っていると今度は知らない人から電話が来た。
「もしもし?」
「た、卓也か?」
正也からだった。
「今卓也がやばいんだって!何言ってるかわかんねぇけど、
卓也って言っているのは分かるんだ。だから、早く!」
「今行っている!」
待っててくれ雄大!今行くから…
病院に着いた。俺は慌ててエレベーターに乗ろうとしたが、
なかなか来ない。
「くそ!」
俺はエレベーターを諦めて、階段を駆け上がった。
雄大に早く会いたかった。それだけだった。
「バン!」
雄大が病室に入ると、皆くらい顔をしていた。
「雄大…」
「た…たぁ…卓也…」
もう意識が朦朧としていた。
「卓也、ごめん。迷惑かけてごめん…」
「何でお前は悪くないのにお前が謝るんだよ…」
「でも、何だか乗り越えた感じがする…」
「そうだよ。お前は勝ったんだよ。努力は圧勝だよ。」
「そうかな…それと…あ…りがとう…」
それを言い終えると雄大は目を閉じた。
9月12日、午後13時21分、雄大は静かに息を引き取った。
雄大の父親と母親は雄大の遺体に寄り添って静かに泣いていた。
正也も夏美も直太郎も健二も亜由美も泣いていた。
勇太郎は驚き、尻餅をついていた。
愛菜は少し声を出しながら泣いていた。
「置いていかないでって…言ったのにぃ……」
俺は泣いても泣いても涙が止まらなかった。
なぜ人は死ぬのか。
死は怖くて辛くて悲しい。
でも、なぜ雄大でなくてはならないのか。
何故だ何故だ何故だ何故だ
「何でなんだよ!!!」
俺の声は夏なのに昼なのに妙に薄暗い病室で響き、泣き続けた。
何故だ。治るって信じてたのに。
雄大を失ったショックは、かなり大きかった。




