プロローグ1
2020年12月24日
クリスマスイブ。
この日は数年ぶりの大雪でライフランが完全に麻痺していた。
電車は運休、道路は大渋滞...
雪に慣れてない都心部は大混乱に陥っていた。
しかしクリスマスイブで街はカップルで溢れかえっていた。
そんな大雪の中、2人の男が全力で病院に走っていた。
この物語の主人公、坂本透通称もっさんと、一緒に居るのは幼馴染の鈴木康孝通称わんわんである。
なぜわんわんなのかは謎である。
2人は病院の入り口を駆け抜けて2階の奥の病室のドアを勢いよく開ける。
坂本は息を切らせながら叫んだ。
「ハァハァハァ...おばさん!!!優香は!!?」
しかし坂本とわんわんの目に飛び込んできたのは...
抱き合いキスをしている医師とナースであった。
「キャーーアアア」
病室に響き渡るナース悲鳴。
どうやら2人共入る部屋を間違えたらしい。
「失礼しました!!」
頬を赤ながら申し訳なさそうに謝罪をし
慌てて部屋を出た。
坂本は息を切らせながらわんわんに激昂した。
「部屋が違うじゃないか!!」
「飛び込んだのもっさんじゃないか!!」
「優香の病室どこだよ!!」
「3階だよ!!」
「早よ言えや!!」
2人は再び走り出し3階の病室に向かった。
病室の前に着いたものの、さっきの件があったので恐る恐るドア開けた。
ドアを開けるとベッドの上には1人の少女寝ていた。
少女の顔は今にも起きそうな安らかな顔をしていた。
だが口には酸素マスク、腕には点滴がされている。
その横には両親であろう2人の男女が立っていた。
「優香...」
坂本は一言ぼやくと涙を流しながら少女の手を握り膝からガクンと崩れ落ちた。
それを見たわんわんが、冷静に呟く。
「もっさん...よく見ろ優香じゃない...」
「え?」
両親らしき2人は驚いた様子で尋ねた。
「誰だね君たちは?」
坂本はスッと起き上がり腕で涙を拭った。
そしてを顔を見るや...。
「あれ?優香ちゃうやん...」
呆れた顔でわんわんが呟く。
「まったく...」
2人は病室を出て廊下で再び口論となる。
「なんだよ!また違うのかよ!!」
「お前が勝手に映画みたいなシチュエーションにもっててんだろうが!!」
わんわんは憤りを感じていた。
「だってぽくない?」
「だいたい優香、急性盲腸炎なんだろ?」
「盲腸かよ!!!」
「もういいわ!疲れる!」
その時、わんわんの携帯が鳴り響く。
わんわんは坂本を睨みつけながら携帯に出た。
「もしもし?あっ...うん...」
携帯を切り坂本告げる。
「優香の病室302号室だってさ」
坂本は間違って入った病室番号を見る。
「なんだよ...隣じゃねーか...」
わんわんは大きくため息を吐いた。
坂本は3度目の正直でドアを開けた。
部屋を覗くとベットの上で上半身を起こし、本を読む長い黒髪の肌が綺麗な女の子が横たわっていた。
今度こそ間違いなく坂本達の幼馴染の加藤優香だった。
だが...
2人に気がついた少女が突然叫び散らす。
「2人共おそーーい!!!ゆーがこんなに苦しんでるのに遅れて登場とかやってなーーーい!!」
「い、いや...これでも早く来たんだよ....」
「でもじゃなーーい!口答えするんじゃないわよ!!2人共罰として盲腸になって!!!」
わんわんは苦笑いした。
「めちゃくちゃ言いやがる...」
その顔立ちからは想像もつかない破天荒な性格の持ち主だった。