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転生 1

「あー、あれかも。今流行りの異世界転生」


 目を覚ました私は、意外と冷静だった。多分、こういうのに少なからず憧れていたからだと思う。

 とはいえ、動揺している部分もしっかりある。


 まず、自分が目覚めた部屋。これがすごく広くて、すごく可愛いのですよ!

 白とピンクで揃えられていて、ぬいぐるみも全てが可愛い。

 今自分が座っているのも、天蓋付きの大きなベッド。細かな装飾が施されていて、淡いピンクのシーツもレースがふんだんに使われている。

 テーブルもソファもクローゼットも、全て美しい彫刻がされている。いかにもメルヘンだ。


 ひとりで感心していると、これまた愛らしい鏡台が目に止まった。

 せっかくなので自分の顔を見てみようと思い、その場所へ走る。


 そして顔を確認した私は、絶句した。


「これは……アリスティアだあぁぁぁぁぁ!!」


 透き通るサラサラな銀髪。黒曜石のような黒い瞳。真っ白な肌は陶器のようで、美少女の一言では言い表せない美しさ。


 これは完全に、幼少期のヒロインでベルヴァルト公爵令嬢の、アリスティア・ベルヴァルトである。


「うわぁ、よりにもよって世界で一番嫌いな人になるなんて……。詰んでないけど詰んだ……」


 絶望で頭を抱え、ハッとなる。


「待って、アリスティアがまだ黒色の瞳ってことは……まだ魔力測定をしてないんだ!」


 魔力測定とは、文字通り魔力を測定する儀式のこと。全ての国民が7歳を迎えると行われ、そこで魔力を持っているか、魔力の色は何色かがわかる。


 この儀式の面白いところは、魔力測定をしたのと同時に、自分の瞳の色が魔力の色に変化することだ。

 何でも、魔力測定をするための道具である水晶には開眼効果があり、魔力を発現させると瞳の色を変えてしまう力があるとかないとか。


 魔力の色で魔力量がわかり、量が多い順に金、赤、青、緑、そして紫。人はそれぞれ、色合いや濃さが違うが、それは量に関係ないらしい。

 現在、金は五百年、赤は百年出ていない。


 ここで察したかもしれないが、アリスティアは百年ぶりに赤色の魔力を発現させる。


「まあ、私にとって大事なのはそこじゃないけどね」


 そう、この儀式の時、もうひとつ大事なイベントが存在する。


 アリスティアと推しは、魔力測定の場で初対面となるのだ。それはヒーローもなのだが。

 

「この日までに色々極めて、推しと仲良くなれば……恋愛感情を持たれずに済むんじゃない!?」


 私の計画はこうだ。

 まず、魔力測定までに色々頑張る。色々といっても、魔力測定をするまでは私の魔力は封じられているので、勉強や武術しか極めるものがないのだが。

 小説のヒーローは自分より才能があるやつは苦手だという設定があったから、これでヒーローに好かれないはず。


 次に、本番で推しと接触し、仲良くなる。初めから友達なら、最後まで友情のまま終われるのでは? と思ったのだ。

 ちなみに、この計画にはしっかり根拠がある。私の前世では保育園時代からの幼なじみ(男)がいたのたが、私が死ぬ直前まで恋愛感情を抱いているような素振りは見せなかったのだ。


 名付けて『推しとヒーローの恋愛感情ぽっきり作戦』である。


 魔力測定までは、残り3か月。

 それまでに様々な課題をクリアし、世に名を馳せなければならない。


「推しを救うために、頑張るぞ!」


 ひとりで燃え、ひとりで「おー!」と返事をしながら、私の決意は固まった。




 それを扉の隙間から見ていたひとりのメイドは、「お嬢様がおかしくなりました!」と慌てて公爵に報告しに行ったのだった。


〜アリスティアの由来〜


 アリスティアとは、古代ローマ語で「卓越」という意味。

 そこからそのまんま付けました。


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