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魂を削って

振るった刀は微かに道真の腕を傷付けるが、道真は痛みなどまるで感じないかの様に、反撃に出てくる。


背後から首を掻き切ろうとしたのか、抱き抱える様に背中側に回された長刀が、空を切る音が聞こえた。


だがその攻撃は、首と長刀の間に刀を挟む事でやり過ごし、政宗は道真の腹部に蹴りを入れる。


防御をせずに蹴りを食らった道真は、小さく呻き声をあげて身体を丸め、政宗はすかさず両手を組み、道真の後頭部に拳を叩き込んだ。


さすがに衝撃が走ったのか、道真は脳震盪を起こした様にふらつき、長刀の柄を杖にして頭に手をあてた。


つぅ、と額を流れる血は、道真の頬へ伝い、口元を濡らす。


道真はその血を舐めると、自らの血で紅を引いたような、赤い唇の口角を上げた。


「やっぱり殺し合いはたのしいなぁ…、そう思わねぇかよ?」


「悪いが俺は、野郎を痛め付ける趣味はねえよ」


「相変わらずつれねぇなぁ独眼竜、…さぁもっと殺し合おうぜ」


そう言った道真の言葉に反応する様に、政宗は腰に差していた刀に手を掛けた。



「これで最後にしてやるよ」


焦らすように、ゆっくりと刀を引き抜くと、政宗は道真と同じように両手に刀を握り、腰を落として構えをとる。


「俺の真似かい?付け焼き刃じゃあ、武器を増やしたところで同じだぜ?」


「試してみろよ!」


そう言うと同時、床を力強く蹴り、道真に飛び掛かる。

左右か二本の刀を、道真の頭上に向けて叩き下ろすが、それは長刀で弾かれた。


勢いよく飛び掛かったせいで、同じ強さで弾かれた衝撃は強く、政宗は両手に痺れを感じて顔を歪めた。


その一瞬の隙をついた道真の長刀が、首を落とそうと近付くが、政宗は空中で体勢を変えると、その長刀を蹴って難を逃れた。


そのまま刀の向きを変え、再び斬り掛かるが、道真はそれを難なく長刀で受け、ぐにゃりと身体を回転させる。


「うげ…気持ちわりーな、骨は入ってんのか?」


道真の身体のあまりの柔軟さに、思わず目を見開いてしまう。

すると、道真の変幻自在の長刀がうねりながら近付いてくる。


その攻撃を紙一重で避けると、今度は床を削る様な低い攻撃が襲い掛かってきた。


足裏で上手くその長刀を止めると、道真の頭が近付き、額に頭突きを食らってしまった。


「…っ!」


額から少しずれ、左目に当たったようだ。

強く重い痛みが左目を襲う。


本能的に目を閉じてしまったらしい。

次の瞬間、道真の長刀が右肩から左腹部へと、斜めに身体を切り裂いた。


「…ぐ…ッ!?」


低く呻いた直後、悲鳴の様な声で名前を呼ぶ、柚月の声が聞こえた。


政宗は目を閉じたまま、尚も攻撃をしてこようとする道真の気配に気付き、見えない両目で闇雲に刀を振り回す。


「政宗!!」


「来るんじゃねぇ!!」


再び名前を呼びながら、駆け寄ろうとする柚月を一喝すると、政宗は「冷静になれ」という様に自分の頬を強く張って目を開けた。


「情けねぇ真似は見せられねぇ」


「愛しの姫君に心配されてよかったなぁー」


「…嫌味のつもりか?」


「ただの感想だよ、ひねくれてんな…」


「そりゃ悪かったな、生まれつきでね…!!」


左目の痛みを堪えて飛び掛かると、道真も同じく長刀を振り上げる。

武器がお互いの攻撃を弾き合う度、激しい音と火花が光った。


一瞬でも隙を見せたら命取りであり、どちらも一歩も譲らず、相手の体力を奪うように、止めどない攻撃を続ける。


だが隻眼の政宗にとって、無事な目を傷付けられた事は手痛い。


痛む目を無理やり開き、必死に道真を目で追い掛けるのだが、どうしても、まばたきの回数が増えてしまうのだ。


道真はそのまばたきの間を狙って、厭らしい攻撃を仕掛けてくる。


(…クソ、思った以上にやりづれぇ)


まるで幼い頃に戻ったかの様だ。


痘瘡で右目を失ったばかりの頃は、視界の右側が見づらく、よく物にぶつかっていた。


自分はもう強くはなれないのだと勝手に諦め、腐っていた自分を導いたのは、他でもない小十郎である。


幼い自分を相手に、四苦八苦していた若い頃の小十郎を思い出し、政宗は苦笑しながら目を見開いた。


(大丈夫だ…!小十郎に教わったろ!しっかり奴を見ろ!!)


失った右目の代わりである小十郎の分も、今、この戦いを真っ直ぐ見つめ、そして勝たなければならない。


至近距離で攻撃を繰り出していた政宗は、道真から離れて距離を取ると、刀を脇に構えた。

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