決戦の舞台へ
「大丈夫か」
「…うん」
政宗と合流した後、二人は急いで火焔城の外に出ていた。
これ以上ない程に熱せられた空気は変わらずだが、外の空気は澄んでいる。
焼けついたような喉に、冷たい空気が心地好い。
夜空を見上げると、夜中だというのに、燃えるような赤に染まっていた。
その原因である火焔城は、まるで意思を持つ蛇が獲物を絞め殺すように、真っ赤な炎に包まれていた。
政宗との再会で冷静さを取り戻し、改めて火焔城を見てみると、どうやら火焔城を取り囲む炎の半分は、見せかけだけの偽物…幻の様である。
どんな魔法なのか柚月には分からないが、ここは歴史上の人物が登場する剣と魔法の世界なのだ。
(…まぁ、妖怪が現れるって時点で十分ファンタジーなんだけど…、マジで何でもありだな)
そんな事を考えていると、政宗が顔を覗き込んできた。
「どうした?」
「…うぅん、何でも」
そう言うと、政宗を振り返る。
「それより政宗…、早く逃げよう?奥州に帰ろうよ」
目的であった指輪は取り戻した。
もうこんな場所に用はない。
指輪は相変わらず沈黙を貫いており、どうすれば元の世界に帰れるのかは分からないが、取り敢えずは二の次だ。
だが帰ろうと言った柚月に、政宗は首を振った。
「お前を攫った菅原の野郎とのは着けていかねぇとな」
「な…ッ!!いいよそんなの!!早く帰ろう!!」
何を言い出すのだと、政宗の腕を掴むと、政宗はそんな柚月の腕を逆に掴んだ。
「馬鹿言うな、ここまできて、手ぶらで帰れるわけねぇだろ。魔王と菅原の奴をぶっ潰す」
そう言った政宗の目は強く、意思を曲げるとは思えない。
柚月は小さく政宗の名を呼ぶと、力強く頷いた。
「わかった…なら私も行く」
駄目だと言われても、ついて行くつもりだった。
だが予想に反し、政宗はニヤッと笑った。
「相変わらず肝の座った女だ、言うと思ってたっつーの」
「政宗…?」
「お前が素直に帰らねぇ事はお見通しだ、…それにここは敵地のど真ん中、元々お前を傍から離すつもりはねぇよ」
これから、あの魔王や、狂気の権化である菅原道真と決着を着けに行くとは思えない軽さで言うと、政宗は柚月の顔に手を伸ばして来る。
「安心しろ、もう離れない」
そう言った政宗の声に、柚月は目を細めて頷いた。




