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rescue

村まで行く途中、何人かの村人とすれ違う事があったが、件の村付近まで近付くと、途端に人通りが少なくなって来る。


柚月は辺りを見回しながら、話し掛けられる人物を探していたが、すれ違う殆どの村人は、話し掛けられる事を拒む様な雰囲気を持っていた。


(まぁ、そうだよね…。行方不明者が多いし)


普通に考えれば、見掛けた事のない柚月に友好的な人間などいるはずがない。

まだ若い少女である事が救いなのか、逃げ出されたりはしないが、此処に来るまでに不審そうな視線を何度も投げ掛けられている。


この様子では、村に行ったとしても村人達に話を聞くのは難しそうだ。


(…どうしよう?無駄足になるなら、怪しげな所を回って盗賊の隠れ家を見付ける方が良いかな)


この辺りは身を隠すには良さそうな森が沢山あり、絶好のポイントをいくつか通って来た。


無駄足を踏むと分かりきった上で村まで行くより、その方が良さそうである。


(あまり遅くなると、城を抜け出した事がバレちゃうしね…)


結局村で話を聞く事を諦めた柚月は、通って来た道を引き返し、盗賊の隠れ家を見付ける事にするときびすを返した。








一方その頃。

柚月が抜け出した城では、いなくなった柚月を探し回る政宗の姿があった。


「政宗様、城中探しましたが見付かりません」


「こっちもです…。城内にいないとなると私達のせいです!す申し訳ありません…!!」


心配そうな顔をした女中や、城を抜け出した柚月に気付かなかった兵士達が、申し訳なさそうに頭を下げると、政宗は諦めた様に首を振った。


「いや、別にお前らのせいじゃねぇよ、気にすんな」


気にするなと言いながらも、心配で居ても立ってもいられない程に動揺している自分に気付き、政宗は溜め息混じりに頭を抱える。


(俺は何でこんなに動揺してるんだよ…)


数日前までは名前すら知らない娘だったはず。

それが、何故こんなに気になるのか。

自分の中にある感情の正体は分からないが、或いは柚月に会えば分かるのだろうか。


頭の中で悩むのは性に合わない性格の為か、政宗は自分に喝を入れる様に首を振る。


「…クソッ!.らしくねぇ!!小十郎はいるか!!」


すると真後ろで「はい」と声が聞こえ、政宗は驚いて振り返った。


「いたのかよ!」


「私は常にお側におります」


「怖ぇよ、いやそれより出かけるぞ。盗賊狩りだ」


政宗がそう言うと、小十郎は慇懃いんぎんに頭を下げる。

あの娘の為に行くのかと聞きたくなったが、そうだと答えられたら、行きたくなくなりそうで黙っていた。









政宗が柚月を探しに出た、まさにその時。


盗賊の隠れ家を探して森の中を歩き回っていた柚月は、怪しげな建物を見付けていた。


明らかについ最近建てられたであろうその建物は、申刻を過ぎた薄闇うすやみの中、明々と燃える松明が掲げられている。


そしてその松明の真下には、凶状きょうじょう持ちと一目で分かる人相の男が一人、腰に刀を差して立っていた。


(ビンゴ!私ってば結構有能ー!)


こんな辺鄙な場所に隠れる様に作った建物である。


自ら怪しいと主張している様なものだ。


(何とか中の様子を見られないかな…)


身を低くし、木々と薄闇に隠れながら近付くが、出入口は見張りの立っている一ヶ所だけの様である。


隠れ家の場所が分かっただけでも良かったのだが、ここまで来ると中に拐われた少女達がいるのかどうか確かめたい。


少し迷った挙げ句、柚月は手頃な石を手に取ると、適当な方向へ力一杯に投げ飛ばした。


投げられた石は、柚月から離れた場所に落ちると、静まり帰った森の中に大きな音を立てる。


その音を聞いた見張りは、一瞬驚いた様に反応すると、刀を抜いて柚月が投げた石の方向へと歩いて行く。


(よし…ッ)


見張りのいなくなった出入口へ近付くと、柚月は音を立てない様に注意しながら戸を押してみる。


鍵が掛かっている様なら諦めて引き返しただろうが、運が良いのか悪いのか、戸は何の抵抗もなく開き、柚月は音と気配に注意しながら中を覗き込んだ。


(…誰もいない)


意外にも中は広く、左右に幾つかと、廊下の奥に明かりの漏れる扉が一つ見える。


(一番奥の扉が怪しい…)


明かりが漏れていると言う事は、そこに誰かがいると言う事だろうか。


出入口の扉を閉め、忍び足で一番奥の扉に近付くと、柚月は扉に耳を押し付ける。


中の様子を探ろうと、必死に耳に集中するが、中からは燃える松明の音しか聞こえず、柚月は諦めた様に耳を離した。


(誰もいないのかな…、それとも別の部屋?)


左右の扉に視線を投げ掛けると、柚月は目に付いた適当な扉を開けてみる。


すると、そこには身動きが取れない様、手足を縛られた少女達が身を寄せ合う様に座り込んでいた。


「…きゃ…!」


「わわッ!しーッ!!」


見知らぬ柚月の姿に気付いた少女は、驚いたのか悲鳴を上げようと口を開く。


だが柚月は間一髪で少女の口を片手で塞ぐと、人差し指を口の前に立てた。


「私は盗賊じゃないって!拐われた皆を探しに来たの」


そう言って口から手を離すと、少女達は信じられない様に柚月の顔を覗き込み、今度は他の少女達と顔を見合わせる。


「あの…あなた…一人で?」


「うん、まさか本当に見付かるとは思ってなかったんだけどね。私って探偵業に向いてるのかもー。…さぁ早く此処を出…、ッ!?」


少女達を解放しようとした柚月は、廊下から聞こえて来た足音に気付いて言葉を止める。


(誰か来る…)


さっきの見張りだろうか。足音は一人分だけだ。


恐怖で震え始めた少女達をちらりと見ると、柚月は辺りを見回す。


(…良いモノ見付けたッ…)


視界の端に捉えた木の棒を急いで拾うと、柚月は扉の脇に立って身構える。


時間にしてどれくらいだろうか。

足音は柚月達のいる部屋の前で止まると、躊躇なく扉を開けてくる。


部屋に入り込んで来た人影を見た少女達は、真っ青な顔で後退りを始め、敵だと理解した柚月は手加減なしに人影の頭上に木の棒を叩き下ろした。


ゴキッと嫌な音と感触を耳と手に同時に感じ、柚月は手応えありと倒れた人影を見下ろす。



「あ、やっぱりさっきの見張り。…って、それどころじゃない!」


持っていた木の棒を投げ捨て、急いで少女達を縛っていた縄をほどくと、柚月は監禁で弱りきった少女達を立ち上がらせる。


「さぁ皆、今のうち!見張りはコイツだけだったよ!逃げて逃げて!」


そう言いながら背中を押すと、ようやく状況が理解出来たのか、少女達は焦った様に走り始める。


全員を部屋から出し、建物からも無事に解放すると、柚月は安心した様に息を吐いた。


「良かったぁー、皆…帰り道分かる?私は政宗にこの場所を伝えに行くから」


「あの…ありがとうございました。お名前は…」


「名前?私の?あはは!やだな、名乗る程のモンじゃないったら!」


政宗への恩返しにと奔走していたら、気が付けば拐われた少女達を救い出していたと言う結果に気付き、柚月は照れた様に頭を掻いてしまう。


「さ!早く早く!のんびりしてたら、あいつ目を覚ましちゃうかも!」


そう言って、何度も振り返りながら去っていく少女達を見送った柚月は、満足そうに頷くと、既に夜のとばりの落ちた夜空を見上げた。


後は政宗にこの隠れ家の場所を伝えるだけだ。


だが安心感のせいで油断していたのか、柚月は自分に近付いて来る人影に気が付いていなかった。


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