表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

38/90

魔王の子

もう駄目だ。

そう覚悟し、襲って来るであろう激痛に堪える様に目を閉じるが、刀は振り下ろされて来ない。


恐る恐る目を開けると、刀を振り上げた状態で固まっている道真の姿が目に入る。


そして、道真の首には刀の刃があてられており、柚月は刀の持ち主を見た瞬間、ずっと堪えていた涙を流した。


「…政宗…!!」


ずっと会いたかった人がそこにいる。

安心感で名前を叫ぶと、道真は忌々しそうに顔を歪めた。


「独眼竜…」


「菅原道真…俺の女に何してる」


愉しい遊びを邪魔され、不機嫌そうな道真に輪を掛けて、政宗は怒りに震えている。


「見て分かんねーかなぁ…、遊んでんだよ。お前の女で」


心底怒る政宗に対し、何でもない事の様に答えた道真の身体は、ふわりと動くと政宗の刀から簡単に抜け出す。


「せっかくの愉しみを邪魔すんなよ」


「何だと…?」


「まぁいいや、逃げるか泣くしか脳の無い柚月ちゃんより、お前と遊ぶ方が楽しそうだもんな?」


そう呟いて長刀を構えると、道真は両手の長刀を大きく回転させる。


「上等だよ…!柚月に手を出した事を後悔させてやる」


道真に負けじと刀を目線の高さで構えると、政宗はちらりと柚月を振り返った。


「そこを動くなよ柚月」


考えるまでもなく柚月が頷くと、政宗は道真に視線を戻して地を蹴った。


二人の距離が縮まるのはあっという間で、息つく暇もなく鍔迫つばぜり合いが始まる。

力は拮抗きっこうしているのか、どちらも譲らずに、自分の刃を相手の喉元へと押し合っていた。


そのうち拮抗が崩れたのか、り合っていた刃を離すと、政宗は道真に背中を向ける様に回転し、自分の身体に刀を隠して斬りかかる。


だがそれは読まれていたらしく、道真は背中を大きく逸らせて刃を避けた。


「その首もらったと思ったんだが…。ずいぶんと身体が柔らかいじゃねぇか」


「お褒めの言葉ありがとよ…!」


返事をしながら刀を真横にぎ払い、政宗の胴を狙う道真に、柚月は悲鳴をあげる。

だが政宗は鼻歌混じりに刀で受けると、鬱陶しそうに刀を跳ね返した。


「おいおい、そんな大振りな攻撃が当たるとでも思ってんのか?」


馬鹿にした様に口元を上げながら言うと、政宗は袈裟懸けさがけに刀を振り下ろす。


防がれてしまうが、それはあくまでも誘いであり、道真が刀に意識を集中させている隙に、政宗はふところに膝を叩き込んだ。


「…てッ!?」


さすがに蹴りは予想外だったのか、腹部に蹴りを直接受けた道真は、小さくうめく。


「へぇー、さすがにやるなぁ。やっぱ命のやり取りは愉しいぜ。なぁ独眼竜?」


「残念だが俺はちっとも楽しくはねぇよ、それにこれは真剣勝負じゃねぇ。ただの害虫駆除だ。お前はただの虫だ、虫」


「俺の片想いかよ、つれねぇなぁ…」


寂しそうな顔を作りながら言うと、道真は政宗の蹴った腹部をでた。

そしてまた構えようとした時、数本の矢が政宗と道真の間に突き刺さる。


「ぁ?」


「何だ!?」


ほぼ同時に二人が辺りを見回すと、弓を構えた少年の姿が離れた場所に見える。

道真は少年の姿を確認すると、息を吐いて構えを解いた。


「残念、迎えが来ちまったわ。愉しい時間は終わりだな」


「ふざけんな!逃げる気か!?」


見逃す気はないと言いたげに道真の首元に刀をあてると、政宗は走り寄ってくる少年に視線を移動させる。


「魔王の子か…」


すると傍まで来た少年は、首元に刀をあてられている道真を見て、楽しそうに笑った。


「あれー道真、負けてるの?」


「早々と勝負が着いちまったら、つまんねーだろが」


「負っけ惜しみぃー、それよりお姉ちゃん」


そう言うと、少年は笑顔で柚月を振り返る。


「え。…私?」


普通の少年の様に見えるが、弓を持ち、道真と同等に話す少年に、柚月が警戒しながら目を向けると、少年はまじまじと柚月を眺めた。


「お姉ちゃんが父様が探してる女の人?」


答える訳にもいかずに黙っていると、政宗は道真に右手で刀を突き付けたまま、少年に目を向けた。


「魔王が柚月を探してるだと…?どういう事だ」


低く脅す様に問い掛けるが、少年は気にもせずに政宗に舌を出した。


「べーっだ!お前なんかには教えないよーだ!!」


「振られてやんの、だせー。ま、お前が知る必要はねぇって事だよ。そんな訳だ独眼竜…お前の女貰ってくぜ?」


そう言うと道真は刀を。

そして少年は弓を政宗に向ける。


「政宗…」


道真一人でも苦戦する中、弓を扱う少年まで加わっては、政宗が危険である。

柚月が泣きそうになりながら名前を呼ぶと、政宗はつまらなそうに深い溜息を吐いた。


「はぁーっ…、まったく馬鹿れされたもんだよなー。数さえ揃えば、俺に勝てると思ってんのかねー」


理解出来ないと言いたげに政宗が大袈裟に首を振ると、道真はいらついたように目を細める。

だが政宗は気にもせずに刀を構えた。


「さて…格の違いってやつを教えてやるかね」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ