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第3話「気づいた先輩と揺れる想い」
放課後の校舎は、部活に励む生徒たちの笑い声や楽器の音で賑わっていた。
佐倉梨奈は、吹奏楽部の部室で初めての合奏に参加し、まだぎこちないながらも必死に音を合わせていた。
そんな中、先輩の野村彩乃は部室の窓から、見慣れた顔を見かけて息をのんだ。
「……あの人は、もしかして佐倉梨乃茅?」
人気アイドルとして雑誌やテレビで何度も見た姉の姿が、校内にひっそりと現れているのを目撃したのだ。
彩乃はすぐに梨奈のもとへ駆け寄り、小声で告げた。
「梨奈さん、姉御がこの学校に来てたって本当?」
梨奈は驚きと戸惑いを隠せずに首を振った。
「私、知らなかった…」
彩乃は微笑み、
「大丈夫。姉御は梨奈さんのことをすごく気にかけているみたいよ」
それを聞いた梨奈の胸には温かいものが広がったが、同時にこれからの学校生活が一層複雑になりそうな予感もしていた。
姉の存在は、彼女の秘密であり、強さの源でもあった。