第2話「新たな場所へ、そして姉の影」
春の柔らかな陽射しが校庭を包み込み、桜の花びらが風に舞うなか、佐倉梨奈は緊張した面持ちで校門をくぐった。
彼女にとっては初めての登校日だった。
実は、梨奈は北海道の地元の高校から、この都内の学校に編入してきたばかりだった。
家族の事情や母の妹、箕輪菜々緒先生が顧問を務める吹奏楽部に入るための大きな決断だった。
教室に足を踏み入れると、まだ見慣れない顔が多く、梨奈は自分の席へと向かう途中で緊張が高まった。
「私、大丈夫かな…」
そんな中、校舎の裏手にひっそりと一台の車が停まった。
車から降りてきたのは、人気アイドルグループ神7の一員であり、梨奈の姉、佐倉梨乃茅だった。
多忙なスケジュールを縫って、妹の新生活をひっそりと見守るために訪れたのだ。
梨乃茅は周囲の視線を避け、校舎の窓から吹奏楽部の部室を探した。
薄暗い室内で、楽器の音がかすかに聞こえる。
「梨奈、ちゃんとやってるかな…」
窓越しに見える制服姿の妹を見て、梨乃茅はほっと息をついた。
「新しい環境でも、頑張ってね」
姉の存在は梨奈にはまだ知られていない。
けれどその密かな訪問は、これから続く姉妹の絆の始まりとなるのだった。