第1話「新たな舞台へ――桜舞う決意の朝」
17歳の佐倉梨奈は、夏休み明けの朝、部屋の窓から外を見つめていた。
目の前に広がるのは、桜並木ではなく、遠くに見える飛行機が行き交う空港の風景だった。
ここは、彼女が新たに通うことになった学校のある東京ではなく、母の妹、箕輪菜々緒先生が勤める都内の高校の近く。
「梨奈、そろそろ準備はいい?」
母の紗南が声をかける。彼女は日本だけでなく世界的にも知られるヒップホップの先生。
そして、父の龍太は北海道札幌での活動を終え、梨奈の新生活を応援するために見送りに来ていた。
「うん、行ってきます」
梨奈は小さなスーツケースを持ち、母の妹であり吹奏楽部の顧問でもある箕輪菜々緒の家へ居候するための一歩を踏み出した。
数日前、家族で空港へ向かう車中、父が優しく言った。
「新しい環境は刺激も多い。そこで学ぶことは必ず梨奈の力になる。俺たちも全力で応援する」
母は微笑みながら言葉を添えた。
「梨奈、いろんなことを吸収して、自分らしく羽ばたいてね」
飛行機の窓から見下ろす青い空と白い雲。
梨奈の胸には期待と少しの不安が入り混じっていたが、それ以上に強い決意があった。
「桜舞うこの季節、新しい私の物語が始まる」
都内の高校に着くと、箕輪菜々緒先生が優しく迎えてくれた。
「梨奈、よく来たわね。ここでたくさんの素敵な経験をしていきましょう」
梨奈は吹奏楽部の部室へ向かいながら、自分の未来に胸を膨らませていた。
「吹奏楽部、絶対に全国優勝してみせる」
桜の花びらがひらりと舞い落ちる中、彼女の新しい挑戦が静かに始まった。