第13話「絆が試される日」
全国大会の予選まであとわずか。
吹奏楽部の練習は毎日熱を帯び、部員たちの表情にも覚悟がにじんでいた。
しかし、その一方で、部内には微妙な亀裂が生まれ始めていた。
霧島颯太の持ち込んだ新しい練習方法は、確かに技術を向上させていた。
だが、やはり全員がすんなり受け入れたわけではなかった。
「俺はもっと自由に演奏したいんだ!」
数人の部員が声を荒げ、部室の空気はピリピリと張り詰めていく。
佐倉梨奈はその間に立ち、何とかみんなをまとめようと奮闘していた。
だが、自分自身の不安も隠せずにいた。
そんなある日、顧問の菜々緒先生から緊急の呼び出しがかかる。
「梨奈ちゃん、ちょっと話があるの」
廊下の隅で二人きりになった瞬間、菜々緒先生は真剣な表情で言った。
「あなたたち、仲間のことを信じてる? 心が離れたら、音楽は一つになれないわ」
梨奈は強くうなずく。
「信じてます。だからこそ、みんなの気持ちをひとつにしたいんです」
その日の夜、梨奈は一人で校庭に出て、深呼吸をした。
「絆が試される時なんだ……私たちは負けられない」
翌日の練習で、梨奈は部員全員を前に話し始めた。
「みんな、私はあなたたちのことを信じてる。だから、みんなもお互いを信じてほしい。違いがあっても、それを尊重し合えるチームでいたい」
その言葉に、部員たちの表情が少しずつ柔らかくなっていった。
颯太もまた、自分の考えを改めて伝えた。
「俺も……今はまだ不器用だけど、みんなと歩んでいきたい」
その日、吹奏楽部はひとつの大きな壁を乗り越えたのだった。