表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
桜舞う少女が吹奏楽部に入部したら… 全国優勝してしまった話  作者: AQUARIUM【RIKUYA】
第1章『桜舞う新天地(桜舞う新たな音色)』
13/66

第12話「新たな転校生と吹奏楽部の波紋」



秋の風が涼しく校舎の窓を揺らすある日の朝。

佐倉梨奈は、部室の窓から外を眺めていた。文化祭の成功と姉や両親の応援が胸に残り、全国大会への意気込みが日に日に増している。しかし、同時に心のどこかに小さな不安もあった。


「梨奈、ちょっといい?」


扉がノックされ、顧問の箕輪菜々緒先生が入ってきた。

「新しい転校生が来ることになったわ。吹奏楽部に入部希望よ」

「新しい転校生……?」

霧島颯太きりしまそうた。かなりの実力者らしいわよ」


数時間後。

颯太は、整った顔立ちと落ち着いた佇まいで部室に現れた。

「霧島颯太です。よろしくお願いします」


その第一声は低く澄んでいて、まるでプロの音楽家のようだった。

部員たちは一瞬で彼の存在に圧倒され、ざわめきが広がった。


颯太は早速、練習に取りかかると自分の理論やスタイルを示し始めた。

「俺はこういう吹き方で音楽を作る。みんなも俺に合わせてくれ」


それは既存の練習方法や部の雰囲気と大きく異なり、部内に緊張感が走った。

「俺のやり方を認めてもらえなければ、俺はやめる」とも言い放つ。


佐倉梨奈は焦りを感じた。

「せっかくみんなで努力してきたのに……でも、颯太さんの技術は確かだし」

葛藤に苦しみながらも、梨奈はある決意をする。


その日の夜、梨奈は姉・梨乃茅に電話をかけた。

「お姉ちゃん、転校生が来て、吹奏楽部が揺れてる。どうしたらいいかわからない」


梨乃茅は穏やかに答えた。

「大事なのは“自分を見失わないこと”よ。颯太くんは才能あるかもしれないけど、あなたにはあなたの色がある。ぶつかり合いながらも、尊重し合える関係を作るのがチームの強さになる」


その言葉は梨奈の心に深く響いた。

「ありがとう。私、諦めない。私たちの音楽を守りたい」


翌日の練習で梨奈は颯太と話し合いの場を設けた。

「あなたの意見も大事。だけど、私たちのやり方もある。お互いに歩み寄らない?」


颯太はしばらく黙っていたが、やがて静かにうなずいた。


「わかった。やってみよう」


そこから少しずつ、部内の空気は変わっていった。

新しい風は確かに吹き込んだが、それは壊すための風ではなく、磨き上げるための風だった。


梨奈は自分の成長を感じながらも、まだまだ道のりは長いと実感していた。

だが、家族と仲間、そして新しい仲間とともに、彼女は前を向いて歩き続ける。


秋の夜空に響く練習の音は、次第にひとつの調和を帯びていった。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ