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エルフと白虎 前編

本編には組み込めなかった2人のお話です。

本日2話更新で終わりと致します!

ここまでお読み下さりありがとうございました!

人間の王国で住みついた土地は、木を伐採して生計を立てている町だった。

御神木と共に生きていたエルフにとって、木を切り倒すというのは有り得ない行為ではある。

だけど驚いたのは彼らは木を伐採した後、再び木を植えて、森が消えないように考えて行動していたのだ。

それは自然と共にあったエルフには考えつかない。


「リーシャ、本当に良かったのか」


「なにが?」


「エルフたちだよ」


ドラゴンによって暗黒の地のほとんどが壊滅した。

だけど実はエルフの森は半分が焼失しただけで、住めないほどではない。

それでも移住を決断したのは、魔王様がそう仰ったからだ。

今でもエルフの森の奥にある世界樹とルナリア湖は無事で、移住に反対していたジジイ共が残っている。


「私別になりたくて族長になったわけじゃないし?族長なんていないほうが、みんな自主的に行動するでしょ」


それは実際そうだった。

神聖な森を捨てようとする馬鹿共を止めろというジジイたちと、全員で暮らすには狭くなったから様子見を交代でするだけでもいいんじゃないかという意見。

その板挟みにされて発狂しそうだった。


「ああぁあ!もう!私に言うな!好きにしろ!!」


そう言ってエルフたちから逃げてきたのが1年前。

なりたくもない族長という仕事を続けて数百年が経っていたから、もういいんじゃないだろうか。

務めは立派に果たしたと思う。

そして、飛び出した私に全力で追いついてきたのがこのディガーなわけだけど。


「そういうディガーだってどうなのよ」


「俺は別に。なんせワータイガーのリーダーなんて基本的に強ければ誰でもいいからな」


あぁそんな単純な理由だったわね。

だからこそ若い頃は肩透かしを食らって、めちゃくちゃコイツのことが気に食わなかった。

ま、今思えば助けてあげたいなんて思ってたのに、あんな環境から自力で這い上がったディガーのことをすごいと思いつつ間に合わなかった自分への苛立ちがあったんだろうけど。


「まぁねー。にしても、この辺りは寒いわね」


「毛皮があるから俺は別に。抱こうか?」


「…誤解を与えそうな発言はやめてくれる?」


私の言葉の意味を理解できなかったらしいディガーはきょとんと首を傾げた。

大陸のあちこちを見て回るのは案外楽しい。

独自の文化や歴史、考え方の違いを知ることで、どれほど自分が狭い場所にいたのかを思い知らされる。

ただ1番驚いたのはディガーの変化。


「ディガーも人型になればいいのよ。そしたらこの寒さも分かるでしょ」


「わざわざ寒さを味わうために魔力は使いたくねぇ」


ただの獣人ならともかく、筋骨隆々で肉食獣の顔を持つディガーに怯えない人間の方が少ない。

だから旅をしている間は人目につかないところを行くか、ディガーが人型に変化して歩いたのだが…。

黄金の瞳に銀色の髪、体つきは獣人のそれより華奢になって八重歯があるその姿はカッコイイと思う。

いや、実際町娘たちに騒がれていたからカッコイイんだろう。


「次の町までまだ結構あるってのに、雪降ってきちゃったわね。最悪だわ」


「そうだな。よいしょ、と」


突然頭から毛布を被せられる。

何をするのか分かって、私は身構えた。

グイッと毛布ごと抱き抱えられて、ディガーの足に魔力が集中する。


「行くぞ」


掛け声の直後、ディガーは思い切り地面を蹴って上空へと跳び上がる。

時々こうして急ぐこともあるのだが、いつまで経ってもこの浮遊感は好きじゃない。

あの小娘、メルフィと時々運んでいたと言うけれど、別に大したことなさそうだったと聞いてなんとなく悔しく思う。


「ん、あれ」


何度か地面を蹴って辿り着いたらしいディガーの口から、なんだか不穏な声が漏れている。

雪の積もった地面に降りて、毛布を外すとそこは変わらず山の中。

ただ目の前には湯気の立つ天然の温泉があり、周りに生き物の気配も無ければ人の踏み入った形跡もない。


「熱のある方に跳んだらここについちまった。すまねぇ、人里に行くつもりだったんだが…」


「じゃあ罰としてディガーはテントを立てていて!私先に入っていい!?」


「…おう」


手で軽く触れて見ても少し熱い温泉で間違いない。

ディガーが後ろでテントを設営している中、私は荷物を置いて入浴用の服に着替えた。

こういったことはよくあるので、着たまま入浴できる服を用意している。

足先からゆっくりと入れば、熱いと感じるお湯も少しずつ気持ちよくなってきた。


「はぁ〜〜〜、生き返る。温泉さいこぉ…」


手足を伸ばして首まで浸かり、体の芯が温まる感覚に酔いしれる。

天然の温泉は誰にも邪魔されないという利点があって、のんびり出来るのが最高だ。


「テント終わったから俺も邪魔するぞ」


後ろから声を掛けられて、だらしなくなっていたであろう顔を少し引き締める。

そして心臓が跳ねた。

ちゃぽん、と音を立てて横に入ってきたディガーは人型で、心臓に悪い顔をしている。

もちろんこうして一緒に入るのは初めてではないが、毎回毎回この顔には慣れない。


「あったけぇ…、やっぱ温泉っていいな」


「そ、そうね…ぶくぶく」


体が温まる理由が温泉だけじゃないことは分かりきっているが、薄着の女が横にいても平然としているディガーに少し腹が立つ。

その顔は本当に反則だと思う!!

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