ある勇者の話
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エミキュール姫の処刑が執り行われてから7年の月日が経った。
シュミール王国は元の平和で穏やかな国となり、今日は新国王の戴冠式である。
新国王には当時12歳だった国王陛下の甥が選ばれ、何故かメルフィと魔王は驚いていた。
理由は教えてくれなかったから、きっと前世絡みなのだろう。
「シューベル陛下バンザーイ!」
勇者として参列しながら暇すぎる式典にぼんやりしていると、国民たちのそんな声に現実へと戻された。
俺もシューベル君と初めて会った時、なんだか懐かしいような不思議な感覚に襲われたことを覚えている。
真面目でしっかりとしていて、国民に対する姿勢も立派な男の子は今や国王陛下だ。
「メイベル様、寝ちゃダメですよ?」
「失礼だな、ちゃんと寝てないじゃないか」
すっごい眠いし、意識が飛ぶほど考え事に耽ってはいたけど!
元々こういう硬っ苦しい場は苦手なんだ。
こんなところに俺を呼びつけるのが悪いと思う。
なんて現実逃避をしながら式典の最後に国民たちに笑いかける立派な愛弟子を見て、ちょっと泣けてきた。
「とーさま泣いてる!?」
「とーたま、えんえん?」
「父様は嬉しいだけだから別に悲しいわけじゃないよ。フィオル、フェンリィ」
俺は足元に駆け寄ってきた息子と娘を抱きしめて膝の上に抱えあげる。
5歳と3歳になる2人は、今日はここにいないフェルとの可愛い子どもたちだ。
そして横には大きくなったお腹を撫でて、微笑ましく笑うシルディアが座っている。
まぁなんやかんやとありまして、メルフィの大切な2人を俺が引き取って、幸せしかありません。
「メイベル様、この国はきっととても素敵な国になりますよね」
「シューベル陛下がきっとそうなさるよ」
フェンリルの尻尾を隠しきれない息子と、フェルによく似た耳をピコピコと揺らす娘を撫でながら俺は未来に期待を寄せる。
この大陸で初めて魔族と共に共存している国として、他国から注目を集めているシュミール国。
俺は亜人のフェルも人間のシルディアも心から愛しているけれど、2人を同時に娶ると決めた時はそれなりに揉めた。
勇者とあろう者が魔族の血を受け入れるな、なんて脅されたこともある。
「もっともっと住みやすい国にしてもらわないとね」
きょとんと首を傾げる2人を力いっぱい抱きしめて、2人に抗議されて俺は笑う。
勇者が2つの血を受け入れることを政治的に良しとする思惑なんかも絡んでいるらしいけど、そんなこと俺はどうでもいい。
今でもフェルとこの子たちを狙う連中がいるらしいけれど、それもちゃんといつか殺し…処分して。
いつか人間とか魔族とか、そんな呼び名が無くなればいい。
「いたっ」
「ん?どうした?」
「あ、ちょっと痛い、かも?いたっ、う、メイベル様、きたかもしれません」
俺は式典などそっちのけで、子どもたちを抱えて席を離脱した。
信頼しているメイドの女性に2人を預けて、シルディアをそっと横になれる場所まで移動する。
その後はメイドが呼んでくれた女性たちの手によってシルディアのお産は始まり、式典が終わって少ししてからフェルも帰ってきた。
「2人は先にねましょーか」
「やだ、ママととーさまと妹見るの」
「フェンリィもまだねないの、寝たら寝ちゃうからやなの!妹出てくるの待ってるのー!」
「「妹?」」
まだ子どもがどちらか分かっていないはずなのに、子どもたちは妹だと思っているらしい。
フェルと顔を見合わせて、何となく本当にそうなんだろうなと思った。
それから8時間ほど経って生まれてきた子どもは本当に女の子で、母親とよく似た桃色の髪をしている。
「師匠って割と泣き虫ですよね」
「うるさい、生命の誕生というのは尊いものだから思わず泣けてきちゃっただけだ」
式典が終わってそのままシューベル陛下は俺たちを祝いに来てくれた。
かなり上等な赤ん坊用の服を用意してくれていて、小さな命を微笑ましそうに王妃様と眺めている。
実はシューベル陛下のことは剣の師匠として教えていて、こうして身内だけの時はついつい口調が戻ってしまうのだ。
「シルディアさんもお疲れ様です」
「恐縮です。両陛下もお疲れですのにわざわざありがとうございます」
小さな命はシューベル陛下が名付け親となってくれ、リアベルと名付けられた。
リアベルもシルディアやメルフィと同じ癒しの力があることをこの時はまだ誰も知らない。
シルディアの祖母が実はメルフィの前の聖女であることも、まだ誰も知らなかった。
「やっほ〜、私たち魔族からも祝いの品を持ってきたわよ!勇者さま!」
生まれてから3日ほど経って訪れたのはリンディスティさん率いる魔族の方々。
おもてなししようとしたシルディアは、ベッドから動くなと怒られて、フェルと俺で皆さんをおもてなし。
仲間意識の強い魔族たちは、ほかの種族であっても仲が良ければ祝い合うのが普通らしい。
「フェリックスお兄ちゃんも来たの?」
「来ては悪いか」
「ううん!ありがとう、フィオル!フェンリィ!おじちゃま来たよ!!」
フェルを嫁に貰う時に1番不機嫌だったのはフェリックスさん。
フェルだけじゃなくてシルディアも同時に娶ることが気に食わなかったらしい。
兄としてそれはそうだと思うけど、2人とも愛しているから許してもらった。
「おじちゃまーー!!!」
たくさんの人に少し怯えていたフェンリィが、おじちゃまの単語を聞いて吹っ飛んできた。
フェリックスさんの首めがけて全力で跳んでいって、少しハラハラしたけれどさすがに鍛えられている。
フェンリィを受け止めつつその体を回して勢いを殺し、姪っ子を柔らかく包み込む動作は華麗だ。
「おじちゃま!おじちゃま聞いて!あたちに妹ができたんだお!」
「うん。今日はそれをお祝いしにきたんだぞ。フェンリィとフィオルにもちゃんとお土産を用意している」
「やったー!!」
定期的に顔を出してくれるフェリックスに、フェンリィはとてもよく懐いている。
フェルとフェリックスさんの関係は複雑だが、フェンリィが産まれてからどんどん良くなっていた。
微笑ましいけど、娘が取られたような気がして少し寂しい父親心。
「リアベルちゃ〜ん」
微笑ましい光景は数日続き、フィオルやフェンリィもたくさんの人に可愛がられて嬉しそうだった。
こうしてシューベル陛下が陛下になった日は俺たち家族にとっても大切な日となり、国に定められた記念日は密かに特別である。
明日、本編最終回!!
ここまで読んで下さり、ありがとうございました!
あと1話で完結して、明後日番外編を載っけます!




