お姫様は死にたくない
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有り得ない。
有り得ない有り得ないありえないありえないありえないありえない!!
何度考えても見つからない。
『青薔薇の聖女』ではドラゴンの存在はあるけれど、本物のドラゴンとして復活する展開なんてないはず。
そもそも最初から全てが間違っている。
「ハッピーエンドはどこなのよ」
前回の世界では本物の聖女であるメルフィを利用していい思いは出来たけれど、私の本命が現れなかった。
ていうかイベントが起きなかったから、攻略することが出来なかった。
『青薔薇の聖女』は一応乙女ゲーなのだが、2週目3週目で隠しキャラが解放されたり、1周目では出来ないイベントが発生したりする。
1周目では王太子シューベル、魔法使いガルイム、神官ハロルド、王国騎士アイザック。
2週目からは魔王ラスタリス、魔族フェリックス、そして破滅のドラゴン。
3週目以降に隠しアイテムを使用することで兄であり、勇者であるメイベルを攻略することだって出来る。
「ハロルド様はいくら探しても見つからないし、ゲームと同じで何周も出来るか分からなかったから諦めて3番目に推しのガルイムで妥協したのに…」
ゲームの本命は王太子のシューベルだったと思う。
だけど私の好みじゃないし、エミキュールだとしたら弟になってしまうのだ。
本来は魔王を討伐するパーティでメイベルと肩を並べて戦うキャラだが、エミキュールというモブが参加出来るように早々に毒殺しておいた。
「聖女になったらハロルド様と恋愛でいると思ったのに
どこにも存在してないなんてどうしてなの…」
王国騎士アイザックはゴツイゴリラで有り得ない。
今回の世界では父親のフェドリックを本来結ばれない伯爵令嬢と結婚させたら、そもそも生まれなかった。
キモイから別にいらない。
メイベルは正直大嫌いだった。
妹馬鹿すぎてマジでキモイ。
「何がいけなかった?やっぱりメルフィは殺さずに閉じ込めておけばマシだったのかな…」
ガリッと爪を噛んで、早くこの周回がリセットされることを祈る。
こんな薄暗い牢獄にいつまでいなきゃいけないの。
ドラゴンが復活したとか騒いでいるのが聞こえた。
ゲーム本編ではメルフィと共に魔族も人間も救ってくれ、2人で永遠に生きるとかそんなだったはずなのに。
「次の世界では絶対に失敗しない。ガルイムはもう飽きたから、他のキャラを攻略しないと。ハーレムルートはないはずだから、メルフィが選んでから考えて…」
爪ごと指先を噛みながら、ブツブツとミクは過去の記憶を呟き続ける。
すると扉の開く音がして足音が近づいてきた。
そこに立っていたのは犬か猫か分からないけれど頭に耳を生やしたメスの獣人が2匹。
何も言わずに牢を開けて私の手首に手枷をつける。
「ちょ、ちょっと何よ無礼者!きゃ!?引っ張らないで危ないじゃない!」
どんなに抗議しても彼女たちは鋭い目を向けてくるだけで、一言も発しない。
それが気味が悪くて怖くて、殺されるのだろかと不安になる。
1度だけメイベルが会いに来たのに、あの恩知らずは助けてくれなかった。
「我々はここまでと命令を受けている。あとは自分の足で歩け」
大きな扉の前で2匹の獣人は止まる。
扉が開かれて中へ進まされると、テレビで見たことがあるような裁判所みたいだった。
私の正面には髭面のおっさんが座って私を見下し、その横にも似たような格好の人が2人いる。
さらに周りには人間も魔族も混ざって傍聴していて、私は罪人のように真ん中に進むしか無かった。
その中には綺麗なドレスに身を包んだメリィと同じく上等な服を着たメイベルが見える。
なんで私はこんなボロきれを着せられているのに、あの2人は魔族側の席に堂々といるわけ!?
「これよりシュミール王国第一王女、エミキュール・シュミールの罪状を述べる」
ごちゃごちゃと何かを話していた裁判官に突然名前を呼ばれて我に返る。
おっさんが読み上げていく内容には見に覚えがありすぎて冷や汗が背中を伝っていた。
王子暗殺や書類の改竄、毒物薬物、私と当事者しか知らないはずの内容まで読み上げられて、さすがに心穏やかにはいられない。
「…以上。これらのことを考慮した結果、被告人には死罪を言い渡す。何か反論はあるかね?」
「な、し、死罪!?待ってよ、あ、お待ちください、私は一国の王女なのです。そんな簡単に死刑になどできるわけが…、えっと、お父様に…」
「現在、シュミール王国の貴族の皆様は貴女がばらまいたとされる薬物によって、正常な判断を下せないという診断が出ております。国王陛下も然りです」
「だとしても、いきなり死罪だなんて…」
「先程、貴女が犯した罪を伝えました。私だけでなく、これは裁判官全員の総意です」
そのあと必死に抵抗をしたものの、クソジジイは私の言葉に耳を貸さない。
なんで誰も助けてくれないわけ?
こんなか弱くて可哀想なお姫様が困っているのにどうして誰も私を庇ってくれないのよ!
おかしいじゃない!?
「静粛に!!」
ドラマで見たような木槌をクソジジイが打てば、高い音が響き渡る。
冷酷な目で見下ろしてくるソイツは結局、私を死罪として3日後にシュミール王国の中庭で公開処刑をすると決めてしまった。
その後は先程の獣人が再び私を牢獄に戻して、私は泣き叫ぶことしか出来ない。
「おかしい、おかしい、おかしいこんなのおかしい」
前回の世界の最期を私は覚えてない。
ガルイムに見せてもらった記憶は、最後はガルイムと話していたところで終わっているのだ。
死ななきゃ次の世界にいけないとしても、痛い思いをして死ぬのなんか嫌に決まっている。
斬首刑って言ってた。
あれよね、よく見るギロチンってやつだよね?
そんなの嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ。
「お久しぶりです、姫様」
考え事に熱中していた私は声を掛けられるまで人が来ていることに気づいていなかった。
兄のメイベルと同じように話しかけてきたのは、黒いドレスに身を包んだメリィ。
そうよ、この女なら私を助けられるんじゃない?
「メリィ!メリィメリィメリィ!お願い、私をここから出して、死にたくないの…心優しい貴女なら、私を助けてくれるわよね?」
鉄格子にしがみついて手を伸ばし、メリィのドレスの裾を握りしめた。
丁寧なレースの編み込み、素材の質もかなり良い。
私は灰色のワンピースなのに、なんでこんなものをアンタが着ていられるのよ!!
涙を滲ませてゆっくりと見上げればメリィは同情するような目、ではなく、こちらを殺しそうなほど冷たい目で見下ろしていた。




