崩壊した世界の話
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何が起きたのか分からなかった。
どうしてこんなにも体が重いのか。
どうして魔法が上手く使えないのか。
ただ1つ分かっているのは、目の前のコイツのせいであること。
「どうですか?人に見下される感覚は」
「お前、俺に何しやがったんだ」
「仮ではありますけど、貴方と同じ力を手に入れて貴方を上回っただけですよ」
勇者と魔王の力を手に入れた俺を上回っただと?
この女は何を言ってやがる!
「私はこの世界で運命を呪って聖女じゃなくなりました。どう言うのが正しいのか分からないですけど、魔女とでも言うんですかね?」
「それがなんだって言うんだ!」
「ふふ、そんな怒鳴らないでください。魔女の私が勇者と魔王の魔力を一時的に奪い取っただけです」
本来の魔力の資質は聖女だったコイツの方が上で、そこに同じような力を持ってしまえば俺より強くなれるってことか。
あああぁぁぁ!ムカつく。
クソッタレが。
「それで、この方はどなたですか?」
メリィが指し示したのは黒猫の獣人。
ルルフがギリギリで転移に巻き込まれてきたのだ。
馬鹿な魔族だが、俺一人よりマシかもしれねぇ。
利用価値はある。
「俺が助けたルルフって獣人だよ」
「ルルフ、ルルフ…あー、あちらの世界で私の侍女をやってくれていた方ですね。その完璧な身のこなしは敬服しますよ」
そうやってニコリと微笑むメリィは、俺の知っているメリィとは大違いだった。
ここは前世の世界。
かつて俺たちが住んでいた城は半壊して、死体すら残っておらず、空も真っ黒で、魔法を使うことが出来ない。
雲のように黒霧が世界を覆っているので、魔法を発動させるための自然の魔力が一切存在しない世界に成り果てている。
「さて、まずは貴方に呪いをかけてあげましょう。すこ〜し苦しいでしょうけど、欲深い人間ならば1度は夢見た永遠の命という呪いを」
メリィが片手を少し振れば俺の胸の上に黒霧が渦巻き、焼いた鉄で皮膚を炙られるような激痛を伴って心臓の上に紋様が描かれる。
紋様が完成した瞬間、言葉では言い表せないほどの苦痛に襲われて俺は藻掻き苦しんだ。
文字通りのたうち回り、どこか遠くでルルフが悲鳴をあげながら俺を呼んでいる。
「…様!ガルイム様っ!ガルイム様!?」
ようやくまともに呼吸ができる。
息を吸って、吐いて、ルルフを見ればなんとも酷い有り様だった。
五月蝿かった耳鳴りも、殺して欲しいほどの苦しみも耐えられるくらいにまで落ち着いている。
ルルフは頭や口から血を流し、左肩は外れているのかだらんと力なく垂れていた。
「、ぉ、なっ…!?」
どうなったんだ?と聞こうとして、声が掠れて出ないことに気づいた。
噎せて咳込めば血が混じっている。
「あれから5日間も苦しんで暴れ続けていたんですよ。もう、体は平気ですか?」
5日間!?
せいぜい3時間くらいかと思っていた。
気絶したり起きたりを繰り返して時間の感覚が来るってしまっている。
キョロキョロと辺りを見回せばメリィの姿はない。
「ぅ、ぅぅ、…ぃぉ、ぅ」
喋ろうとしても掠れた声しか出ず、痛みが走ってまともに話すことが出来ない。
俺はルルフの名前をなんとか呼びながら、見覚えのある入口を指さす。
ボロボロで判別が難しいけれど、あれは下の階へ続く階段のあった場所のはずだ。
ルルフは動く片手で器用に俺を支えてくれ、俺たちはゆっくりと逃げ道を歩く。
普通ならば10分もかからず辿り着く外へと繋がる道まで、30分以上かけて歩いて絶望した。
「ぁ、んだ、ぉれ…」
「これが、シュミール王国なのですか…?」
城の中庭へ降りて城門らしきものを潜った時、ようやく城を渦巻く黒霧から抜けた。
黒霧から抜ければ大気中の魔力があって、回復だってできると思っていたのに…。
目の前に広がるのは荒野。
生き物の気配も陽の光も何も無い荒れた土地。
「逃げれると思ったんですか?」
可笑しそうな声が頭上から降ってきて見上げると、真っ白なローブを羽織ったメリィがいた。
文句を言おうと口を開いた次の瞬間、急に足の踏ん張りが効かなくなって俺は地面に倒れ込む。
何が起きたのかと立っていた場所を振り向けば、そこには膝から下が立っていた。
「ぁ、あ、ぅあ゛あ゛あ゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛!?」
「きゃぁあ!?ガルイム様の足、足がっ!!」
痛みを感じて叫んだ次は全身が跳ね飛ばされ、宙を舞っていた。
驚いて目を見開くと胸にぽっかりと穴が空いている。
真っ黒の空を見ながら自分の血と臓物が飛び散る様を眺て呆然とした。
魔法が使えないから何もできない。
受け身すらまともにとれず、地面に何度か体を打ち付けてようやく止まった。
「もう1人の私の足を奪ったお返しと、お兄ちゃんの胸に穴を開けたお返しです」
出血もすごくて、心臓も潰されているはずなのに、意識ははっきりとあって死ぬこともない。
大量の血を吐いて痛みにのたうち回っても現実からは逃げられなかった。
ごちゃごちゃの頭でメリィだけが悪だと認識できて、俺は見下ろしてくる青紫の瞳を睨み返す。
「何を怒っているんですか?全部貴方がしてきたことだと自覚がないのでしょうか」
はぁ、とわざとらしくため息を吐いた。
うるさい、うるさい、うるさいうるさい!!
殺してやる殺してやる殺してやる。
「ふふふ、私を殺したいって顔してますね?でも今の貴方じゃ無理ですよ。この間私は私のことを魔女と言いましたが、間違えました」
楽しそうに微笑んで、青紫の瞳が今までで1番冷たく光ったように見えた。
メリィは俺のすぐ側にしゃがみこんで顔を近づける。
「私はこの終わった世界の神になったんです」
「…っ、か、み……?」
「魔王や姫様は洞窟で眠るドラゴンを破滅の卵だと言っていましたが、それがそもそもの間違いなのですよ」
長くなるので明日に分けます




