再会
ブックマーク&感想&評価ありがとうございます!
とても励みになっておりますので、これからも頑張らせていただきます(ง •̀ω•́)ง
ラスティではなく、ラスタリスと真名を呼んだ。
目の前に本人がいないから本当にただ絞り出しただけのつもりだったのに。
…来てくれた。
何故かお兄ちゃんまで一緒に現れて、私は何とかルルフを助けてとお願いする。
「ほら、あとはメルフィの出番だ。大丈夫か?」
ルルフの体にできる限り負担が掛からないように気を使ってラスティはルルフを岩から助け出してくれた。
お兄ちゃんが輝くような美しい剣で私のブレスレットを断ち切ってくれ、私はようやく魔法が使えるようになる。
そして全力を込めてルルフの体に注ぎ込んだ。
「メイベル、お前のその宝剣はあの洞窟で見つけたのだろう?」
「はい。フェルちゃんがこれは持っていた方がいい、と無理やり押し付けられる形で…。でも本当に俺のなんじゃないかってくらい手に馴染むんです」
そんな会話を遠くで聞きながら、ルルフの命の灯火が安定したことにほっとした。
相変わらずドラゴンはすぐ近くで暴れていて、気が狂いそうなほど濃くて強烈な魔力を浴びせられている。
それなのにラスティがいるから?
それとも勇者であるお兄ちゃんのおかげだろうか?
何故か私は安心しきって治癒に集中出来ていた。
「ラスティ、恐らく峠は越えたと思います。学園までルルフを転移させて貰えますか?」
「あぁ。ところでメルフィ、その足はどうした?」
私は再びギクリと体を強ばらせる。
足の感覚が未だに戻らないのだ。
治癒をかけてもそもそも魔力が流れているのかも分からないくらい何も感じない。
ラスティもそれに気づいたようで、私は足でまといになっていると自覚した。
「ガルイムに、やられて」
「「あのクソ野郎」」
ラスティとお兄ちゃんの声が重なってギョッとした。
あ、あれ、なんかすごいめちゃくちゃ怒ってる。
ラスティがこんなに感情的なの初めて見た。
お兄ちゃんがこんな恐ろしい顔してるのも初めて見た気がする。
あ、もう1人の私にそっくり。
さすが兄妹。
私も妹だけど。
「メルフィ、ルルフと一緒に学園へ送るから向こうのことを任せてもいいか?その足はもしかしたらシルディアなら治せるかもしれないだろう?」
「っ!シルディアは無事ですか!?」
そう、私の気を失う前の最後の記憶はシルディアの首を切ろうとするお兄ちゃんたちで終わっているのだ。
助けたけれど、完璧に助けられたか自信が無い。
シルディアの名前を聞いたお兄ちゃんの反応も青ざめたようになって、余計に不安を煽った。
「身体的には無事だ。メルフィが攫われて酷く責任を感じていたみたいで治してもらうのもそうだが、早く顔を見せてやれ」
そうして私とルルフの真下に魔法陣が現れた。
ドラゴンは変わらず暴れていて、お兄ちゃんは私を安心させるように笑いかけてくれる。
「メルフィ、シルディアさんに後でもう一度謝りに行くと伝えておいてくれ」
「うん、分かった。シルディアに足を治してもらったら私もすぐにそっちに向かう!」
「え、それは………」
お兄ちゃんが何かを言いかけた所で、私の視界は切り替わる。
そこは見慣れた学園の庭で、私の出現に校長が飛んできた。
さらに近くにいたルーシェまで飛んできて、私はみんなが無事であることにほっと胸を撫で下ろす。
「メルフィ様!!?」
「メルフィ様!」
「ドラシェン校長、ルーシェ」
すっかり大きくなったルーシェは私に一度抱きついて、慌てたように身体を離す。
頬が赤くなって、どうやら恥ずかしかったらしい。
そのすぐ側には涙ぐんだドラシェン校長。
「ご無事だったのですね…、本当に本当に心配したんですよ」
「2人ともご心配おかけして申し訳ないです。ですが、今は時間がありません」
1度微笑んで気を引き締めるように顔を作ると、2人も緊張した面持ちになる。
よく見ればルーシェと変わらないくらいの大きな子どもたちが、小さな子どもたちを囲うように廊下の奥に控えていた。
他にも先生たちがこちらを見ていて、どうやら避難する途中だったらしい。
迅速な行動を取れている。
「まずは子どもたちの避難を優先、校長はすみませんが彼女を地下牢の方へ連れて行って貰えませんか?その後は知っている情報を教えてください」
ドラシェン校長は少し複雑そうな顔をしながら、ルルフを横抱きにして消えていった。
子どもたちは少し不安そうに校長室へと向かっていく。
実はそこに地下牢のその下の改装に行ける隠し階段を用意していたのだ。
もちろん、こういう時のために作って貰ったもの。
ドワーフのみんなにはかなり頑丈に作ってもらうようにお願いしていた。
地下層の避難所だが潰れることは、そうそうないだろうと思う。
見守っているとすぐにドラシェン校長が帰ってきた。
「お待たせ致しました。まずは各地の部族の元へ魔王様が避難勧告を出してくれ、戦えない者たちは皆ここに避難するように支持されておりました」
「ありがとうございます。それで、戦える者は?」
「魔王様と勇者様をお助けするためにドラゴンの出現場所へ…」
「それじゃだめ、校長!フェンリルと…フェリックスと今すぐ連絡したいのですが方法は!?」
ドラゴンの所に全員が集合してしまえば、こちらが手薄になり過ぎる。
このドラゴン出現で流れが変わってくれていたらそれでもいいが、薬物に狂った人間たちが歩みを止めるとは到底思えなかった。
フェンリルたちは元々進んで警備のようなことをしていたから、各地に配属させられている。
「お待ちください」
パタパタとドラシェン校長は皆の後を追うように校長室へと消えていった。
そうして持ってきたのは顔くらいの大きさの鏡。
それを手渡された次の瞬間、私の足元ににょきにょきと木と草が生えてきて私のちょうど足先が付くくらいの椅子になった。
「何やら足がおかしく感じましたので。すぐにシルディア様とフェル様もお呼びしますね。お2人が1番メルフィ様を心配しておりましたし」
深くは聞かず、最善策を取ってくれるドラシェン校長は素晴らしい人材だ。
ありがとう、と声をかけて私は鏡に呼びかけた。
「フェリックス、フェリックス聞こえますか?」
「………誰だ?今は忙し……無事だったのか」
「はい。とりあえず、ですけど。そんなことよりも今は重要な話があります!」
私はひとまず皆の安全を優先する。
私の足元に彼女が居たとしても、今は皆の命だ。
眠るもう1人に罪悪感を抱きながらも、私は自分の最善策を選びとる。




