創世のドラゴン
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表現が間違っていたので少し修正致しました。
『嘆かわしい』
『愚かなる生き物よ』
『卑劣で醜い者たちよ』
金色にも銀色にも空色にも見える美しい鱗。
孤独を紛らわすために産み落とした世界は、自分と同じく美しく仕上げた。
つもりだった。
美しさを際立たせる為には僅かな残酷さもいる。
そうして生み出した命の循環は、人間という生き物によって崩壊していった。
「神よお助け下さい」
「神など存在しない」
世界を産んだのは事実でも、神と呼ばれることはあまり好ましくはなかった。
気まぐれで気に入った人間に恵を与えれば最初こそ崇められるが、力を手にしたそれらは皆同じと言っても良いほど嫌悪すべき者たちへと変わる。
それを数百年ほど眺めた後、産み落とした世界への愛おしさよりも呆れが勝った。
『愚かなる生き物よ、我はもう貴様らには付き合いきれん』
そう言って世界を見捨てようとした。
遅かれ早かれこの世界は終わるだろう。
不図、消えるだけの世界を残して行くのは生みの親として無責任だと思い至った。
だからその時気に入っていた人間には希望の在処を。
そして哀れな世界には破滅を残すことにした。
『その力は脈々と受け継がれるだろう。それは血筋などという軽薄なものではない。資格を持った者にのみ受け継がれていくものである』
『そして』
『コレを手にするものは世界を統べるだろう。だがそれは、幾人もの犠牲を伴う破滅の種。これは貴様らに託す最後の望み』
これ以上の愚かさを重ねないよう希う。
己の力と、人との絆こそが真理。
そう言い残してドラゴンはこの世を去った。
そうして時は経ち、経って経って、希いを覚えているものは僅かとなる。
「リンディスティ?」
「ラスティ、世界が終わるわ」
メルフィを探すことに躍起になっていた俺は、突如現れたリンディスティに驚いた。
洞窟へ旅立つ前に休眠中の彼女を叩き起したのは、彼女ならば正しく卵に対処できると思っていたからである。
だが彼女は期待虚しく再び眠りについたと思っていたのだが…。
相変わらずだらしない格好のままで、髪はボサボサ伸び放題。
そんな彼女は数日前に会った時とは違って、はっきりとした意志をその目に宿している。
「世界が終わるとは…」
そう言ったその時、前回の世界でも感じることのなかった悪寒が背筋を駆け抜ける。
座っていた椅子から立ち上がったその時、強烈な轟音と共に重苦しい魔力が押し寄せてきた。
あれは、この間メルフィたちが訪れていた洞窟の方角で間違いない。
「まさかドラゴン?」
ここまで禍々しい魔力を感じたのは初めてのことだ。
思考が停止したのは一瞬で、すぐに行動に移す。
俺は玉座から飛び降りて窓枠に足をかけ、庭へと飛び降りた。
そのまま跳躍し、グリフォンの飼育場へと降り立つ。
「魔王様!?」
「今すぐグリフォン全てにこれをつけて、各地へ飛ばせろ。意味はわかるな?」
俺が飼育係に命じたのは、とある石をグリフォンに持たせること。
それは同じ石が近づくと、片方から音が鳴る暗黒の地にしか存在しない石である。
悲恋の乙女石と呼ばれていて、俺が持っている石の方が裏切った男。
不快な音を奏でる石の方を嘆きの乙女だと例えてのことらしい。
裏切り者が近づけば、乙女は悲鳴をあげるのだ。
「は、はい!避難を命じるのですね?あの魔女様がお作りになられた学園へ」
「頼む!」
そう言って俺は再び跳躍する。
決戦の間へ戻ると、リンディスティが既に行動を起こしてくれていた。
メルフィが配置してくれていた騎士たちを即座に避難誘導へと回し、各族長へ伝達用の手紙と鳥たちまで用意してくれている。
「私の眠りが浅くてよかったわね」
戻ってきた俺の存在に気づいてリンディスティは妖艶に微笑む。
あぁ、本当に昔から頼もしい女性だ。
物忘れが激しいのが玉に瑕だが。
「うおっ!?」
「なんだろうね、今すごく失礼なこと考えなかった?」
羽根ペンが真っ直ぐに顔に向けて飛んできて、冷や汗をかいた。
いやまぁ刺さってもすぐ治るけれど、怖い。
「ともかく、一刻を争うよ。勇者の子が近くにいるんだろう?ラスティはその子連れて、対処しておいで。こっちは任せてくれていい」
「あぁ助かる。避難場所はメルフィの学園だ」
そう言って学園に向けてもう一跳び。
学園は魔王城からそう遠くない位置に作られている。
メルフィがその場所を選んだのは、俺がこうしてすぐに駆けつけられるようにとのことだった。
子どもは国の宝だから優先して守るべきだと。
「メイベル!」
学園の庭に着地して顔をあげれば、すぐ目の前に勇者がいた。
少し驚いたが、向こうも驚いた顔をしている。
俺が空から降ってくるとは思っていなかったようだ。
「が、学園長が、ここにいたら貴方が来ると…」
「さすがドラシェンだ」
「メイベル!俺の手を掴め。あのドラゴン、を……」
禍々しい魔力は未だに影響力を増し続けて、他の魔族たちの気配が掴みづらい。
だと言うのに、その声だけははっきりと聞こえた。
真名を呼ばれる感覚というのは、こんなにも幸福感に満たされるものだったのか。
『ラスタリス!!』
探し求めた少女の声だ。
その切羽詰った声に俺は何も考えられない。
今はただメルフィの元に行きたい。
無意識に足元に魔法陣を展開し、俺は声のする場所へと転移する。
消える直前に俺の手を掴んだメイベルも巻き込んだ。
「……っ、らすてぃ」
目の前にはポロポロと美しい涙を流すメルフィ。
生きていた、大きな怪我も見たところない。
あぁよかった。
「メルフィ!!」
その細い体を抱きしめようと手を伸ばしたが、俺よりも先にメイベルが動いた。
同じ色の髪が重なって、メルフィは自分を抱きしめる兄を見て驚いている。
胸に僅かな葛藤が芽生えたが、メイベルも死ぬほど心配していたことを知っているから俺は我慢した。
そう、本当に、我慢したのだ。
「お兄ちゃん…?どうして、あ、今はそんなこと言ってる場合じゃないの!お願い!ルルフを助けて!」
メルフィの言葉に冷静さを取り戻せば、メルフィの傍らに黒髪のケットシーの姿があった。
既に虫の息のようで、腰から下が岩に潰されているようで見えない。
これを、助けろと…。
よくよく考えれば、ルルフのことはあの洞窟以来見ていなかつだた。
「メルフィ、もしかしてルルフは裏切り者なんじゃないか?それを、助けろと?」
俺の言葉にメルフィがビクリと肩を揺らした。
人間の世界で酷い目に合っていたらしいところを保護して連れ帰ったケットシー。
優秀で信頼できると思っていたが、こんな形で仇で返されるとは思わなんだ。
「お願い、それでも。今私が無事なのはルルフのおかげなの!」
「………はぁ、分かった」
俺はしぶしぶ頷いた。




