人魚姫
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それからどのくらい経ったのだろう?
体感は3日ほど。
陽の射さない場所なので時間の感覚がない。
ついにガルイムがやってきた。
「やぁメルフィ!お待たせ。色んな後処理をしてたらなかなか来れなくってさぁ、退屈だったよな?」
「…」
私は静かに彼を睨みつける。
それでもガルイムは楽しそうに笑って、私の髪のひと房をとって口付けを落とした。
気持ち悪い!!
「はは、そんな顔すんなって。後処理ってのはな?姫が傀儡にした馬鹿どもに戦争の準備をさせてきたんだ」
「は…」
「だから、魔族が姫君を誘拐したって焚き付けてさ。魔族も戦争が起きたらメルフィを探すどころじゃ無くなるだろう?これで誰にも邪魔されない」
コイツ、自分の私欲のために国を動かしたの?
確かに姫を攫ったのは私だけど、こんな風に魔族たちに迷惑をかける為じゃなかったのに!
サァッと血の気が引いて、悔しさに唇を噛み締めた。
そんな私の唇をガルイムの親指が撫でる。
「あぁほら、そんな風に噛んだら切れてしまうよ?」
「触らないで!」
「あはは、毛を逆立てる猫みたいだ。まぁ俺は猫っていうか、動物が好きじゃないけどね。ついつい殺しちゃうからさ」
殺したくなるじゃなくて殺しちゃう、か。
本当にこの人は頭がイカれている。
前世では何でこんな人を好きになったんだろうか。
見る目がないにも程がある。
こんなにも近くにいるのに、何も出来ない自分に腹が立って仕方がない。
「あぁそうそう、メルフィ」
ニヤリと笑ったガルイムの瞳が影を落としていた。
パチンと指を鳴らした瞬間、身体に違和感を感じる。
あるはずの物が無くなるような、大事なものの使い方が分からなくなるような不快感。
私は自分の足を見下ろす。
もちろん両足は揃っていた。
「万が一ってこともあるから、逃げづらいようにしておくな?」
足の感覚がない。
動かすことも出来なければ、触れてみても感触を感じ無くなっている。
腰から下に重たい鉛でもついているみたいだ。
理解が追いつかなくて、ただただ喪失感に襲われる。
「体の機能を奪うの得意なんだよ。おもしれぇだろ?」
ははは、とガルイムは笑う。
何が可笑しいの?
ひとしきり楽しそうにしたあと、ガルイムの私を見る目付きが変わった。
「はは、そんな怯えんなよ。本気で虐めたくなるからさぁ。まぁ味見くらいならもういいかなー?俺のだし」
そう言って1歩1歩と近づいてくる。
伸びてきた手に悪寒を感じて身構えた。
魔法さえ使えれば足がどうなろうとも逃げられるのに、ベッドの上で足も魔法も使えなければ私はただの女である。
伸びてきた手が私の髪をひと房掬いあげて、ガルイムがその毛先に再び口付けを落とした。
「これは自慢なんだけどさ、俺って整った顔立ちしてると思うんだよ。狙って落とせなかった女はお前くらいなんだよな」
「…そうですか」
「だからさぁ、こうやって迫って頬を染めるんじゃなく、そんな風に怯えた顔されるのって新鮮なんだわ」
そう言いながらニヤリと笑って肩を掴まれる。
そのままベッドに押し倒されて、ガルイムの顔が間近に迫ってきた。
ニヤリと笑う顔をカッコイイだなんて思う余裕もなく、ただ抵抗できない恐怖に悍ましさが募る。
嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ触るな触るな!
助けて、誰か、ラスティ、ラスティ!!
「…?」
ぎゅっと目を瞑って、嫌悪感に耐えるしかないと思ったその時、ガルイムも私も硬直した。
一瞬にして張り詰めた空気は、魔法を使えるものならば誰もが感じただろう。
空気…いや、魔力の塊が天井のその先、遠いはずなのにどんどんと膨れ上がって近づいてきた。
巨大な魔力の塊を感じて、今感じていた恐怖とは別の悪寒が背筋を駆け抜ける。
「ドラゴン?おかしいな、ちゃんと処理したはずだが」
「これが、破滅のドラゴンの魔力…?」
「せっかくのお楽しみだったのに、クソが。ぶっ殺してやる」
ガルイムは立ち上がってどこかへと転移したようだ。
ほっとしたのも束の間、すぐに何かが歩くような地鳴りと地響きがして鉄格子の外に土の雨が降っている。
ここがどこだか分からないけれど、天井が崩れてきたら私も終わりじゃないか。
さっきのことで半泣きになっていた私は目元を乱暴に拭って、魔力の気配を探ることに集中する。
「…なんて、禍々しい」
はっきりとは分からないけれど、魔力の感じる範囲が尋常じゃなく広い。
山のように大きなそれがすぐそこまであるようだ。
感じ取るだけでその魔力に酔ってしまいそうなほど、禍々しくて強大な魔力。
一体外で何が起きているのだろうか。
ドラゴンの出現で、どれだけの人が犠牲になったんだろう…?
「メルフィ様、失礼致します。緊急事態ですので無駄な抵抗はされませぬように」
そう言って檻に入ってきたのはルルフで、私を横抱きにして部屋を出る。
私がいた場所は、私が学校に作った地下と似ていてむき出しの岩盤の中心に私のための檻を作っていたようだった。
ルルフの全身に魔力が帯びていて、素早く出口まで駆け抜ける。
途中落下してくる石や小石を全て避けていて、こんな状況でも思わずすごいと思ってしまった。
「メルフィ様!!」
あと少しで出口に辿り着く、そんな時に大きな衝撃と共に天井が崩落した。
ルルフが纏う魔力が強くなって突風に呑まれる。
投げ出された地面は冷たくて、魔法が使えないことも足が重いことも変わらない。
ただただ衝撃に備えて動かない足を抱き寄せるように目を閉じ、頭と膝を抱えた。
数秒だと思う。
体感は数分だったけれど。
「ルルフ…?」
パラパラと小石が転がるような音だけになって、風から開放された私は辺りを見回す。
落ちた天井のおかげで太陽が辺りを照らしていた。
私の周りだけ何も落ちてきていない。
砂埃が舞っていて周りはよく見えないけれど、私の目の前に小さなつむじ風が舞っている。
それは声をかけると、横へとズレていって岩場に当たって消え去った。
「るる、ふ?」
つむじ風の消えた、その向こうには見慣れた猫耳が見えた。
だけど彼女はぐったりと横たわっているようで、返事もなければ動いている様子もない。
必死に足を引き摺って、砂埃に噎せながら近づいた。
「ルルフ!」
やっぱりそれはルルフで間違いない。
だけど、大きな落石の下敷きになっている彼女は既に意識はなく、膝から下の様子も見えなかった。
回復したくても魔法が使えない。
ルルフの呼吸は既に僅かで、一刻を争うだろう。
裏切り者でも何でもいい。
目の前で死なれることが嫌だ。
「ルルフ、ルルフ!ルルフ死んじゃダメ、まだ、まだ償ってもらってないから!ルルフ!」
声は誰にも届かない。
「るる………ラスタリス!!!」
本日はハロウィンですね!
レイヤーさんの本気を窺えそうです。




