洞窟探索 メルフィ3
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「やっと追いつきましたよ。姫様」
近道を抜けた先には揺れる金色の髪があった。
薄桃色の外套を羽織って、すぐ側には黒い外套を頭まで羽織ったフェドリック兵長もいる。
「ほんっと憎たらしいわね、メリィ」
この人の口からもう二度と呼ばれることのないと思っていた愛称。
ガルイムもそうだけれど、愛称を呼ばれる度にお兄ちゃんを失った痛みを思い出す。
そうやって呼ぶお前たちが、私の1番大切なお兄ちゃんを殺したんだろうが。
「途中でリーシャとディガーに会ったわ!その後ろのはフェリックスね?随分と幹部たちを手懐けているみたいで驚きだわ」
「っ!2人に何したの!!」
「貴方も邪魔だから寝ていなさい、フェルニクス」
姫がそう言った瞬間、横でフェリックスがドサリと音を立てて倒れた。
慌ててフェリックス胸元に魔力を流すが、何の異常も見られない。
本当に眠らされただけのようだ。
姫へと目を向けると、勝ち誇ったような顔でこちらを見下ろしている。
「ふふ、私はねー?出てきたキャラのことはぜーんぶ覚えてるのよ。すごいでしょう?」
この場に、魔王が来てなくてよかった。
この人の言うキャラがなんなのか分からないけれど、重要人物の真名を知っているということだろう。
ラスティがこの女の言いなりになるところなんて、絶対に見たくない。
黒霧でフェリックスを包み、来た通路の入口に移動させる。
「フェドリック、あとは任せるわね」
姫は兵長にそう命令して踵を返す。
姫の向かう先には金色に黒い模様がある子犬くらいの大きさの卵があった。
あれを渡してはいけない。
だが、目の前には片手で身の丈よりも大きな槍を持つ兵長が立ちはだかる。
「1度ならず2度までも、我が主君の目的を前に楯突く愚か者め」
「1度目は私は何もしていません。今は、世界を滅ぼそうとする悪い人から、大事なものを守ろうとしているだけ。愚か者がどちらか本当に分からないのですか?」
黒霧を使えばいいだけのはずだ。
けど、体が強ばっている。
今世で最初に私を殺した人。
体が無意識に怖がっているのが分かる。
「はぁぁぁぁあああ!」
片手で器用に槍を振り回して、低い声で唸りながら迫ってくる。
私はそれを静かに迎え撃ち、足元への一撃をひらりと跳んで躱した。
そのまま兵長の肩へと着地して、思い切り踏み込んで私はさらに高く舞う。
空中で一回転する時に見れば、兵長はバランスを崩しながらもすぐに立て直し、飛ぶ私に向けて槍を投擲。
それを黒霧で壁を作って受け止めて、逆に卵へ前進する姫に向けて放った。
「姫君!!」
「え?びゃぁあ!?」
兵長が声をかけなければ足に命中していただろう。
突然のことに驚いて尻もちを付く姫は、姫とは思えない形相で兵長を怒鳴りつけた。
「何してるのよ!危ないじゃない!?足止めもまともに出来ないわけ!このゴミが!」
「大変申し訳ございません。すぐに敵を排除致します」
兵長は腰から取り出した小さな小刀の柄の部分を地面に突き刺して、手のひらをその刃へ突き刺した。
何をしているか分からないが、見ているこちらが痛い。
なんて気にしている場合ではなかった。
その間に私は姫の真横へと飛び降りて、とりあえずこの自由に動く危険人物を捕らえたい。
眠らせるか、それとももうここで殺してしまおうか。
引きつった顔の姫は槍を持ち上げようとそれを握るが、重たいそれに逆に倒されて再び尻もちを付く。
「フェドリック!!」
「逃がしません!」
姫が叫んで、それを遮るように私も叫んだ。
もう目の前。
手の届く範囲だ。
私の黒霧で呑み込んでから転移して、監禁できる場所まで移動しよう。
どうせ兵長1人じゃ卵は扱えない。
「ぐあぁぁぁあああ!!」
私は姫の首を掴んで押し倒した。
それと同時に聞こえた雄叫びに振り向けば、顔中から出血した兵長と目が合う。
その目の前には血で描かれた魔法陣があって、そこから真っ黒の獣が10体ほど出現していた。
兵長の魔力量はそんなに多くないはず。
顔中の粘膜から出血しているのは、それだけ魔力を絞り出して酷使した結果だろう。
「やっぱり愚か者は貴方だと思います」
前世では恐ろしくも頼もしい人だった。
今世ではこの女に利用されて兵長でいることすら出来なくなった可哀想な人。
魔獣は私に向けて真っ直ぐ駆け抜けてくる。
自分の下で姫が悲鳴を上げて魔獣に脅えていた。
「貴方はもう、休んだ方がいい」
そう告げて私は黒霧で魔獣を切り裂く。
真っ直ぐに向かってくるのなら、こちらも真っ直ぐに見えにくい刃を置けばいい。
私に辿り着く前に召喚された魔獣たちはバラバラに朽ち果ててその役目を終える。
兵長はそれを見届けて、目から光が消えたと同時に膝をついて受身も取らずに地面へ倒れ込んだ。
「私はやることがあります。貴女は先にあちらへ行っていてください」
「め、メリィ?少し話し合いましょう?お願い、私の言うことならなんでも聞いてくれた貴女じゃない」
「それはあくまで過去の話ですよ、姫様」
「やめっ………」
軽く首を絞めながら私は黒霧の中へ姫を沈めた。
転移先は幾重にも魔法をかけた地下室。
あの学校の地下に作らせた監禁部屋である。
魔法を使えなくする魔法、体力を奪う魔法、空腹は感じても餓死しない魔法などなど、この人たちを監禁するために作った場所だ。
ようやく、手に入れられた。
復讐はゆっくりとじっくりとしていきましょう。
「さて、あとは卵ね」
私は立ち上がって金と黒の卵へと近づく。
そして、それが卵じゃないことに気づいた。
金色に染められた楕円の石だったのだ。
これが卵じゃないなら、本物はどこに!?
「ははっ、そんなに姫を捕まえるのが嬉しくて仕方なかったのか?妬けるなぁ」
………。
声のした方へ振り向けば、赤い髪の男がこちらをニヤついて見下ろしている。
もう1人の復讐相手。
あれだけ厳重にしている監禁部屋でも、きっと彼は捕えられない。
だから、彼とはここで決着をつけてやる。
「また会えて嬉しいよメリィ」
「私もあい………」
会いたかった、そう言おうとした。
けれど突如として世界が暗転して、私の目には何も映らない。
映らないはずなのに、ゆっくりと後ろから手が伸びてきて視界を覆われる。
『ありがとうメルフィ』
それは紛れもなく私の声。
『でも、駄目。これだけは譲れないの』
覆われた手のひらの裏で、私の瞼はゆっくりと閉じられる。
あぁ、そうだったんだ。
私は…………
フェリックスとフェドリックは名前は似てますけど何の関係もないです。
フェドリックは何となく響きが気に入って使用した後に、フェリックスと似ていることに気づきました。
紛らわしかったら申し訳ないです。




