洞窟探索 シルディア2
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「…で!シルディ姉様を連れてきて、その時のメルフィ様は王子様みたいにかっこよかったんですん!」
「そっかぁ、姫様が言ってた話はその事だったんだね。でも、そんな裏事情があったなんて知らなかったな」
メイベル様と名乗られたそのお方は、メルフィ様のお兄様なのだそうです。
どっからどう見ても血縁者なのは間違いありません。
同じ青紫の髪と瞳、少しだけ癖のある毛先、笑った顔のよく似ていること、何よりその雰囲気。
けれど私は何故か違和感を覚えているのです。
「あ、シルディアさん、この分かれ道はどっちに進んだらいいですか?」
「えっ、えーと、右です!」
「ありがとうございます」
警戒していた私は突然声をかけられて驚く。
慌てて地図を拡げて道を確認すると、メルフィ様によく似た笑顔を返されました。
似ているのに、何なのでしょう?
ただとりあえずメルフィ様の話でフェルちゃんと盛り上がっていて、ちょっと羨ましいです。
「ん?2人とも止まって!」
不意にメイベル様が声を鋭くしました。
私も辺りを警戒します。
フェルちゃんはクンクンと匂いで辺りを確認しているようです。
地図上には特に何も表示されてはいません。
が、静かになれば少しづつ聞こえてくる不快な音。
「シルディ姉様、ヤな音しますです」
「2人とも俺の後ろへ。できるだけくっついていて、離れないで」
トテテッとフェルちゃんが抱きついてきました。
私はそれを受け止めて、音の正体へと目を向けます。
少し下りになっている道の先、ついに見えたのは巨大なムカデ。
「ひ、ぎゃ、ぐぅ!?」
めちゃくちゃな悲鳴を上げそうになって、それを小さな両手でフェルちゃんに押さえられました。
フェルちゃんは耳と目をしっかりとムカデに向けていて、私は唇を噛み締めます。
血とか臓物は見慣れたものですが、あんなに巨大な気持ちの悪い昆虫を見たのは初めてでした。
出来ることならば会いたくなかった。
「速度低下、毒効果、神経麻痺、なかなかやっかいな奴だな、はァっ!!」
メイベル様はそう言うと腰に差していた剣を手に取り、ムカデに突撃していきます。
まずは頭、ではなくておしり側に走ってきました。
ムカデはそんなメイベル様に反応して、赤い大きな頭を後ろへと擡げます。
裏側がよぉく見えて、ぞわぞわぞわっと全身に鳥肌が立ちます。
「命を育む水よ、世界を回す風よ、声を見守る木々よ」
メイベル様が呪文のようなものを唱えます。
だけどそれは、まるで世界に語りかけるような優しい声色でした。
青と白と緑の煌めきに包まれ、それらはキラキラと輝いたままメイベル様の剣へと集まり、次の瞬間メイベル様は目に追えないスピードになります。
まるで風そのもののようでした。
「俺が気になって仕方ないか?そうだろう、お前のその毒、かけれるもんならかけてみやがれ」
メイベル様が縦横無尽に洞窟内を駆け回ると、ムカデはイラついた様子でグルグルと頭を回しました。
そして、キシャアァ!耳鳴りのような高音で鳴き叫び、その口から紫色の液体を吐き出します。
たまたま近くにいた小さな蜘蛛にその液体がかかると、ブルブルと痺れたように震えてすぐに動かなくなりした。
先程メイベル様が呟いていたのは、あのムカデの体液がもたらす状態異常のことのようです。
「シルディ姉様、後ろからも変な音が…」
フェルちゃんにそう言われて振り向くと、後ろにはアリの大群が来ていました。
しかも全部子犬くらいのサイズ。
気持ち悪い!怖い!カサカサいってる!!!
思わずフェルちゃんを抱きしめて、壁に背を付ける。
「その2人に手を出すな!」
そう言ってメイベル様が剣を横凪に斬ると、離れた先からだと言うのに剣から見えない刃が飛びました。
おかげで先頭集団が粉微塵に吹き飛びます。
しかしその程度ではいなくならない量。
私は正直、戦闘に関しては何もできません。
そして大嫌いな昆虫が巨大化して目の前にいる時点で、気が遠くなりそうです。
「メイベルさま!!!」
「っ!?」
アリに集中しすぎていた私と違って、周りを見ていたフェルちゃんが叫びました。
アリを蹴散らしてくれたメイベル様は空中で大振りをしていたのですが、ムカデはなんとその着地地点に毒を吐きかけたのです。
空中で動けないメイベル様はそのまま抵抗できずに着地してしまって、剣を地面に突き刺して片膝を付いてしまいました。
「メイベル様!」
私の得意魔法は蘇生もできる回復です。
状態異常はもちろん、毒なんて全て浄化してあげましょう!
フェルちゃんの腕を掴み、浄化魔法を足先に集中させて動けないメイベル様の元へ。
その背に手のひらを当てて集中します。
私は自身の魔力をメイベル様へ拡がるように流し込み、メイベル様の体に混ざり込む不和を外へと押し出すようにしました。
「もう少しです」
そっと呟いて魔力で包むようにして体外へと押し出すことに成功しました。
けれどなんでしょう、この違和感?
メイベル様の頭の奥の奥の方、感じ取るのも僅かなその違和感。
『おっと、まだ解いてもらっちゃ困るんだ』
ズキンっ!!!
と頭に激痛が走って、私はメイベル様から手を離してしまいました。
今のは、一瞬だけ真っ暗な世界に引きずり込まれたような…?
「シルディアさんありがとう!」
我に返ればメイベル様が元気よく駆け出していき、巨大ムカデへと再び挑みに行きます。
そうして先程よりも軽やかに飛び上がったメイベル様は、大ムカデの赤い頭を切り落としました。
頭はベシャッと嫌な音を立てて落下し、頭を無くした胴体はのたうち回ります。
さらにのたうち回る胴体は毒の体液を辺りへと撒き散らしながら動き回って、アリたちが数匹被害に遭って避難しました。
「今のうちだ!」
その掛け声に合わせて私たちはメイベル様に続いて走り出します。
毒の体液に慌てるアリたちとは反対の通路の奥へ。
が、ムカデの胴体が暴れ狂うにつれ、嫌な音が後ろから響きました。
振り向いたその時、私の視界がおかしいです。
確かに地面に立っているはずなのに、今走り抜けたばかりの地面が腰の高さにありました。
「え、ひぃ!?」
「シルディ姉様!」
頭が理解するより早く、体をゾッとする浮遊感に包まれて私は思わず頭を抱えました。
暴れたムカデのせいで地面が叩き割れ、私はその地割れに飲み込まれてしまったのです。
私が最後に目にしたのは私へ向けて手を伸ばすフェルちゃんと、そんな私たちを助けようと必死になっているメイベル様でした。




