洞窟探索 リーシャ1
ブックマーク&感想&評価ありがとうございます!
とても励みになっておりますので、これからも頑張らせていただきます(ง •̀ω•́)ง
「あぃ、たたたた」
魔法陣の光に包まれたあと、グルグル回されて地面に叩きつけられた。
思い切り尻もちをついて、本当に頭にくる!
腰辺りを擦りながら起き上がると、相変わらず真っ暗な洞窟の中のようだ。
満ちる大気は重く、決して気持ちの良い所ではない。
「リーシャか?」
名前を呼ばれて振り向いても何も見えない。
だが、気配と声でそれがディガーだと悟る。
ほかの気配はしない。
「えぇ私よ。他は、いなさそうね」
私は一度目を閉じて魔力を拡げるように意識を集中させる。
が、魔力探知の魔法を展開しても、ぐにゃぐにゃと世界が歪んでいるような感覚になるだけで効果はない。
「ダメね。誰がどこにいるのかも、ここがどうなっているのかも分からないわ」
「お前が分からないのならそりゃぁ厳しいなぁ」
手のひらに魔力を集めれば光が灯る。
それで辺りを見回して、どうやら出口らしきものが2つあるのが見えた。
見るからに罠であるそれを進むしかないらしい。
「どっちだと思う?」
「俺様はこういうのは苦手だ」
「はぁ、役に立たないんだから」
「うるせぇ」
とりあえず両方の穴を確認して、吹いてくる風の強い方に進むことにした。
どうしてこんなことになったのかしら。
ディガーとフェリックスとは腐れ縁で、私が一番最初に族長になった。
幼い頃から魔力操作のずば抜けていた私は族長候補というやつで、煩わしい期待と努力に明け暮れてばかり。
誰も私を追い抜こうなどと思う者はおらず、とんでもなく退屈な道のりだった。
「なぁリーシャ、よく5年も耐えたな」
暗い洞窟を歩き続けていたら、ディガーがそんなことを言い出した。
私たち魔族にとっての5年なんて、瞬きのようなもの。
期待と憧れと信頼しか見せなかった同胞たちの失望と怒りに満ちた瞳はなんとも新鮮で。
「耐えるも何も、私は間違ったことをした覚えはないわ。あの小娘は憎たらしいけれど、あの小娘がやろうとしていることが理解できないほど馬鹿じゃないもの」
最初は殺してでも奪い返してやろうと思った。
エルフの宝なんて私はどうでもいいのだけれど、私のせいで奪われたと責任を押し付けられるのは御免だったからね。
けれど、あの小娘の目を見た時に何故か少しだけ、その怒りが揺らいだのだ。
何処かで見たことがあるような、そんな瞳。
「俺様は馬鹿だから分からねぇが、あの嬢ちゃんが色々背負い込んでるのは見ててわかる。あとは王だな」
「王様の溺愛っぷりは凄いけれど、アンタ恋愛ごととか興味無さそうじゃない」
「違う違う、あぁいや違いはしねぇが…、王は死んでるみたいだったからなぁ。嬢ちゃんが来てから息をするようになった」
暗くて顔は見えないが、口調から恐らく笑っているのだろう。
ディガーは馬鹿だ。
戦略は立てれないし、嫌味を言われても気づいていないし、こんな風に人のことを気にしすぎる。
私とは正反対の人生を歩んできたディガー。
黄金の毛並みを持つワータイガーの中で、白銀の毛並みで生まれた忌み子。
努力の天才、器の大きい人柄、私はそんなディガーが大嫌いだった。
「魔王様が死んでいた、ね…」
淡々と仕事を熟すあの人に私は興味を抱かなかった。
その理由は、ディガーの言うように死んでいるようだったからかもしれない。
あの小娘が現れてからの魔王は確かに生きている。
あの小娘のことになると焦ったり、怒ったり。
「にしても、気味の悪りぃところだなぁ」
私は無言で肯定した。
ゾッとするような魔力が漂っていて、そのせいで歪んでいるような感覚になっている。
この魔力の正体がドラゴンの卵なのなら、世界を破滅させると言われても納得できた。
「さっさと終わらせて、さっさと帰りたいわ」
次の瞬間、カチリと足元で音が鳴った。
ディガーと2人で足元を見る。
魔力節約のためにぼんやりと先が見えるくらいの明るさの光が足元を照らし出した。
底には岩にしか見えない何かがあって、どうやらそれを踏んだらしい。
「何、この音…」
ゴゴゴゴゴ、という地響きが通ってきた道の後ろから迫ってくる。
物凄い勢いで近づいてくるそれが何なのか分かって、私は思わずディガーの服を掴んだ。
「ディガー…」
「走れ!!!」
服を掴んだ私の手首を大きな手のひらに掴み返され、尚且つ全力で走り出した。
私は手の光を強くして先を見やすくする。
地響きはどんどん距離を詰めてきていて、私たちの足では逃げきれない。
「クソがっ!リーシャ、何とかしやがれ!!」
掴まれた腕が再び強く引かれ、ディガーの柔らかな毛並みに包まれる。
何とかって、そんな無茶苦茶な!
ディガーの無茶な要望に、時間が無い中で必死に思考を巡らせる。
「流れに身を任せ、大河の一部と成れ、水蛇流」
詠唱を終えたその時、襲い来る濁流に呑み込まれた。
転送の時とは違う力強い揺れに襲われて、私は必死にディガーにしがみつく。
魔法のおかげで息は苦しくないが、時々流れとは違う衝撃に襲われている気がした。
ディガーに強く抱きしめられていて、周りの状況は真っ暗で何も見えない。
今はひとまずこの流れが収まることを祈るしか…。
「がはっっ!」
一際強い衝撃に襲われた。
ディガーと私は流れのままどこかに叩きつけられたらしい。
ディガーの様子を見たくても、魔族一の腕力を私が振り払える訳もなく。
背中に手を回そうとして、ディガーの背にある場所の向こうに空洞を感じた。
「はぁッ!!」
魔力を手のひらに込めて思い切り放出。
壁が砕けて、水の勢いのまま私たちは落下する。
得意ではない風魔法で必死に自分とディガーを支え、私たちは背中から地面に着地した。
ようやく解放してくれたディガーはぐったりとしていて動かない。
背中には体中のあちこちから血を流して、背中には酷い怪我を負っている。
「どうしよう…」
治癒魔法は得意ではない。
とりあえず背中の傷に当ててみるものの、魔力がとんでもなく削られていくのが分かる。
その割に傷は全然塞がらず効率が悪い。
あの小娘か、もう1人の人間の小娘がいてくれたら。
「なんでこんなになるまで庇ったのよ、馬鹿!」
焦りと怒りで頭に血が昇る。
視界が滲んでいるのは水が目に入ったからだろうか。
そうだと思いたい。
そんなことをぼんやりと考えながら必死に治癒魔法をかけ続ける。
すると、ディガーの指がピクリと反応した。
「ディガー!?」
「…りぃ、しゃ…」
「私じゃアンタの傷を治せない。なんとかして小娘たちを見つけてくるわ!」
意識が戻ったのならひとまず小娘を探す方が早いかもしれない。
立ち上がろうとしたその時、大きなその手に手首を掴まれる。
そうして三度目、力強く引き寄せられた。




