緊急招集
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オルトラの事件は、王国の方では私たち魔族のせいになったらしい。
あの事件から3日、私は気絶したまま暗黒の地へと戻り、目覚めて真っ先にラスティとシルディアにお説教をもらった。
…3時間くらい。
「今日は呼び出してすまないな。突然なんだがお前たち、ドラゴンについてどれだけ知っている?」
昨日の夕方目覚めた私は、3時間の説教の後にオルトラであったこと全てをラスティに話した。
そうしてラスティと相談して決めたのは、ドラゴンの卵を破壊すること。
最初は私とラスティが2人で行こうと言い出したけれど、私はそれを断った。
あの女とガルイムの目的がイマイチ分かってない以上、ラスティは魔王城から遠出はしない方がいいと思ったからだ。
「ドラゴンなんて御伽噺だろ?」
わしゃわしゃと鬣をかくのはディガーだ。
ドラゴンとは山のような体に雲を吹き飛ばすほどの翼を持ち、世界を焼き尽くせるほどの火を口から吐く伝説上の生き物。
私も前世であの女に聞いた時、さすがに信じていなかったことを覚えている。
沢山のことを知っている姫様でも、御伽噺を信じる可愛らしいところもあるんだな、と思っていた。
「魔王様の仰る意図が分かりかねます」
「ドラゴンがどうしたって言うんですか。またそのお偉い魔女様が予言でもなさったと?」
フェリックスは相変わらず硬い。
リーシャも呆れ顔でやれやれと手を上げている。
そしてリーシャの横には、艶のある真っ黒な髪と深紅の瞳を持った絶世の美女が立っていた。
「ふぁ〜あ、まおぅー、私すっごく眠いの。休眠中だったの。そんな御伽噺を…ふぁ〜、するために起こしたんだったら怒るよ?」
大きな欠伸をすれば嫌でも目に入る犬歯。
ラスティにそっくりな顔つきの女性は、どう見てもヴァンパイアだろう。
ラスティ以外を初めて見た。
服装がラフなのは寝ていたかららしい。
胸、見えそう、スゴイ。
「お前たちを呼んだのは正にそれだ。ドラゴンが御伽噺だと思われているのは、この世界の創世の時代にいた神だからだ」
ドラゴンはこの世界を創ったとされ、創世の時代では神様として扱われていたらしい。
しかし争いが増えるにつれて、世界に嘆いて立ち去ったというのだ。
何より驚いたのは、魔王も卵の場所は知らなくても存在は知っていたこと。
「かつて世界を作ったドラゴンは、絶えず争う世界を見て嘆き、卵を産み落として世界を去ったのだ」
3人の顔は未だに不可解そうだ。
長生きする魔族でさえ御伽噺だと思うほど、古い時代に存在していたドラゴン。
それを信じろという方が難しいのかもしれない。
ヴァンパイアの女性は終始眠そう。
「ようやく本題なのだが、俺がお前たちに頼みたいのはドラゴンの卵の破壊だ」
3人がさらに不可解な顔をした。
「世界に嘆いてこの世界を去ったドラゴンが産み落とした卵は、創世とは真逆の破壊の性質を持っている」
「まさか、そのドラゴンが産まれたら世界が滅びるとでも?」
「その通りだ」
リーシャの質問にラスティが頷いた。
破壊の性質を持つドラゴンが産まれてしまえば、きっと私たちには為す術はないだろう。
暗黒の地、シュミール王国だけじゃなく、この世界そのものが死に絶えるしか道はない。
そんなものを呼び起こそうとするなんて、あの人たちは本当にどうかしている。
「そのような危険な卵が何故今まで放置されていたのですか?」
「私がサキュバスたちを連れ帰ろうとした日がありましたよね。その町に卵の在処を示す地図があったんです」
フェリックスの質問に今度は私が答える。
正直地図のことは偶然に近かった。
ガルイムが言わなければ、きっと今でも信じてない。
地図が存在してなければ卵なんて信じられなかった。
「今まで誰もその卵がある場所を知らなかったのだ。だが、卵の在処は分かった。ただし卵がどんな状況にあるかまでは分かっていない。だからお前たちに頼みたい」
3人は黙り込む。
この3人がいるのならとても心強い。
「私はやめておくわ~、ふぁ~~ぁ、眠いしぃ」
「リンディスティ!」
「そんなに大声出さないでよねぇ、私はもう全盛期じゃないの、わかるぅ?ね・む・い・の!」
「だが、お前なら…」
「もぉ、そんなにお嬢ちゃんが心配なら、自分で行けばいいじゃな~い?私を巻き込まないでよねぇ」
そう言ってラスティそっくりのリンディスティさんは大きな欠伸をする。
吸血鬼にとって休眠期というのは大事なものらしい。
強大な力を持てば持つほど体が徐々についていかなくなって、そのうち燃え尽きて死ぬのだ。
だから体を休ませて強くなる力に体を合わせるために、長い長い冬眠のような状態になるらしい。
数百年眠るとか。
「リンディスティ様、魔王様は今、この魔王城から離れる訳には行きません。ディガー、リーシャ、お前たちが行かないのであれば、我々フェンリルが向かおう」
フェリックスが恭しくラスティに頭を下げた。
その様子を見てディガーがため息を吐く。
リーシャも不服そうな顔をして、同じくため息。
ついでに私のことを盗み見て、すぐに目を逸らした。
「分かった。俺も行く」
「私もよ」
「ありがとう3人とも。頼む」
その後、リンディスティさんは大欠伸をしながら何処かへ去っていき、背中越しに大きく手を振っていた。
ラスティは部屋の扉が閉まるまで、なにやら悔しそうにその背を見つめる。
ラスティがそれほどまでに頼りにする彼女を、ほんの少しだけ羨ましいと思った。
きっとすごく強い人なんだろう。
「それで?あなたもどうせくるんでしょう。いつ行くわけ?」
「用意したらすぐにでも行きましょう」
もうあまり時間が無いかもしれない。
私の言葉にリーシャたちは頷いた。
族長として最低限の手回しをして、私たちは極秘に暗黒の地を旅立つ。
あの人たちよりも先に卵を見つけて破壊しなくては。




