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その顔が好きだ

ブックマーク&感想&評価ありがとうございます!

とても励みになっておりますので、これからも頑張らせていただきます(ง •̀ω•́)ง

前世のメリィからそうしていたように、姫に俺の魔力を渡してやる。

ただし、その魔法具にはちょいと仕掛けをさせてもらったけどな?

遠くからメリィと対峙している姫を見つけて、仕掛けを発動する。

思ったより強めの威力が出ていて、少し設定をミスったらしい。


「ま、いいか。アイツなかなかしぶとそうだし」


そんなことよりメリィになんて声をかけようか。

そんな気持ちに胸を躍らせていると、メリィの顔が俺の好みに歪んでいる。

殺意と期待と葛藤の入り交じった顔。

姫や俺を殺したくて仕方ないのだろう。

そりゃそうだよなぁ、だって大好きな兄貴の仇だもんなぁ…?


「その女はまだ利用価値がある。だから殺されると困るなぁ?メリィ」


路地の真横から囁くように伝えた。

だって聞こえるだろう?

俺の声、大嫌いになった相手の声って、聞きたくなくても聞こえちゃうもんだからな。


「っ…」


あぁ!そう、そうだ!それだ!その顔だ!

全てが終わったような絶望的な顔!!

俺が見たくて見たくて仕方の無い、最悪に塗りたくられたような人間の顔だ。

その顔が大好きでたまらない。


「久しぃなメリィ。随分と印象は違うが、元気だったか?」


口角が上がるのが止められない。

こんなニヤケ面で君の前に立ちたくなかったな。

まだ出会っただけなのに、最高の顔をしてるから楽しくて楽しくて仕方がねぇ。

あぁ、もっと壊してやりたい。


「どう、して…」


絞り出したような声でメリィが告げる。

どうして俺がここにいるのか?

どうして俺がお前を知っているのか?

どうして姫を気絶させたのか?

どうしてに繋がる言葉はいくらでもある。

さぁどれが言いたい?


「どうして、貴方が、ここにいるのですか」


「姫に連れられたからさ」


「っ、どうして、姫様を…」


んん?様付け?

そんな相手じゃないはずだぞ。

あぁ、混乱しているのか。


「メリィに危害を加えようとしたからさ、俺たちは仲間だろう?メリィこそどうして魔族のところになんかいるんだ?」


仲間という白々しい言葉を口にした途端、メリィの顔が怯えたように強ばった。

肉親ってそんなに大事なのかね?

あの赤毛の女は今頃好きでもない貴族の元で、媚びへつらって生きている頃だろう。

前世では死ぬほど辛い思いをしてもらったが、今世では興味も湧かなかったから何もしていない。

ただの血の繋がりが、大事に思う理由になる意味が俺には理解できないのだ。


「貴方は、どこまで覚えて…」


「全部だよ?メイベルを殺したことも、ミクと結婚したことも、メリィが魔王と共に世界を巻き戻したことも、ぜーんぶ知っているさ」


メリィの顔に怒りが滲む。

そう、そうやって怒って悲しんで、絶望してくれ。

その顔が良い。

そうやって楽しんでいたら横槍が入る。

勢い良く突っ込んできたワータイガーが、俺の首をかき切ろうと鋭い爪を伸ばしてきたのだ。


「黙れクソ野郎!」


「はぁ、俺とメリィの時間を獣風情が邪魔をするな」


「ディガー!!」


結界でワータイガーの手首を捉え、その顔の前に魔法陣を設置し、爆発させる。

捉えていた手首を残して、風魔法で吹き飛んだワータイガーは建ち並ぶ家々を突き抜けるように破壊しながら吹き飛んで行った。

支えをなくした手首が足元へ音を立てて落ちる。

その光景を見て、メリィの顔色が悪くなってその場にへたり込んだ。


「あぁすまない、彼は君のペットだったのかな?これは悪い事をした。ほら返すよ」


手首を拾い上げて差し出せば、メリィは良い顔でこちらを見上げてくる。

今すぐにでも攫ってベットに押し倒したいところだ。

メリィは体に力が入らないのか、ガタガタと震わせて座り込んだままだ。


「どうしたんだメリィ?血なんて見慣れたものだろう」


前世でも今世でも、戦いの中に身を置いていたのだ。

あぁ分かっているさ、俺のことが怖いことくらい。

でも分からないふりをしていたほうが、何倍も楽しいんだから仕方ないだろう?

もっともっといじめ抜いてやりたい。

そんな風に思っているのに、あぁやっぱりここには邪魔が多すぎる。


「ん、うぅ…」


このタイミングで姫が起きやがった。

間の悪い女め。

周りの状況を見ても時間切れだ。

俺は意識を取り戻しつつある姫を横抱きにして、メリィに振り返る。


「メリィ、どうして魔族側にいるのかは分からないけれど、きっと何か考えがあるんだろう?俺は姫を連れて一旦退くよ」


「なっ…」


「あぁそう、この町に姫が来た目的は魔族の根絶ともう1つ、とある地図を手に入れるためさ」


「地図…?」


「ああ。なんでもこの町にはロベディスト洞窟の裏地図があるらしいんだ」


ロベディスト洞窟は地下50階層まである洞窟だ。

何人もの冒険者が普通に出入りできるような平凡な洞窟なのだが、ミクが言うには裏ルートというものが存在するらしい。

そちらは50階層からさらに下に行け、100階層にはドラゴンの卵があるというのだ。

この話は前世でパーティ全員の前で話していたから、メリィも知っている。


「ロベディスト洞窟、まさか姫はドラゴンを…?」


「そういうことだろうな。聖女のいないこちら側の対抗手段のつもりなんだろうよ」


「ドラゴンを人間が従えるなんて!」


「姫ならやり方を知ってるんじゃないか?この人の不思議な知識はメリィも知るところだろう?」


それが彼女の前世で見た創作物の話なんて、普通は信じられないけどな。

俺も今だって半信半疑だ。

今日の所はここで引き下がって再び出会う方が楽しくなりそうだ、と俺の勘が言っている。


「待って!どうして、記憶があるのですか!?」


俺がいなくなると分かってメリィの瞳に正常な光が戻ってしまった。

もうあの最高の顔は見せてくれない。

そうなってしまうとつまらないなぁ。


「さぁ?それを教えてあげるほど、俺は優しくないよ」


そうやって突き放せば、また暗い顔に戻る。

傷つけられたような顔。

さっきの顔ほどじゃないけれど、それもいい。


「それじゃあな、メリィ。次に会う時を楽しみにしているよ」


それが最後で俺は姫を連れて安全地帯に転移する。

あぁ本当に楽しみで仕方ない。

5年も待ってようやく出会えたんだ。

もっともっと楽しませて貰わなくては!

次こそ、絶望に染まったその顔を堪能してやるんだ。

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