夢か現か
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不図気づけば、私は夢の世界にいた。
真っ暗な場所で、純白のスレンダーラインのドレスを身に纏う私。
真下には濡れている感覚がないのに湖のように反射する自分が見える。
ここが夢じゃなければなんだと言うのだ。
少し戸惑いながらも、私は目線をあげる。
そこにはもう1人の私がいて、暗くて見えないけれど何かに腰掛けて、膝を抱えて蹲っていた。
「私を呼んだのはあなた?」
近づけば首が少しだけ動いて、髪の隙間からこちらを見ているのが分かる。
自分の姿を横から見るのは、なんとも言えない違和感があった。
目の前の私も同じドレスを着ているが、少しだけ私より体が大きい気がする。
「あたしは貴女を呼んでなんかいないわ」
「そう…」
「貴女が勝手に来ただけ」
目の前の私がゆっくりと頭を上げる。
顔をはっきり見てようやく分かった。
目の前の私は22歳の私なのだと。
世界を改変した時の私だ。
「あたしは貴女なんかに会いたくない。何をしに来たの?早くあたしの目の前から消えてよ」
「どうやって来たかも分からないのに…」
「へぇそう。じゃあ質問してもいいかしら?」
そう言って彼女は立ち上がる。
ゆっくりとこちらへ歩み寄ってきて、私は思わず後ずさった。
目の前の自分から、殺気を感じる。
「貴女何がしたいの?」
「え」
「貴女にそんな大層な力なんかない。それは自分が一番分かっているはずでしょう?」
彼女はズンズンと近づいてきて、鼻先が触れ合うような距離まで詰めてきた。
私はもう一歩後ずさろうとして、ガシッと両肩を掴まれてそれは許されない。
夢の中のはずなのに指が食い込む痛みに顔を顰めた。
「お兄ちゃん1人も守れなかった貴女が、魔王?魔族?子どもたち?国民?笑わせないで!守れるわけないじゃない!!」
怒鳴りつける自分に私は身を竦ませる。
これは、ただの夢だ。
「黒い霧で沢山力を使えるようになったじゃない。どうして早く復讐しないの?アイツらを殺さないの?何してるの?何をのんびりとしているの!魔族の未来なんて知ったこっちゃない!シナリオ?そんなものあの女と魔王が勝手に言っているだけじゃない!あたしたちの復讐に何の関係があるのよ?」
「…そ、れは…」
「きっとあの女を殺せばこれ以上被害も出なくなるわ。だからさっさと殺しに行きなさいよ。アイツらはあたしからお兄ちゃんを奪って、馬鹿にして、あんな結末を迎えたんでしょう!!」
矢継ぎ早に責め立てられる私は、少しずつ目の前の私に罪悪感を抱き始める。
胸を締め付ける痛みは、彼女の言っていることは私が思っていることでもあったから。
魔族なんか本当はどうでもいいのかもしれない。
魔王だって討伐される運命なのは変わらないんだから、未来が変わろうと私には関係ないことだ。
だけど、それでも…。
「やっぱりこれは夢ね」
そう言った私の声は震えていた。
グッと唇を噛み締めて、涙が零れないように我慢。
そして目の前の私を睨みつけるように見つめて、私は彼女の腕を振り払う。
「大丈夫、とは言えない。でも、私は復讐を忘れたわけじゃない。絶対に殺してやる」
言いながら拳を握りしめた。
そう、私は決して忘れない。
私が過去へ戻ってきてから5年が経過した。
私の行動の根幹にあるのはその殺意。
「忘れたわけじゃない。でも、出会った人たちを不幸にするのは嫌なの。私はみんなのことも好きだから」
「それが甘いって言っているのよ!!!」
「分かってる!でも、諦めるのは違う。また運命に屈するなんて嫌!」
「お兄ちゃん1人も守れなかったくせに!貴女の手は、貴女が思っているよりもずっとずっと小さい。持て余す量を持って、取りこぼしてちゃ意味が無いわ」
彼女の言い分に私は反論を見い出せない。
分かってる。
お兄ちゃんを救うことと復讐だけに意識を向けた方がいいことくらい。
私の手は確かに小さいけれど、諦めるのは嫌だ。
これは、わがまま。
「ごめんなさい。やっぱりここは夢で、あなたはきっと私の意識が忘れるな、と作り出した幻影ね」
私はぎゅっと、胸の前で手を握る。
忘れた訳じゃない。
今だってちゃんとアイツらを殺してやりたい気持ちはあるのだ。
だけど、確かに5年前よりは落ち着いてしまっているかもしれない。
それは忘れたわけじゃなくて、準備をしようと気持ちを切り替えたからだ。
「あたしを夢だと思いたいならそれでいいわ。あたしはここでずっと見続けているだけ」
「うん、見ていて。必ず復讐は遂げてみせる。そして必ずアイツらに後悔させてやるんだから」
「どこまでも甘すぎる馬鹿ね」
「馬鹿…、うん。そうかもね。それでいいから、それでも私は今の自分の心を貫く」
目の前の私は、私の殺意が生み出した見張り。
私は彼女の視線に恥じないように、怯えないように、満足のいくわがままを貫き通して、必ずハッピーエンドを迎えてやる。
あの女とガルイムを処刑台に送ってやるんだ。
前世での行いを、現世での行いを、必ず後悔させてみせる!
「これだけは覚えてて」
世界の輪郭が歪み始めて、どうやら朝が来たようだ。
目の前の私も、少しずつボケていく。
「貴女も罪を抱えている。それだけは忘れるな」
そうして目が覚めた。
汗をびっしょりとかいていて、寝たはずなのに疲れているような気がする。
最後に言われた言葉を思い出せなくて、思考を巡らせようとした瞬間、私の優秀なメイドたちの手でそれは遮られた。
朝からシャワーを浴びて、改めて殺意を研ぎ澄ます。
決して、忘れたりなんかするものか。




