魔族の学校
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定例会議は悪役として最高のパフォーマンスだった。
結果としては最悪と言っていい会議だったけれど、私はそれなりに満足している。
そんな私は会議が終わったその足で、各種族の子どもたちを隔離している場所へと訪れていた。
「あ、お姉ちゃんだ!」
「こら!メルフィ様だってば」
「めるふぃおねえちゃん!」
大きな中庭に足を踏み入れると、すぐさま小さな子どもたちが駆け寄ってくる。
ケットシーの子どもたちだ。
各種族の子どもたちを集めてから、ここには何度か足を運んでいる。
ここをちゃんとした学校にすることが、私のやりたいことの一つだ。
「みんな元気そうだね。ご飯はちゃんと食べれてる?」
「うん!しゅっごくおいしいのばっかりでね、いっちゅもたべしゅぎちゃうんだよ」
「ねぇお姉ちゃん!また冒険のお話聞かせて!」
あぁ、耳が、ぴょんぴょん動いてて可愛い〜〜。
舌足らずも相まって可愛すぎる。
撫で回したい。
なんて心は微笑みの裏に隠して、その頭を撫でながらその願いを叶えられないことが心苦しくなる。
「ごめんね?今日はちょっと大事なお話があるから、冒険のお話はまた今度聞かせてあげるね」
「大事なお話ですか?」
灰色の猫耳をしているこの少年はルーシェ。
連れてこられたケットシーの中では最年長で、みんなのお兄ちゃんをしてくれている。
最初こそ私のことを「魔女」と罵っていたが、いつの間にか懐かれてしまった。
特に何かをした覚えはない。
「ここに来てもう1ヶ月過ぎたでしょう?そろそろここにいる子たちの進路を決めようと思ってね」
「進路…」
「ルーシェは賢いから、専門科に進んだらその能力をもっと発揮できると思うよ。でも選択は自由だからね」
2人の天使の頭を存分に撫でて堪能して、私はルーシェたちと別れた。
色んな種族の子どもたちを集めたのにはいくつか理由がある。
1つは人質という意味。
魔族の子どもは少ないから、子どもの命は何よりも優先する傾向にある。
それを利用させてもらった。
「こちらにおいででしたか、メルフィ様」
声をかけられて振り向けば、新緑色の髪と瞳のスラリとしたドライアドの女性が立っている。
彼女はディガーと同じで、私が『魔女』を演じていることを知っている人物だ。
「ドラシェン校長…と、グルモフさん」
ドラシェンさんにニコリと微笑まれる。
その後ろからひょっこり現れたのはドワーフの長老、グルモフさんだ。
長く伸ばした真っ白の髭でお腹まで隠れていて、髪の毛ももふもふである。
グルモフさんは御歳178歳で、奥さんが5人、お子さんが18人、お孫さんが66人いるすごい人だ。
そんな年の功のせいなのか、話してもいないのに『魔女』のことはすでにバレてしまっている。
「ふぉっふぉ、元気そうじゃのぉ。ここは活気に溢れていて最高じゃわい」
「お2人ともお世話になっています。ちょうどグルモフさんにお聞きしたいことがあったんですよ」
「例の件なら順調じゃよ。心配せんでいいぞぃ」
こんな風にいつも会話の先回りをされる。
178歳で長老で穏やかな話し方をする人だけど、これでまだまだ現役で働いているらしい。
そもそもドワーフというのは、手先が器用で色んなことができる種族だ。
グルモフさんの息子たちも、道具鍛冶、建築士、探鉱などなど色んなことをやっていて、その全てを総括しているのがグルモフさんである。
普通にすごい。
「それにしても先程の会議じゃぁ、なかなかの悪役っぷりじゃったの!わしゃ興奮したぞい」
「思惑を知っている身としてはむず痒いものもありましたけど。少しエルフが不憫でしたわ」
「リーシャには悪いことをしたと思っています。この学園でも、エルフの子には嫌われていますし。それでも、望んだのは私ですから投げ出したりはしませんよ」
分かっている、と言わんばかりに2人はにこやかに微笑んでくれる。
多くいてはいけない理解者だけれど、こうしていてくれると少しだけ心が軽くなった。
この場所を作った2つ目の目的は、ここを魔族たちの避難所にする為である。
子どもたちを預かる場所で、いざとなればここだけを守れるようにすればいいと思ったのだ。
だから既に魔王や防御能力の高い者たちの手によって、何重にも防壁を張っている。
「ドラシェン校長、今日私が訪れたのは学校の改革を進めようと思いまして。もうみんなある程度生活に慣れてきた頃合ですよね?」
3つ目の目的。
それは種族間の交流を増やすためだ。
前世で魔族側が負けた1番の要因はそれだと思う。
種族同士ならともかく、別種族との繋がりが薄くて団結力がない。
血筋を大事にするのはいいことだが、滅んでしまってはなんの意味もないと思う。
だから今より先の世代では、少しでも交流を広めることが出来たなら…。
「では、皆さんを集めましょうか」
「お願いします」
集められた子どもたちは、種族も年齢も様々だ。
何より知識の差が大きすぎる。
ここを学校にして、交流の場と知識を深める場にしてほしい。
私のような貧しい人間はなかなか難しいことだった。
姫に連れていかれて良かったことの1つ。
「ヒトの娘さんや、お主のやろうとしとることは険しいが偉大だ。ワシは頑張り屋が好きでのぉ、ふぉっふぉ」
グルモフさんは私の手をそっと握ってくれる。
その手は、お世辞にも綺麗とは言えない。
シワの間には油や土のような汚れが付着して、もう二度と取れなさそうだ。
ゴツゴツとたくさんのマメがあって、爪も折れたり怪我をしたりで不揃い。
それでも温かくて大きな手。
「グルモフさんも十分頑張り屋さんですよ」
「そう言われると嬉しいのぉ。人はなぁ、重すぎる荷物は誰かと共有しても良いんじゃよ、むしろせんといかん。その相手が魔王様ならば百人力じゃろうがな、ふぉっふぉっふぉ!」
楽しげに笑うグルモフさんと共に、私は子どもたちが集められた講堂へと向かった。




