定例会議
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それから1週間経って、今日は定例会議の日。
私も魔王に『魔女』として呼ばれた。
魔族たちの前に初めて『魔女』として立つ日である。
四天王の3人には先に話を通したとはいえ、荒れる予感しかしない。
まぁ、その反発を含めて始めた『魔女』だけどね。
「皆、今日はよく来た。まずいつもの報告会をする前に、先に俺から話そう」
大小様々、形容も様々な者たちの集い。
ここまで集まると壮観という言葉が良く似合う。
ながーくて大きなテーブルの上座に座る魔王。
そのすぐ近くに私は座り、正面にフェリックス、横にディガー、斜め向かいにリーシャが座っている。
「宴の時にもこの人間のことは目にしたと思う。今回はまず彼女を紹介しよう」
漆黒のドレスを身を包み、エルフの宝を身につけている。
目元は黒いレースで隠しているから、私の表情そのものはあまり見えない。
口元にだけ意識を向けさせるのは、彼らが魔族だから。
「紹介にあずかりました、メルフィと申します。以後お見知り置きを」
ニコリと立ち上がって愛想を振りまく。
四天王の実力者たちを上座に近い席に座って、奥に行くにつれて序列が下がっているようだ。
私6人分くらいだろうか?
巨人と思われる種族や、巨人より少し小さいオーガが などもいる。
巨人は人間と同じ皮膚の色に対して、オーガは赤黒い肌をしていた。
「皆に周知してもらいたいのが、俺が不在の際の『代理指揮権』をメルフィに渡す」
ザワっと会場が揺れるようなどよめきが起きた。
魔族の指揮権を何処の馬の骨かも分からない人間に渡すなんて、普通ありえない。
会議の席に着席している者は、皆その種族の代表である。
この会場に足を踏み入れていいのは、代表と側近1人だけ。
皆、自分の腹心や仲のいい種族同士で、次々に焦りや怒りを口にしている。
「何故、我々が人間如きに従わなければならぬのですか!」
机を叩いて大声を上げたのはケンタウロスの代表。
元々ワータイガーと仲が悪く、私が彼らの土地に城を建設した時から度々領土問題を勃発している種族。
魔族至上主義なのは分かっていた。
「俺が決めたことだ」
「納得出来ない!」
冷静な魔王の言葉に、再び拳を叩きつけて抗議。
リーシャの時のように戦って納得させていいのならそうするのだけど、今回は任せろと言われている。
今日の私はここで余裕そうに微笑むのが仕事だ。
そうだそうだ、とケンタウロスの影に隠れて嫌悪感を示す魔族たちの中、静かに手が上がる。
「なんだ?リーテリア」
「はい、魔王様。僭越ながら、御三方は納得されているのですか?」
それは大きな壺に入った美しい女性。
話す声も惚れ惚れする美しさで、さすがマーメイド。
私は無意識にイヤリングに触れた。
エルフの宝の一つ、銀鹿の角には魔除の効果がある。
これが無ければ女の私であっても、マーメイドたちの声に乗る魔力に魅了されていたところだ。
「人間如きに負けたワータイガーは置いといて、エルフもフェンリルも納得してやがるのかよ?」
2人へ注目が集まる。
フェリックスは堂々と腕を組んで目を閉じ、リーシャは俯いて下唇を噛んでいた。
今だけは本当にリーシャに申し訳ないと思う。
けど、それを態度に出してはいけない。
先に口を開いたのはフェリックス。
「俺は魔王様を信じている。貴様らにとやかく言われる筋合いはない」
翡翠の瞳が鋭く全員を睨みつける。
ただ見ただけなのに、何種族かはそれで怯んでしまったようで口ごもった。
けれどどこにでも意地悪な人はいるわけで。
「あーそういや、エルフは宝を奪われたんだっけ?」
ニヤリと笑うのはハーピーの代表。
お行儀悪く足を組んで、自慢の翼で口元を隠してほくそ笑んでいる。
紫の髪に蛇のような鋭い目付き。
意地の悪そうな女性だ。
「あんたたちには関係ないでしょ!」
「えぇえぇ、関係ないわ!とってもね!だから面白いんじゃない!キャハハハ」
ギリッとリーシャが拳を握りしめた。
私はチラリと魔王を見る。
魔王は無表情で事の成り行きを見ているようだ。
「自分たちの宝すら守れない族長なんて、一族にとって迷惑でしかないわねー!キャッハハハ!」
ハーピーは高笑いしながら、リーシャを見下す。
周りの他の種族も鼻で笑うものや声は出さずとも、馬鹿にした笑いをしている者が多い。
そんな空気だったからだろうか。
「魔王よ、我々は人間などには従えない。アンタその人間と関わってから、ちょっと頭おかしくなったんじゃねぇーか?」
それは明らかな失言だ。
次の瞬間、机の上に唐突に人影が現れる。
その人から発する殺気で全員が息を呑んだ。
「ファティ。辞めろ」
「……」
魔王の一言にケンタウロスを斬り殺しそうなその人は、再び消えるようにその場からいなくなる。
そこで初めて壁際に置いてある銅像の裏に、違和感があることに気づいた。
よく見れば他にもあと2つ、おかしな影がある。
いつから居たんだろうか。
「王として俺を認めないのは構わないが、勝手な行動は許さん。最近は人間側にも怪しい動きが見てとれる。今後人間との揉め事は俺が直接罰を下しに行く」
再び会場がざわつく。
ぼそぼそと聞こえるノイズの中に「あの女が魔王様を操っているのでは?」と言っているのが聞こえた。
ここに居る魔族の誰よりも強い魔王が、人間如きに簡単に操られるわけが無い。
もし私が魔王を操れるほどの力があれば、こんなまどろっこしいことはしないだろう。
「エルフも堕ちたわね。あぁいや、リーシャがダメダメなのねきっと!キャハハハ」
「ワータイガーもあんな人間の小娘にやられるとは、魔族の恥さらしだ」
「魔王様も何故さっさと人間を滅ぼしに行かんのか」
リーシャの身体が震えている。
言い返せない悔しさなのか、怒りなのか。
ディガーは気にした様子もなく大きな欠伸。
フェリックスは目を閉じたままだ。
エルフをこんな風にするのは私の目的じゃない。
この飾りたちは、今後に必要だったからもらっただけ。
「ねぇー魔王様?」
つい、我慢できなくなってしまった。
魔王は無表情のまま視線だけをこちらに向ける。
「私、もっとたくさん色んなものが見てみたいんです。先程皆さんが自分こそは自分たちの誇る宝を守れるとおっしゃっていたように聞こえて、私それらもたーくさん見たいです!」
エルフの宝を守れなかったリーシャを馬鹿にするのなら、自分たちが持っている宝や誇りをあなたたちは守れるのかな?
奪うつもりは無い。
私が用があるのはエルフの宝だけだもの。
リーシャは私の強さを身をもって知って、仲間の命と宝を守り抜くことを天秤にかけて宝を手放した。
私はそれを知っている。
「見るだけなら減るものでもありませんし、皆さんも構わないでしょう?」
全員が青ざめ、一瞬だけ世界が凍ったように静まり返った。
そして、次に来るのは全員からの非難轟々。
あぁうんうん、ちょっと気持ちいい。
これくらい悪役でいないと、私以外の人に的がいってしまうみたいだ。
それは私も魔王も望んでいないこと。
「黙れ!!!」
魔王が今日初めて大きな声を出した。
ビリビリと空気が振動するような声。
マーメイドたちとは違う魔力の乗せ方。
おかげで世界は静まり返る。
「メルフィの言葉は私の次に絶対だ。そして、止める理由も見当たらないことから、全種族早急に一族の誇る1番の宝を献上しろ」
そうして初めての定例会議は幕を下ろした。
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