魔女と鳥
母娘の話
小さなケンカの行方
昔、魔女と呼ばれる少女がいた
彼女の力は想っただけで全ての万物の姿を変えてしまうものだった。
最初に変えたのは飼っていた小鳥だった。
幼い頃から共にいた小鳥より、犬が欲しいと母に告げたのだ。
けれど母は小鳥がいるのだから、と決して飼い与えはしなかった。
母と娘の小さな言い争い。それで済むはずだった。
あるとき、少女は小鳥に向かって怒鳴ったのだ。
お前なんかいらない、犬がよかったと。
そうしているうちに少女は鳥籠のそばで泣き疲れて寝てしまった。
母もそんな少女の姿を一時のわがままのうちと、
泣き疲れ寝ている少女を優しく抱き抱えベットへと寝かしたのだ。
次の朝、母はいつものように娘を起こすため彼女の部屋へ向かうと、
部屋からは笑い声が聞こえた。
昨日と打って変わり楽しそうに笑っている娘の声をきいて、安心して部屋に入りおはようと声をかけたその時だった。
少女の足元をぴょんぴょんと跳ねながら駆けている子犬がいたのだ。
そして彼女はその子犬を飼っている小鳥の名で呼んだのだ。
どうして、と驚いている母が次に気づいたのは鳥籠だった。
そっと近づき見ていると、鳥籠の戸が開いていたのだ。
それはまるでただの飾りだったかのようにそこにあった。
それまで鳥籠にあったはずの餌入れや飲水、小鳥が留まれるようにといれていた木の枝もすべて無かったのだ。
代わりに鳥籠の下には犬用の餌入れや飲水が置かれていた。
あ、と背後で少女が明るい声で言った。
これも変えなきゃと。
ベットから降り、トコトコと鳥籠に近づき触れると淡い光を放ちゆっくりとその姿を変え小さな犬小屋に変わったのだ。
母は驚きを隠すこともできず、
昨晩まで天使のようだと愛でていたはずの娘に恐怖を覚えた。
その日を境に、母は幼い少女を家に残し失踪したのだ。
なぜ失踪したのか、この時の少女にはまだわかるはずもなかった。
続きは想像してみてください