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気持ち悪すぎる手紙束

「私も見た。ちなみにおとといは一階だった」

「昨日は二階だったね。中身見ないでそっちに回したけど」

 LINE通知の音がする。ソウイチはスマホを見た。

「五階はまだらしいな」

「もう普通に参加しろよ五階役員! ホント怖いわ!」

 まるで姿もなくそこに参加しているような。なんとも器用な人物である。

「四階もさっき見てきたがまだだった。だな?」

 聞かれて、テツヤは戸惑った。今日来たばかりで何も知らないし、

「いや……そもそもなんなんですかポストて」

「階段の踊り場にあったろう。見なかったのか」

テツヤはエレベーターしか使っていなかったから、階段の踊り場までには目をやっていなかった。もっとも、階段を使っていたとしても、気がつかなかっただろうが。

「その階の奴が自治会にお悩み相談するためのポストさ」

 ヤヨイはソウイチの出した書類束をがさがさとあさりながらテツヤに説明した。

「へえ、こりゃずいぶんと多いね……いつもの十倍以上はある」

 あまりにも数が多い。今日一日でこれだけ入ったとするなら、相当問題だらけのマンションなはずだ。テツヤはすこし、気持ちが悪くなった。

「普通にお悩み相談なんですかコレ……」

「いろいろー」

「話し相手がほしいとか、なにかゆずりますとか」

 ミナとルミも、テツヤに説明してくれた。

「だが今回はちょっと趣が違うようだ」

 ソウイチだけが、うすら笑いを浮かべながら、書類束をすこし持ち上げた。

 趣が違う? どういうことだろう? テツヤの考えが伝わったのか、ソウイチは続けた。

「全部同じだ。外身も中身もな」

「全部同じね……――なんて書いてあったのさ?」

 ソウイチはまた妙な微笑みを浮かべる。

「――『探しものは、なんですか』――」

 それでテツヤ以外の三人は納得したらしかった。事情の呑み込めていないテツヤを置き去りにして、ヤヨイとミナとルミは、ソウイチをじっと見つめた。

「…………見つけにくいものだろうねえ」

「見つかると思うか?」

「そうだねェ。見つかるといいね」

 ねー、と、ミナとルミも追随した。

 ソウイチまでもがテツヤをじっと見つめて、ほんとうに訳がわからなくなったテツヤはうろたえた。

「……え? んな、何……」

「おそらく手紙は増える。総会の回数を増やそう、明日も同じ時間に集合だ。いいな?」

 総会の回数を増やす、と言ったソウイチの提案に、まずミナとルミが楽しそうに「はーい」と手を挙げた。

「えっ、」

 ヤヨイも木刀を担ぎなおして「おう」とドヤ顔をする。総会が――彼女にとっては集会なのだろうが――楽しくて仕方ない、という風であった。

「えー……!?」

「お試しとはいえ入居早々こんなに忙しくなるというのは自治会役員としてはイイことだぞはっはっは。だからあきらめて頑張れ」

「あきらめて!? いまあきらめてって言ったか!?」

 先程までの眼光鋭き総長の顔からはうって変わって、なんともフレンドリーな様子でヤヨイがテツヤの肩をたたく。

「ま、頑張んな、兄ちゃん……テツヤだっけ? せっかくこのマンションの、しかも角部屋に住んだんだ。なんか見つけないと、つまんないよ?」

「え? ……それって……どういう……?」

 テツヤが聞こうとした瞬間、ソウイチがデスクの上のファイルをぱたんと閉じた。

「はい本日は解散! 三階役員は早く寝ろ、明日も学校だろう?」

「はーい。おやすみなさい」

「おやすみなさーい」

 ミナとルミはぺこりと頭を下げると、手を振りながら出て行った。

 それを見送ったヤヨイも、ひとつあくびをすると

「んじゃ、あたしも帰るわ。おやすみ」

 と言って、また窓を開けて出て行った。

「お疲れ」

「普通に玄関から出てけよ!」

「ほっとけ。窓から出入りするのが好きなんだ。――さて、お前はどうする」

「どうするって?」

「引っ越してきたばかりで布団がないだろう。うちに泊まっていくか?」

「遠慮します」

「何もしないから。子守歌なら歌ってやるから」

「いやいやいやいや布団はもうある!! 失礼します!」

 テツヤは逃げるように出ていった。実際布団は持ってきたのだから最初からそう言えばよかったのだが、コアラのように足を絡めてきて「子守歌なら歌ってやる」と言ってきたソウイチがなんとも不気味に思えた。

「客用の布団はいつでもあるから遠慮することはないんだがなあ。はっはっは、こりゃ一週間面白いぞ」

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