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平和すぎる幕引き

 翌日の総会はまさにドンチャン騒ぎといってもよかった。

 大量に調達された菓子と酒とジュースと寿司とか揚げ物とかとにかく所狭しと宴会料理が並べられ、いつの間にか混ざっていたヤヨイのチームメンバーがいい気分で芸をやったり、ミナとルミも歌を歌ったり、とにかく総会というよりは完全に宴会だった。

 お開きになったころは、夜もとっぷりと更けていた。

「やれやれ意外に早くつぶれたな四階役員は。それに比べて二階役員の強いこと強いこと……」

 ソウイチが寿司桶を積み上げながらぼやいた。玄関のわきにはごみ袋がトーテムポールのように積み上がっている。

 ヤヨイがチームメンバーに命じて、ソウイチの部屋を完全に掃除して帰ってもらったのはよかったが、今度のゴミ出しはステーションが大変なことになるだろうから、何日かに分けて出したほうがよさそうだった。

 ソウイチは気配を感じて、その名を呼んだ。

「――――レイ」

 ぼう、と、光が集まって、レイが出てきた。

「よかったね。テツヤさん」

「あの様子じゃお試しどころかずっと住み続けるだろう。結局、めでたく見つけたようだしな」

「そうだね」

 ソウイチは椅子に座った。

「感謝する」

めったに口にしない言葉だった。レイも不思議そうに首をかしげる。

「どうして?」

「いつも――お前が見つけてきてくれるじゃないか、探しもののある奴を」

「でも、その先は、そのひと次第だもの。わたしにはそれ以上、何もできない」

「わかっている。……お前は、どうなんだ」

「うん?」

「見つけているか。探しものを」

「大丈夫。だからここにいるよ」

「――そうだな。お前にとっては、このマンションの住人たちが、探しものか」

「うん」

 レイはそう言ってにっこり笑った。

 ソウイチはふわっと、不安に駆られて、身構える。

「……今度こそ、しばらく、眠るのか?」

やはりソウイチといえども、トラブルに巻き込まれるのは相当に疲れるのだ。そういう意味では、タフなヤヨイがソウイチはとてもうらやましかった。

 だがレイは首を横に振った。

「ううん。また、探すの」

「どうして?」

 眠る暇などないということか? なぜ? ソウイチが聞くと、レイは、自分の懐から、茶封筒をふたつみっつ取り出した。

「だって、見つけなきゃ。二階の五号室。ね」

「ああ、ゴミの……」

「元のひと、戻ってくるかも、しれないけれど」

「そのときは三号室のオバチャンが話し相手になるだろう」

 レイはそれを聞いて微笑んだ。それならきっと探すまでもないかもしれないね、と言ってから、彼女はまた光に包まれ始めた。

「行ってきます。見つけに」

 ソウイチも柔らかな笑顔になりながら、レイを見送る。

「待っている。役員総出でな。忘れるな、お前も役員だ」

「ありがとう」

 ふわーっと光が大きくなった。レイの姿は消えたが、トラブルの電話は、それからしばらく待っても、かかってこなかった。



 それからテツヤはお試しをやめて正式に四階角部屋の住人になった。彼女は安定期に入ってから帰国する予定だそうで、彼は熱帯魚とカブトムシに餌をやりながら、彼女の帰りを待っている。

 ヤヨイは相変わらず毎晩集会に出てはポエムを読んで眠るようだし、ミナとルミは母親のお手伝いをしながら学校にもちゃんと通っているとのことだった。

 アキラは最近高卒資格や就職情報の検索を始めたらしい。ときどきくるLINEでの報告に、ソウイチはうれしくなった。

「さて、と」

 今日は二組ほど賃貸相談に来る予約が入っている。ソウイチはファイルを手に取ると、資料を並べて支度をはじめた。

「2LDK四万五千円のお部屋。いま空いているのは二階です。自治会費が高いんでね、このお値段ですが。ペットもOK、規則は比較的ゆるめです。え? 住民との付き合い? ああ、その心配はありません。――きっと、お気に入りますよ、お客様」



 ――了――

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