2-16話 彼の残した異物
重大なミスが発覚し、修正をしていたため投稿が大幅に遅れました。
天井から吊るされたレイノルズ。その姿を前にして、俺は得体の知れない恐怖を感じた。それは恐らく反射的に脳裏に最悪の事態が想起されたからであろう。
目隠しが施され、猿ぐつわを噛まされたその顔から流れる透明な液体が、その想像に確かな説得力を生じさせていたのかもしれない。
「レイノルズ!」
俺は我を忘れ、宙吊りになったレイノルズへと一目散に駆け寄りその猿ぐつわと目隠しを取り払う。
「おい、大丈夫か!?」
必死に身体を揺すり頬を叩く。
頼む、生きていてくれ!
「だああああああぁ!!遅いよ君達、危うく死ぬかと思ったじゃないか!?」
一心不乱に身体を揺さぶり続けると、奴はそう叫びながら意識を取り戻した。
「よかった……、生きていた」
安堵の余り、思わず涙ぐむアリシア。
俺も彼女と同じ様に、
そんな様子に思わず涙ぐむアリシアだったが、次のレイノルズのセリフで真顔になる。
「とりあえずこの屈辱的な戒めを説いてくれ」
「屈辱的な戒め?」
暗くてよく分からなかったが、目を凝らすとヤツは半裸だった。
それも亀甲縛りで吊るされていた。
アリシアが真顔になるのもうなずける酷さだった。
ここだけの話。一瞬拷問の果に死んだのかと思っただけに、俺は脱力していた。
そして、あんまりな展開に声を揃えて同じ言葉を発していた
「「これはひどい……」」
「薄情だな、ライラは。親友が誘拐されたというのに」
「お前が阿呆だから誘拐されたんだろ?そのまま死ねばよかったのに」
なんか腹が立つ。コイツのために俺らは走り回っていたのだと思うと、妙に腹が立つ。
「ソレに関しては言いたいことがあるが、まずはこれを解いてくれ。股間に食い込んで痛い」
「しばらくそうして反省してろ」
宙にぶら下げられたまま大暴れするレイノルズ。ウネウネとするな、気持ち悪い。
だから俺はやつに背中を向け、部屋の中にソフィアが残した資料らしきものがないかと探す。
「ちょっとライラ、ソレはあまりにもレイノルズ君が可愛そうなんじゃない?」
「ああ、アリシア嬢!貴女はなんて優しい女性なんだ!その優しさは博愛の巫女を思わせ、その麗しき艶髪は――」
「やっぱりやめたわ」
「あ、待って!ちょっと、外して」
慈悲を見せたかと思った瞬間、再び真顔に戻るアリシア。
そんな彼女に対し、レイノルズは懇願するような声を発していた。もしかしてコイツそういう趣味があるんじゃないか?と思う。
そんなしょうもないやり取りをBGMに隠し部屋の机の引き出しを開いていると、一番下の段から旅行かばんが出てきた。ホコリが被っていない女性もの。
明らかに怪しい。
「おい。夫婦漫才してないでこっち来てくれ」
「誰が夫婦よ!」
ぎーっと叫んだアリシアだが、俺が手にしているモノを見るなり、慌てて真剣な表情を作り駆け寄ってくる。……コイツ、意外と茶化されるの苦手か?
「これだろうな」
「拘束される前、貴重な品って言っていたから多分ソレだ」
拘束されたレイノルズも首を伸ばしながら同意する。
俺は杖を引き抜き、鍵を吹き飛ばしカバンを急いで開ける。
「これは!」
カバンを開くと、女性モノの下着や札束に混じって出てきたのは黒塗りのプラスチック筐体だった。
「……こうきたか」
その物体を見て俺は、苦々しい顔を浮かべざるを得ない。
藤木田が残した記録。ソレは電子媒体だった。
俺はダメ元でパソコンを開き、電源を居れ立ち上げると、ヒューンという軽快なファンの音共にパソコンは立ち上がる。
「ライラ。それは一体何なの?」
「ノートパソコン、俺らの世界の魔法の塊の様な物体さ」
OSのロゴが表示され、砂時計がくるくると回り起動する。
東京の夜景の画面が映し出され、ログイン画面が表示される。
そんな画面を見てアリシアがぼやく。
「きれいね……この世のものとは思えない」
「世界にはもっと凄いところもある」
思いつくパスワードを叩くが駄目だった。
ヴォンという無情な音共にログインエラーを吐くだけだった。
「やっぱりか」
「どうしたの?」
「暗号が掛けられている」
そう答えるとアリシアはため息をついた。
「暗号を解読するしかないってわけね」
「あるいはハッキングだ。無理やりこじ開けるしかない」
ビンテージな旅行かばんの中に収まる異物感あふれるノートパソコン。
淡い朝日に照らされた、その黒い筐体を見て俺らはため息を付くばかりだった。




