少年たちのように-9
「あるわけないじゃない」涼子
「そうね。じゃあ、アタシと付き合わない。ってゆうか、ちょっと、手伝って欲しいのよ」ユキ
「なに?」涼子
「あのさ、…変に思わないでね。今日、ちょっと、夜、会う約束の人がいるんだ」ユキ
「カレシ?」涼子
「そんなじゃないわよ。ただのオヤジ。それで、適当なとこで落ち合って欲しいのよ」ユキ
「なに、ソレ?」涼子
「だからぁ、アタシ、約束してて、七時に会うんだけど、その後、八時くらいでいいから、どこかで待っててほしいのよ」ユキ
「それって、エンコー?」涼子
「まさか。ただ、話し相手になって欲しいって言われて、それで、会ってやるだけなんだよ。だけど、夜遅くなったら、ヘンじゃない?それでアンタと偶然会ったことにして、フケちゃおうっと思ってるの」ユキ
「ユキ、こないだからしてるそのネックレス、それって、そいつにもらったの?」涼子
「…ん、まぁね」ユキ
「エンコーじゃない、やっぱ」涼子
「違うよ。アタシから何か欲しいなんて言ってないのよ。それで、勝手にくれたの」ユキ
「でも」涼子
「いつもは、イズミに頼んでるんだけど、今日は来れなかったでしょ。シカトしてもいいんだけどぉ、それも悪いかナって。あと、頼めるのは、リョーコだけだし、ね、頼まれて」ユキ
涼子はふうっと息を吐きながら、外を眺めた。人の流れはやまない。
「だめ?」ユキ
「ちょっと、アタシは、そんなのはできない」涼子
「いいのよ。どこかに立っててくれたら。そしたら、相手そこへ連れて行って、偶然会ったみたいな顔して、一緒に帰るだけ。それだけなんだから。うまくいったら、リョーコもなんか奢ってもらえるわよ」ユキ
「いい。遠慮する」涼子
涼子は荷物をまとめて席を立った。後ろからユキの呼ぶ声が聞こえた。しかし、涼子は店を出て人の流れに身を任せた。