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不器用な僕の異世界の助け方  作者: アツシルック
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黒戸 白と最後の審判

骨川邸襲撃から数日、黒戸 白は色々な事で悩み、苦しみ、最終的に東桜台高校を退学しようとさえ思っていた。


その理由は、僕に関わった周りの親しき人達が次々と傷ついていくのをの当たりにし、辛く、悲しい思いをさせ、本来彼女達が得ていたであろう幸せを僕が踏み滲んでいたんじゃないかと思ったからだ。


子供の頃は僕自身が傷つき、苦しむ分には僕が我慢してれば良いと思っていた、そしてそんな思いは周りの親しき人達が次々傷ついていくのを感じていくうちに負の感情として僕をむしばみ、僕自身がいる事が元凶であると思うようになり、僕がいなければ周りのみんなはもっと幸せに生きていけてたんじゃないかと考えるようになったのだ。


そう……こんな僕は誰とも関わってはいけなかった……


でもそれは違っていた、僕がみんなの前から姿を消そうとした時、彼女達は僕の考えに怒り、悲しみ、こんな僕に対してて僕がとんだ思い違いなしてる事を教えてくれた。


今思えば彼女達はどんな傷ついても、どんな辛い事があっても僕を責めたりしようとはしなかった……


(いや待てよ……紅だけは最初の頃、僕を責めていたな……)


訂正……今思えば、紅以外の彼女達は、どんなに傷ついても、どんなに辛い事がらあっても僕を責めたり、非難したりしなかった、逆に感謝をしてくれていた。


僕が今もまだこうして東桜台高校に通っていられるのは、そんな彼女達のおかげであり、僕が又この高校に通う理由を僕にくれた。



〜最高裁判所〜


そして僕はなぜか今は骨川 糞夫に対しての過剰防衛の件で罪に問われ、骨川 糞夫と舎弟達の全身の骨を複雑骨折させたとして、警察に逮捕され、ほぼ人生を積み状態である。

骨川 糞夫には糞夫の母で悪徳弁護士で名高い、骨川 巻糞子が弁護士につき、僕には告訴状が届き、僕は加害者として法廷に立たされる事になった。


突然被害者面した骨川親子はありもしない証言や証拠を次々と出し、弁護士を雇う金もない僕は何も反論すら出来ず、言われたままに罪を背負わされるほかなかった……そんな裁判の最終日、法廷に一人の女性が現れた。


「やぁ白ちゃん、遅くなってごめんね……今日から私が弁護についてあげるからもう安心して良いわよ!」

颯爽さっそうと現れた彼女は僕の側に来るとギューと僕を抱きしめて、胸の谷間に僕の顔を押し当てる。


「こ、琥珀こはくさん……帰ってたの? 」

僕は目を丸くして驚く。


それもそのはずだ、黒戸( くろと)琥珀こはくは僕の実の姉で、6つ上の22歳、紅の薄紫にとは違い、濃い紫のロングヘアーで、豊満な胸に締まった腰回り、身長も170センチ半ばとモデル顔負けのスタイルを誇る。生まれた頃から超天才で、僕が生まれた頃にはすでに世界の大学を転々とし、僕も実際に会うのは久しぶりで、毎年写真を送ってくるので容姿は知ってはいたが、実際に会うと凄く良い匂いがして、見た目もエレガントで妖艶な雰囲気を出しとても緊張する、紅と本当に姉妹なのか疑うレベルだ。

琥珀姉さんは今は国際弁護士をしていて、世界中を飛び回っているとは聞いてはいたが、日本に帰国してる事は全く知らなかった。


「な〜に、琥珀さんって他人行儀な言い方して……なんか淋しいな〜お姉ちゃんって呼んでよ白ちゃん、お姉ちゃんはずーと白ちゃんに会えなくて淋しかったよ……本当はもっと早く来て、裁判初日から弁護してあげたかったんだけど、どうしても手の離せない裁判が入っていてね、ゴメンネ白ちゃん……」

琥珀はチョロっと唇から下を出して軽薄な感じで謝る。


「別に謝る事はないけど、もう判決はほぼ有罪で確定してる様なものだから、今更琥珀さんが来てもさ、ただ琥珀さんのキャリアに傷をつけるだけだから……」

僕はうつむきながら拳を握り、悔しそうに琥珀さんに伝えた。


「ふ〜ん……なんか白ちゃん変わったね、昔はもっと物事に無関心で、あまり感情を表に出す様な事なかったのに……う〜ん、だったらさ勝負しようか?私が白ちゃんを無罪にしてあげたら、私の事を『琥珀さん』じゃなくて『琥珀お姉ちゃん』って甘えて呼んでよ……良い?」

琥珀さんはなんだか物静かに僕を見つめた後、何か良い事を思いついたかの様な顔をして、楽しそうに僕にある勝負を持ち掛けてきた。


「べ、別にどうでもいいよ勝負なんて、ただ99%有罪の裁判に琥珀さんを巻き込みたくないんだよ、もうこれ以上大切な人を僕に関わった事で悲しい思いをさせたくないんだよ、だからもうこれ以上僕に関わらないで……」

僕は琥珀さんに背を向けて、琥珀さんにこれ以上関わらないでいてほしい事を伝えた。


「うふふ、大切な人だなんて言われたら余計にこの案件からは手を引けないわね……それにどこから導き出した確率か知らないけど、99%の有罪ね〜、だったら私が1%の無罪に持っていけばいいって事よね、楽しみ! 白ちゃんがなんと言おうと私は白ちゃんの弁護を受けるわよ、当然白ちゃんには私との勝負を受けてもらうわ……さっきどうでもいいって言ってたし、それって言い換えれば受けるって事で良いのよね? 男の子には二言はないわよ!」

琥珀さんは頬を赤らめて、なんだか嬉しそうに僕に言葉を畳み掛ける。


「別に勝負しなくても、『お姉ちゃん』って言ってほしいなら普通に言ってあげるよ、だからそんな下らない勝負事はやめようよ」

こんな下らない勝負ごとの為に琥珀さんを巻き込むわけにはいかないと思った僕は、手を引いてもらうための提案を持ち掛けた。

「あら本当に? なら言ってみてよ」

琥珀さんは僕をジー…と疑いの見つめ、本当かしらと言いたげな顔で僕を挑発する。


「えっ!?……あっ、うん……い、言うさ、言えばいいんだろう……こ、こ、琥珀お姉ちゃん……」

僕は少し恥ずかしそうに、数回しか会ったこともない実の姉だから、なんだか少しそんな呼び方に緊張と照れを感じながら言った。


「……あれ? 違うわよ、私さっき言ったわよね、甘えながら呼んでって、それじゃただ照れてるだけじゃない」

琥珀さんはなんだか意地悪そうな笑顔で、僕に近づき、両手で僕の頭を抑え、琥珀さんは自分の胸の谷間に僕の顔を押し込み妖艶な顔色で。


「私が出した甘えながら呼ぶってのは、この体勢で私の事を『お姉ちゃん』って呼ぶ事よ」

「……」

僕の顔は琥珀さんの胸の谷間にはさまり、僕は恥ずかしくて何も答えることが出来ず、されるがまま突然の事で硬直していた。


カン! カン! カン!


その時である法廷に甲高い木槌が打ち下ろされる音が響き渡る。


鳴り響く方に目をやると、今回最終日の裁判を裁く、銀髪の綺麗な輝きを見せる髪に、左目に黒い眼帯をした、年は二十代半ばであろう、中谷なかたに 銀子ぎんこ裁判長がイライラしながら木槌を何度も叩き、こちらを睨みながら。


「琥珀弁護士、ここは法廷の場であり被告とイチャイチャする場ではありませんので、あまり白様……いえ、白被告にちょっかい出すのはやめて頂きたい……これ以上私の前で白被告に如何わしい行為をするようなら法廷侮辱罪で叩き出しますよ」

中谷裁判長は琥珀さんを睨むと、唇を噛み締め注意する。


「白様……?」

骨川 巻糞子は中谷裁判長のちょっとした言葉に首を傾げる。


「ではこれより、『骨川 糞夫に対する、白様の暴行傷害事件』に対する裁判をおこないたいと思います!」


中谷裁判長は開廷の挨拶をすると、本法廷にいた傍聴者ぼうちょうしゃの人々は席を立ち上がり大きな拍手で裁判の開始を歓迎した。


その時になり僕は初めて気づいた、今日来ている傍聴者が全員女性で埋め尽くされ、年齢層も若い事を。


「フッフッ、面白いわね白ちゃん……普通の一般人の裁判なんてこんなに傍聴人は集まらないわよ。 私が聞いた話じゃ、外は傍聴席を巡って凄い行列が出来て、整理券が配られたらしいわ、凄い人気ね」

琥珀さんは面白い可笑しそうに微笑み僕に話す。


「骨川 糞夫はあんな性格の奴だけどルックスが某男性アイドルグループ以上のイケメンだから、女子には人気なんだろうね……だから今日の裁判はある意味僕のアウェーなんだよ、厳しい戦いになるよ琥珀さん……」

僕は本法廷の傍聴者の人気を僕なりに説明し、だからこそ厳しい戦いになる事を琥珀さんに辛いながらも話した。


「……プッ、う、うん、そうね白ちゃんとても厳しい戦いになるわね……でも安心して、お姉ちゃんは白ちゃんの為に頑張るから、厳しい……厳しい戦いになると思うけど、一緒に頑張ろうね!」

琥珀さんは体を震わせながら口に手を当て何かを我慢するように言葉を詰まらせながら、僕をギュッと抱きしめながら励ましてくれた。


「おい、コラァ! さっき言ったよな琥珀……馴れ馴れしく白様……失礼、白被告に近づくんじゃねーと……あんまり調子こいてると本気ほんきで退廷させんぞ」

中谷裁判長は凄いドスの効いた低い声で琥珀さんに怒鳴りつけ睨みつける。


僕はそんな怒鳴られている琥珀さんが可哀想になり、心象が悪くなるが、目の前で怒っている中谷裁判長に恐る恐る手を挙げ発言する。


「す、すいません、中谷裁判長……こ、琥珀さんは悪気があってやってるわけではないので、許しては下さいませんか……僕が全て悪いのですから……ごめんなさい」

このままだとまずいと僕が間に入り、琥珀さんの代わりに中谷裁判長に頭を下げ、許してもらおうとすると。


「えっ、あっ……わ、私は別に白様……白被告に言ったわけではないので、そんな頭下げられても……その琥珀が少し悪ふざけが過ぎるものですから……私も怒鳴りつけて……こちらこそ申し訳ありません白様……いや、白被告……」

中谷裁判長は琥珀さんに対し怒鳴ったのに僕が急に謝った事で慌て、少し困った顔をしながらも、自身が怒鳴った行為を謝り、少し気まずそうな顔をしていた。

(中谷裁判長は口は悪いけど、根はとてもいい人なんだなぁ)


「あれどうしたの、銀子裁判長? なんか、しおらしくなっちゃって……それにしても、白ちゃんが可哀想だよ、突然年上の女性に怒鳴られて、こんなガミガミ怒られちゃ、白ちゃんも嫌いになっちゃうよね」

琥珀さんは気まずそうにもじもじしている中谷裁判長をここぞとばかりにいじり、聞こえるように馬鹿にすると。


「そんな事ないよ、そもそも真面目な裁判中に不真面目な態度とってる琥珀さんが悪いんだよ……中谷裁判長は真面目に真剣にこの裁判を裁こうと思ってくれてるからつい怒鳴ってしまったんじゃないか、尊敬はすれど、嫌いになるわけないだろ、琥珀さんも少しは反省して、中谷裁判長を見習いなよね」

僕は中谷裁判長の肩を持ち、琥珀さんに注意をした。


「し、白様……嫌いじゃない……要するに好きって事ですね……わ、私も白様大好きです……だから頑張って本裁判取り仕切らせて頂きます!」

中谷裁判長はとても嬉しそうな笑顔を浮かべながら、頬を赤くして、裁判長席でブツブツと独り言を言いながら気合を入れていた。


傍聴席からは『いいなぁ〜』『裁判長だけズルイ』『私も言われたい』とブツブツとつぶやき声が響き、法廷内に大きなブーイングの嵐が中谷裁判長に向けられるた。


カン! カン! カン!

と中谷裁判長は木槌のを叩き。


「静粛に、静粛に……ここは神聖な裁判を執り行う場、皆様は公正な立場でこの場を見守り、この裁判を最後まで黙って見届け頂きたい、ですから少し黙っていろ……」

中谷裁判長は周りを見渡し、静かにするよう促すと、傍聴者の方々に丁寧に説明しつつ、目は傍聴者を睨みつけ、最後に余計な一言を言い放った。


『黙っていろ』と言う言葉に敏感に反応した傍聴者は更にブーイングを拡大し、傍聴者と裁判長の一触即発の雰囲気の様相をていしていた。


そんな重苦しい空気の中、空気を読む事が出来ないのか、一人の女性が声を上げた。


「ちょっとあんた達いい加減にしなさい、ここは法廷であり、私達被害者である、骨川 糞夫ちゃんの裁判なのよ! さっさと審議を始めてそこの黒戸 白って野蛮な被告の罪を問いなさいよ」

骨川 巻糞子弁護士が剣幕を上げてキンキンと怒鳴り出した。


その言葉に傍聴者、裁判長は黙り込み、二つの勢力は巻糞子弁護士を注視した。


「野蛮な被告……OK、OK、良いでしょう分かりました……それでわ気を取直して裁判を始めたいと思います……原告の主張をお願いします」

さっきまであんなに騒がしかった傍聴者と裁判長は気持ち悪いくらい静まり返り、中谷裁判長は淡々と裁判を始める。


「それでわ原告の主張を始めさせてもらいます。 先程東桜台高校におきまして、普通に登校し、教室にいた骨川 糞夫ちゃんは突然そこの黒戸 白被告の暴行に合い、全身複雑骨折と言う重体を負わされました、よって原告としては、黒戸 白被告に対し死刑、又は無期懲役を要求したいと思います」

巻糞子弁護士は淡々と今回の裁判の主張を語った。


「あー却下…… 死刑? 無期懲役? おい! ババア、調子こいてると◯すぞコラァ! そもそも白様……白被告が先に手を出した証拠があんのか、あん? テメーの屑息子が先にどうせ手を出したんだろうが、舐めてんのか裁判を」

巻糞子の主張に対し、裁判長としてかなりの不公平かつ、不適切な発言を繰り返す中谷裁判長。


「な、な、なんんですって…… ふざけてんのはどっちよ! 裁判長ならもっと、もっと公平な立場で裁判を裁きなさい!」

巻糞子は中谷裁判長に指を指して怒鳴りつける。


「まぁとりあえず、白様……白被告からは何か反論はありますか?」

中谷裁判長は取り敢えず裁判長の職務として原告の発言を受け入れ、僕に対して優しい口調で、見守るように尋ねた。


「ぼ、僕からは特に……」

僕からは何も言う事がない事を言おうとした時。


「異議あり! 中谷裁判長、白ちゃんの弁護士として私から一言言わせてもらってよろしいでしょうか?」

琥珀さんが僕の言葉を遮るように異議を申し立て、少し弁護士ぽい行動をした。


「え〜……お前が喋るのかよ、私と白様……白被告のやり取りを邪魔しないでくれる……はぁ〜」

露骨に嫌な顔をする中谷裁判長、どっと疲れたようにため息をつく。


「先程そこの糞夫さんの弁護士の巻糞子弁護人が『突然そこの黒戸 白被告の暴行に合い』と証言していましたが、私の調査した話では、教室に入ってきた白ちゃんを骨川 糞夫さんが後ろから突然ハサミで刺したと、それも殺意を持ってと聞いています……よって巻糞子弁護人の証言は真っ赤な嘘の虚偽罪に当たると思います」

琥珀は真面目な顔つきで、嘘偽りのない綺麗な眼差しを中谷裁判長に向け、真剣な口調で僕の弁護を口にした。


僕はそんな琥珀さんを横から見つめ。

(うわぁ〜、あんな真剣な顔で、真面目に嘘をベラベラと述べてるよ……確かに向こうの証言も嘘だけど、こっちもこっちで嘘なんだよな〜)


「し、失礼な! 嘘ですって、これは私に対しての名誉棄損よ、うちの糞夫ちゃんが刺したって証拠があるのかしら? こっちにはあの当時、糞夫ちゃんのお友達も、教室のクラスメートの証言もあるのよ」

巻糞子弁護士は青筋を浮かせて、琥珀さんを睨みつけ怒鳴りつけた。


「あら、そちらのその証人って方々は本当にいるのかさえ疑わしいですけどね、だって先程から嘘ばかり話してますし……私の方は私の証言が正しいと証明できる証拠を山ほど持ってきてますが?」

琥珀さんは手を口に当て、口をニヤケさせながら、疑いの目で巻糞子を見つめる。


「そう言うと思ったわクックックッ……墓穴を掘ったわね琥珀弁護士……証人なら連れてきているわ! さぁ入ってきて君達、思う存分コイツらの悪事をブチまけてちょうだい」

巻糞子が法廷の骨川陣営のドアの方を指差すと、そこから松葉杖に身体中をギブスで固定された少年達が、現れるなり直ぐに僕を指差すと大きな声で、怯えるように叫んだ。


「コ、コイツが……黒戸 白が突然僕たちに襲いかかってきて、何もしていない僕たちの骨を一本一本粉々に砕き、殺そうとしてきたんです……さ、裁判長! どうか……どうかコイツに重い罪を……死刑の判決をお願いします」

少年たちの一人が涙ながらに訴えると、他のメンバーも顔をうつむかせお互い顔を見合わせて嘘泣きを始め、なにか口元をニヤニヤとした態度で僕を非難した。


中谷裁判長はそんな彼らを見てイラつきながら。

「チッ! 本当に糞みたいな連中だな……」と周りに聞こえるような呟きで舌打ちをし、琥珀さんに反論はあるか尋ねようと被告人席の方に目をやろうとした時である。


突然法廷の照明が消され、室内が暗くなり、白い壁の所に映写機のような、プロジェクターのような物で映像が映し出された。


映像には、先程証人として証言した少年達が写し出され、骨川 糞夫の姿は写っていないが、糞夫の声で。


『おい! お前らボーッと見てないで、この野郎をボコボコにしろや!」』

骨川 糞夫が少年達に指示を出す声。


『えっ!? あ、あぁ・・・・・・コラァ! 黒戸、調子こいてんじゃねーぞ』

その指示に骨川グループの一人が動き出し、他の数十人の連中もそれに続いて黒戸 白に襲い掛かる映像が続き。


素手で殴っている者、鉄パイプを振りかざしている者、スタンガンを持ってる者が無抵抗の黒戸 白を襲い、黒戸 白に対し頭部目掛けて鉄パイプを振りかざしたり、横から拳を殴りつけ、さらにスタンガンを打ち、黒戸 白はその場に倒れ、倒れた所を骨川グループは集団でリンチ、集団暴力を行い、黒戸 白が倒れた床には、ハサミが刺された傷口と鉄パイプで殴られた時に頭部が開いた傷で大量の血の池が出来ている、そんな衝撃的な映像が流れていた。


『クックックッ、オラ! どうしたさっきまでの威勢はよ黒戸、骨川さんに逆らったらどうなるか分かったか』

そんな非人道的な行為の後、骨川グループの一人が黒戸 白を蹴りながら吠える映像が続くと、法廷中から嗚咽や悲鳴が上がり。


『いい様だぜ黒戸、これで済んだと思うなよ、これからはお前の守ろうとしてる物全て壊してやるからな』

骨川 糞夫の姿はないが、本人の声で高笑いしている所で映像は終わった。


法廷にあかりが戻ると。


「でっ……先程そこにいる少年達はこう言われてましたよね『黒戸 白が突然僕たちに襲いかかってきて、何もしていない僕たちの骨を一本一本粉々に砕き、殺そうとしてきたんです』って……巻糞子弁護士、ご説明お願いします」

琥珀さん自身で出した映像にも関わらず、その映像を見て琥珀さんはイライラしているのか、指の爪を噛みながら、気持ちを落ち着かせて冷静に原告に話を振った。


しかし巻糞子が説明をする前に、少年達の真横を木槌のハンマーが物凄い勢いで投げ捨てられ、壁に突き刺さる。


「おい! 糞ガキども法廷を、裁判を舐めてんのかアン?……その上、白様に……白様に対して何してくれてんだあん、コラァ!」

裁判長席の机に片足を乗せて、綺麗な銀髪をなびかせて、黒い眼帯をした中谷 銀子裁判長が怒りの形相で原告席を睨みつけ、ドスの効いた啖呵で怒鳴り、全身ギブスだらけの少年は体をガタガタ震わせて怯えてしまっていた。


「ま、待って……この子達がやった事はうちの糞夫ちゃんとは一切関係ないわ、その声だって糞夫ちゃん本人の映像も写ってないし、声が糞夫ちゃんとは限らないわ」

巻糞子はあっさり自分が連れてきた証人を切り捨て、苦しい言い訳を続けた。


「関係ないだぁ? おいババアふざけんなよ、その糞夫の手下も一緒になって白様一人を痛めつけていたんだろうが……」

中谷裁判長の怒りは収まらず、もともと公私混同が激しい裁判長がさらに私的な方向へと進んだ。


「そもそも結論を見てください、そんな途中経過の映像見せられても、現にうちの可愛い糞夫ちゃんは全身複雑骨折の重体になっているのよ!」

巻糞子はなんとか立て直そうと必死に弁解をした。


「見苦しい……でわ私の方からも証言してくれる証人でも呼びましょうか? そちらも糞みたいな証人出した事ですし、あの時実際何が起こっていたのか実際見ていた方に聞いてみましょう……良いわよ入って来てお嬢さん」

琥珀さんは屑を見る目で巻糞子と原告の連中を見下しながら言い、一人の証人を招き入れた。


被告側のドアが開くと、黒髪ロングの目のつり上がった綺麗な女性が緊張しながら入って来た。


「あ、青木あおき 稲穂いなほ……東桜台高校一年生、く、黒戸 白君とは同じ同級生で同じクラスでもあります」

入って来たのは同じクラスの、当時骨川 糞夫とつるんでいた、骨川ガールズのリーダー的存在だった青木 稲穂さんだった。


「ど、どうしてこんな所にいるのさ青木さん……」

僕は目を見開き彼女を見つめた。


「か、勘違いしないでよね! べ、別に黒戸君の為に来たんじゃないんだから、わ、私はただ真実を伝えに来たの……黒戸君が心配だからとかそんなんじゃないんだから、そんなんじゃないんだから……」

青木さんは顔を真っ赤にして僕に何度も忠告するように念押しをしてきた。


「はいはい、ツンデレはいいからさっさと証言して」

中谷裁判長は何だか複雑な表情を浮かべながら青木さんを見て、深いため息をついて証言を促した。


「あの日、朝のホームルームが始まる前の登校時間帯、私や骨川達はすでに教室にいました、そこへ黒戸君や美希、礼子、咲らが登校して来ると、黒戸君が教室に入るなり突然…………うっ……うぅ……ご、ごめんなさい……」

証言を始めた青木さんは話してしばらくして急に言葉につまり、口に手を当て涙ぐみ、震えながら話が止まる。


「お、おい……だ、大丈夫か?……辛いなら別に無理に証言しなくてもいいんだぞ……」

中谷裁判長は急に涙ぐみ、震え出した青木さんを心配するように見つめ、優しく証言台に立つ青木さんをなだめた。


「も、申し訳ありません……あまりにあの時の出来事がショックで……思い出すだけで怖く、辛く、恐ろしかったもので……心配して頂きありがとうございます……大丈夫です、わ、私には本当に有った真実を伝えなければいけない使命があるので、あの時、教室に入ってきた黒戸君に対し、骨川 糞夫が後ろからハサミを突き刺し……黒戸君の事を……黒戸くんの事をこ、こ、殺そうとしたんです!」

青木さんは糞夫を指差しながら大きな声で叫んだ。


法廷中がビクッと驚いた反応をし、傍聴席がザワつきだし、傍聴人の目は一斉に骨川 糞夫に注がれた。


「ふ、ふざけんな! 青木、テメー裏切るのかコラァ、俺はコイツの事なんか刺してねーぞ……証拠はあるのか証拠は!」

流石の言いがかりに糞夫は黙ってはおれずに叫び出す。


(確かに先に手を出してきたのは骨川だけど、ハサミが刺さったのは偶然の事故だったし……)

僕は青木さんの証言を聞き、今回の裁判はどうなってるんだ、今までと基本的に空気感や雰囲気がまるで違う事を感じ、そんな青木さんの証言を聞きながら僕の隣を見れば琥珀さんは口に手を当てて終始クスクス笑いを堪えいた。


バン! バン! バン!

ざわつく法廷の中、大きく机を手で叩く音が響きわたる。


「はいはい、少し静かにしてね。 青木さん? 法廷での発言は虚偽は許さない許されないわ、もし虚偽なら貴方も罪に問われるけれど、今の証言は撤回しないでいいかしら?」

青木さんは真剣な眼差しで中谷裁判長の目を見つめ。


「はい! 私は一切の嘘偽りのない証言をしたつもりです」

青木さんは自信満々に嘘をつく。


「あ、青木さん……ちょっとマズイよ……」

僕はこのままだと青木さんまで巻き込んでしまうと思い声をかけようとすると。


「中谷裁判長、私の方からも良いでしょうか?」

琥珀さんが突然手を挙げ発言をする許可を求めた。


「なんです」

「私の方からも青木さんの証言に付け加えたい事がありまして、先程そこの屑……失礼、そこの糞夫さんが証拠をとおっしゃっていたので証拠を出したいと思うのですが」

琥珀さんは骨川の原告側を馬鹿にするように見ると、一つの鞄を取り出し、透明な袋に入ったハサミを取り出した。


「こちらのハサミは事件当日に白ちゃんに刺さっていたハサミで、事件の時に落ちていた物を警視庁公安特殊能力対策課の火野 京子刑事が証拠品として回収した物です」

琥珀さんは白い手袋をしてその透明なハサミの入った袋を持ち上げながら、法廷の中央に歩み寄ると、法廷の皆に見えるように掲げた。


「警視庁が没収し、当然鑑識に出し調べた所……もうお分かりでしょう糞夫さん? このハサミからは草夫さんの指紋とDNAが検出されています」


「ふ、ふざけんな糞ババア、指紋ついてんのは当たり前だろうが、そのハサミは俺のなんだか……」

琥珀さんの発言に頭にきた糞夫は、琥珀さんに暴言を吐きながら叫ぶと琥珀さんがすぐに糞夫の元に詰め寄り、糞夫と鼻と鼻が付くくらいの距離で周りに聞こえない声で何かを喋っていた。


「おい糞ガキ、誰がババアだって、調子に乗るなよテメー! こっちは白ちゃんの前だから優しい対応してやってんだ、自称被害者なら被害者らしく大人しくしてろや……あと勘違いしてる様だから言っておくが、これは白ちゃんの罪を問う裁判なんかじゃねーからな。、これは骨川 糞夫、お前を地獄の底まで落とす為の余興なんだよ、分かったら黙ってピエロはピエロらしく自分の役割をまっとうしろや」

琥珀はさっきの穏やかな笑顔とは変わり、冷徹な恐ろしい形相で糞夫を睨みつけ忠告した。


「お、脅しかコラァ……そんな証拠納得出来るかよ! この前までの裁判じゃ俺らが有利だったんだ、もう黒戸のヤローの有罪は確定なんだよ、ざまぁねーなババア」

糞夫は琥珀の脅しにもくっしず、反論する。


「クックック、分かってねーな屑が、さっき言ったろうが、これは裁判なんかじゃなく、言うなれば公開処刑場なんだよ、お前如きが生意気に白ちゃん対し告訴? ふざけんじゃねーぞ! その上死刑か無期懲役だと、笑わせんじゃねーぞ、お前はその怪我で生きてんじゃねーんだぞ、生かされてるんだって事を肝に命じて置け、そしてお前が誰を敵に回し、誰に対してタブーを犯したか、しっかりと味わい後悔する事だ……まぁ光栄に思え、お前如きが白ちゃんの為に見せしめとして役に立つのだからな!」

その時の黒戸 琥珀の目は、骨川 糞夫が今まで生きた中で見た事もない冷徹で残酷で、人一人を何も感じず◯す事をいとわないそんな恐怖を感じる悪魔の目をし、琥珀さんに何を言われたのか、糞夫は顔を青ざめ汗を滝のように流し体を震わせ、琥珀さんは糞夫から顔を話すと一変して楽しそうにこちらに振り向き。


「でわ中谷裁判長判決をお願いします」

琥珀さんは笑顔のまま裁判長の顔を見ずにそう告げる。


「ケッ、いけ好かない野郎だ……弁護士風情がこの裁判長様に指図してんじゃねーぞ」

そう言って琥珀に文句を言うと、中谷弁護士はとてもいい加減で、適当な感じに、皆がサラッと流してしまう感じの言い方で。


「んじゃお前、限りなく死刑に近い無期懲役な……じゃあ、これにて閉廷とします」

サラッと骨川 糞夫に指をさして判決を言い渡し、中谷 銀行裁判長は法廷を後に退廷しようとした時だ。


「ふぇっ!?……ふ、ふざけんな! な、なんで告訴した、原告の被害者の俺が刑を言い渡されなきゃいけないんだ、納得できるか!」

判決を言い渡された糞夫は当然荒れ狂い、叫び散らし、松葉杖を使い裁判長に襲いかかる。


糞夫が松葉杖を大きく振りかぶり、中谷裁判長の後頭部めがけて振り下ろす。


「えっ!?」

糞夫の行動に反応が遅れた中谷裁判長は避けることも出来ずにいると、その瞬間、バキッと共に松葉杖が折れる大きな音が法廷に響き渡った。


「うっ……だ、大丈夫ですか……」

僕は中谷裁判長を庇う形で彼女を壁に押し倒して、糞夫が振り下ろした松葉杖は僕の後頭部に思いっきり叩きつけられた。


「し、白様……」

「よ、良かった……無事で……」

後頭部に強打した事で、前に鉄パイプでついた傷口ご再び開き、僕の後頭部からは大量の血が吹き出した。


「し、白様ぁぁぁ!!」

中谷裁判長は真っ赤に血で染まる僕の顔を見るや、大きな声で叫び僕を抱えるように抱きついた。


しかし僕は後頭部に強打を受けた事で力が抜け、中谷裁判長を押し倒す様な形で床に倒れ込む。


それを見た骨川 糞夫は嬉しそうな顔で、標的を僕に変え、もう一本の松葉杖を僕目掛けて振り下ろし滅多打ちにしてきた。


「テ、テメーさえいなければよ……ヒッヒッヒッ」

糞夫は松葉杖を器用に振り回し、僕に対し何度も振り下ろして殴打する。


僕は滅多打ちにされながらも、中谷裁判長には当たらない様に僕は庇い、徐々に体の力が抜けていく。


「本当にムカつく野郎だ! キモオタのくせに、この俺ざ様に恥をかかせやがって……もう裁判なんか関係ねえ、黒戸! テメーを殺せればそれで充分だ……ヒッヒッヒッ」

中谷裁判長を庇いながらうずくまる僕を見下しながら糞夫は僕に唾を吐き出し、懐から黒い筒状の容器を取り出し、蓋を開ける。


その筒状の物からは黒き薄気味悪い煙が放出される。


「な、なんだアレは……」

僕はその黒い煙から放たれる強大な力に危険を感じ、精一杯の声でこの法廷にいる人達に向け避難を呼びかける。


だがそんな僕の声が聞こえてるのか聞こえてないのか、誰一人としてこの場を動かず皆がその黒い煙に注目していた。


「な、何してるんだみんな……ここは危険だ、早く逃げて下さい!」

僕は再び法廷にいる人達に叫ぶ、すると僕に押し倒されるように覆いかぶさっている中谷裁判長が僕に話しかける。


「白様無駄ですよ、この場に白様を見捨てて逃げる者など一人もおりません、その上そんな怪我をしているのに……むしろ白様がお逃げください」

そう言って覆いかぶさる僕の頬に手をやり。


「私などの為にこんな怪我をさせてしまい……申し訳ありません」

中谷裁判長は哀しい瞳で僕を心配し、その場から立ち上がると、僕を守るように背を向けて中谷裁判長は黒い煙に対峙する、そして僕の方に振り向くと僕の目を見つめながら笑顔で僕に言う。


「私が少しでも時間を稼ぎます、ですから白様はお逃げ下さい」


「な、何言ってるんですか……僕が招いてしまったトラブルです……もうこれ以上僕のせいで他の人の関係ない人たちを巻き込みたくないです、だから中谷裁判長こそ先に避難を……」

僕は中谷裁判長を見つめ返すと、僕の側に来た琥珀さんが僕の肩に手をやり。


「白ちゃん、こんな奴らだけど関係ないなんて言ったら可哀想だよ……この子達は私もそうだけど白ちゃんが私達を大切に思うように、私達だって白ちゃんを大切に思っているんだから……これ以上白ちゃんが怪我をしていくのを見過ごして逃げ出すなんて私達には出来ないわ……」


「琥珀姉さん……」


「んっ……んっ……白ちゃんいまなんて言った? 「姉さん」って言ってくれた? 惜しいけど嬉しい♡」

琥珀さんは僕の一言に敏感に反応し、僕の顔を胸に押し当てて、とても嬉しそうな笑顔で抱きしめて。


「今度はちゃんと「お姉ちゃん」って呼んでね!」

と注文をつけて僕から離れると、中谷裁判長の様に僕を守る様に黒い影かに対峙する。


「あんたね今の状況分かってる、真面目な話してると思ったらすぐこれだ……だから私はあんたが嫌いなんだ」

中谷裁判長は黒い煙から目を離さず隣に立つ琥珀さんに注意をした。


「ヒッヒッヒっ、お前達はこれでお終いだ! せいぜい苦しみながら死ぬんだな」

黒い煙の後ろで骨川 糞夫は大声で高笑いをしながら叫び、母親である骨川 巻糞子を連れてこの法廷から逃げようとしていた。


「あいつら…… 逃がさないわ!」

中谷裁判長が骨川親子を追いかけようと黒い煙の近くを通ろうとした時だ。


黒い煙から三本の鋭い爪が中谷裁判長目掛けて襲いかかかる。


「えっ!?」


「危ない!」

危険を感じ直ぐに反応した僕は、その三本の鋭い爪が中谷裁判長を襲う前に、中谷裁判長に飛びつき、抱きつく形で庇ったため三本の鋭い爪は僕の背中を深く切り裂いた。


「ぐはっ!」


「白様!?」

僕はまた中谷裁判長を押し倒す形で倒れる、流石に今の攻撃はダメージが大きかった、すぐさま動く事が出来ずに倒れ込む。


すると黒い煙が徐々に晴れ、その煙の中にいた物が姿を現わす。


爬虫類のような頭部、3メートルはあるだろう硬い皮膚に覆われていそうな身体、しなやかな長い鞭のような尻尾、手足は鋭い爪が伸び、まさしくそれは架空の怪物でよく聞くドラゴンそのものだった。


「な、なんだ……な、なんでこんな生き物が……ココにいては危険だ! 中谷裁判長、怪我はなかったでしたか? ココは皆んなを連れて逃げて下さい」


すると中谷裁判長は顔を横にふり、僕の目を見つめ、頬をさすりながら悲しい顔を向ける。


「こんな時でも自分の事ではなく私なんかを……皆んなを心配してくださるのですね……ご、ごめんなさい、白様……何度も……何度も助けて頂き……」

押し倒されている状態から身体を起こし、僕の背中の傷を見るや口に手を当て涙ぐみ。


「僕は大丈夫ですから、早く逃げ……」

そう言いかけた時、中谷裁判長は僕の口を塞ぐ様に手を当て。


「こんな怪我を負っている白様を置いて逃げるなど私……いや、私達白愛会のメンバーには誰もおりませんよ……この状況、私達に何が出来るか分かりませんが、この身を捧げても白様だけでも守り抜いてみせますから……」


「白愛会……? 何を言ってるんです、僕は……僕は大丈夫ですから、僕の事はほっといて逃げて……」

すると僕の元に青木さんが駆けつけ。


「黒戸君、何言っても無駄よ、いまここにいる人たちは貴方が傷ついた事、大切な人を守る事で頭が一杯なの……」

青木さんは僕の背中の傷に触らないよう気をつけながら僕を肩でおぶり、青木さんもまた物凄い恐怖で身体を震わせて、足をガクガクしながらも、僕を安全な所へと運ぼうと、精一杯の力で少しづつ運ひながらさとす。


ドラゴンの様な怪物から少し離れた場所に着くと。


「今応急処置するからちょっと待っ……」

青木さんがそう言う終わる前に僕は青木さんの手を掴み。


「ううん、大丈夫……大丈夫だから。 ココまで運んでくれて本当にありがとう……でも、ゴメン……僕は行くよ彼女達の所へ、僕を守ろうとしてくれる皆んなの気持ちはとても嬉しい……でも僕だって同じ気持ちさなんだ、いま僕が行かなきゃ皆んなを……青木さんを守る事なんか出来ないから」

そう言うと、僕は頭や背中から血を垂らしながら立ち上がり怪物と対峙している中谷裁判長」琥珀さんの元へと歩みを進める。


「えっ……べ、別に黒戸君に守られたいなんか思ってないんだから……む、むしろ私が守ってあげたいって言うか……って、違う違う、ちょっと待ってよ黒戸くん、いくらあなたでもそんな大きな怪我した状態じゃ……」

青木さんは僕を引き留めようとするが。


「ありがとう心配してくれて、でも僕はいくよ、必ず皆んなを、青木さんを守るから」


「……」


そう言うと青木さんは顔を真っ赤にして黙り込んでしまった。


(あ〜怒らせちゃったかな……)




中谷裁判長はドラゴンと対峙し、恐怖と怒りで拳を震わせながら叫ぶ。


「よくも白様を傷つけたわね……この代償は高くつくわよ!」

中谷裁判長は言葉が分からないであろう怪物に向かって言うと、琥珀さんの所に歩み寄る。


「あんたに……琥珀に頼るのはしゃくだけど力を貸しなさい……あなたの「予知能力」であいつの攻撃を教えて」

中谷裁判長は琥珀さんの顔も見ず、ドラゴンに対峙しながら尋ねる。


「私があいつの攻撃を予知して教えたところで銀子に勝算があるの? 銀子の「鈍重どんじゅうの目」を使ってあいつの動きを遅くした所で、その後の攻撃が通用しなかったら意味ないわ……」

琥珀さんは真剣な目で中谷裁判長の後ろ姿に語りかける。


「グタグタ言ってないでやりなさい! やらなきゃ始まらないし、終わるのよ……わ、私は白様の為に、白様を助ける為にやるの……いい? いくわよ!」

中谷裁判長は琥珀さんに激を飛ばすように叫び、眼帯を掴み外し、ドラゴンに突撃した。


「上にジャンプ!」

琥珀さんが後ろから叫ぶ。


するとドラゴンの素早く鋭い爪の攻撃が中谷裁判長を横薙ぎに襲いかかるが、『鈍重の目』の効果で、すでに中谷裁判長はジャンプして避ける。


「左に避けて」

琥珀さんは直ぐに次の指示を中谷裁判長に叫ぶ。


ドラゴンは右手を頭上から地面に叩きつけるように振り下ろす、しかしこれも中谷裁判長はすでに琥珀さんの声で見切り避ける。


そんな攻防の繰り返しに、中谷裁判長は何かを狙うかのように何度もドラゴンの同じ箇所にパンチやキックを繰り返す、しかしその硬い皮膚には効かないのか、中谷裁判長の拳が逆にどんどん傷つき、血が滲み出していた。


「次の攻撃は?……琥珀? 琥珀!」

中谷裁判長が琥珀さんに叫ぶ……が、琥珀さんからは返事が帰ってこない。


「ご、ごめん銀子、これ以上は……」

琥珀さんは頭を抑え倒れこむ。


「こ、琥珀さん!……」

僕は傷を負い倒れながらも体を引きずり琥珀さんに近づく。


「こ、琥珀……」

呆然とする中谷裁判長。


するとドラゴンは目の前の中谷裁判長を無視して、気絶する琥珀さんに近づき、三本の鋭い爪を使い琥珀さんを摘むように持ち上げる。


「琥珀さん!!」

僕は這いつくばりながら叫ぶ。


ドラゴンは大きな口を広げると、琥珀さんを頭上へと持ち上げ、掴んでいた手を離し、琥珀さんはドラゴンの口へと落とされ吸い込まれた。


「いやぁぁぁぁーー!!」

ドラゴンの口の中へと入っていく光景を目の当たりにした中谷裁判長は絶望した恐怖の叫びでその場に座り込み、ぶつけようのない怒りを地面に叩きつけた。


その光景はとても衝撃的で、法廷は一瞬、時が止まったかの様な静寂「せいじゃく)に包まれた。


するとしばらくして、法廷出入口から何か車輪の様な音が近づくのが聞こえ。


「何やってんのよ、揃いもそろって、だらしないわね、白くんに笑われるわよ!」


絶望するみんなに激を飛ばすように法廷の出入り口から聞き覚えのある声が飛んできた。












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