1.予知
どこか浮ついたような、派手な繁華街。闇に覆われた世界でありながら、ここウィレイドの街はそんな事すら忘れさせてくれる。悪くないな、と恭一は独りごちた。ザイノーアからの一時の安息を許されるのだから――
だが、現実とは甘くないのだ。そんな街にも、恨みを抱くようにザイノーアが現れてしまった。恭一は武器を取り出し、怪物に直進する。
「離れろ! やつに近づくと殺されるぞ!」
逃げ惑う人々に指示を飛ばしながら、恭一はザイノーアに渾身の一撃を与える。雷鳴が轟き、ザイノーアが倒れる重々しい音が響いた。次々に斬撃を繰り出し、ザイノーアを浄化させる。とらわれていた光のカケラが宙を舞い、恭一の手に収まった。
ふと、強力な邪気を感じ、恭一は弾かれたように顔を上げた。まだ、いたのだ。憎しみに飢えたようなザイノーアが。新たに現れた怪物に向かって走り出す。が、奴が標的にしているものに気付いた時、恭一は凍りついた。
「しまった!!」
ザイノーアが狙っていたのは、逃げ遅れた幼い男の子だった。とてもじゃないが間に合わない――そう直感した時、恭一の体は考えるよりも先に動いていた。怪物と男の子の間に自分の体を滑り込ませ、抱きかかえる。そのせいで、ザイノーアの攻撃をまともに受ける格好になってしまった。勢いに吹き飛ばされながらも、恭一は男の子に怪我をさせまいと無理に受け身の姿勢を取る。今度は自分が地面に叩きつけられるような状態。
「お兄ちゃん、大丈夫?」
男の子が心配そうに尋ねる。恭一は無理にでも笑顔を作り、起き上がってみせた。
「お兄ちゃんは大丈夫だよ。さあ、ここから離れるんだ。お兄ちゃんはあの怪物を倒さないといけないんだから…」
男の子を送り出すと、彼は他の人が逃げた方へ走っていった。この言葉がどんなに強がりであったか、恭一は自分でもよく分かっていた。立ち上がろうとした時、右足に力が入らず、よたついてしまった。それでも何とか体勢を立て直す。…くそ、右足を持っていかれたか…。どうする? 勝算はあるのか? 左足だけで立ち上がりながら、恭一は考えていた。だが、そうこうしてる間を、相手が待ってくれるはずもない。怪物の鋭い一撃が、自分に向かってくる……
カバッとニコは飛び起きた。民宿の窓から朝日が注ぎ、薄暗い部屋を照らしている。
「夢……か?」
ニコは布団の中で呆然と考えた。いつの間にか息は上がり、汗がじっとりと全身を湿らせている。……馬鹿馬鹿しい。何で俺があんな奴の夢を見なければならないんだ。俺には、もう関係ないことなのに――
ニコは立ち上がって身支度を始めた。
2章突入!恭一がピンチ!?
はい、いわゆる夢オチというやつですね
でも、ちゃんと意味はある!