4.運命を背負いし者
「…いいか、最初から言うぞ」
恭一にどこかの喫茶店へと連れてこられたニコは、恭一の話を聞いていた。
「さっき現れた怪物は、“ザイノーア”と呼ばれている。とても強くて、普通の人間では歯向かえないし、一般的な武器ではダメージを与えられない。だが、唯一ザイノーアを倒す事ができるのが、魔武具“ウェポン”と呼ばれる特殊な武器なんだ。俺の雷神華も魔武具の一種だ」
そう言って、恭一は爪のような武器を取り出して見せた。五指全てに指の2倍以上ある長さの刃が付いており、それら全てに雷が宿っていた。恭一は一度雷神華をしまうと、ニコの剣を指さした。
「そして、お前の持っているその赤いレイピアも魔武具の一種だな。」
「…これが?」
ニコは自分の拾った真っ赤な細身の剣を見る。ただ落ちていただけの剣だと思っていたのに。だが確かに、これはザイノーアと呼ばれる怪物を斬ることができた。ニコの炎撃をもろともしなかったあの怪物を…。
「そして、魔武具を扱えるのは、聖守者“テラ・ガード”と呼ばれる限られた人間だけなんだ。」
「テラ…ガード?」
「そうだ。俺も…そしてお前も、聖守者だ。聖守者は、ただ魔武具を扱えるだけじゃない。自然の力に守護され、そして希望のカケラを感知し、触れることもできる。例えば俺は、雷に守護されているな。」
恭一は左右の人差し指を突き出し、間を広げる。その指の間を、激しいスパークが飛び交った。ニヤリと笑ってみせる恭一。
「それじゃ、俺が炎を操れるのは…」
「炎…そうか、ニコの守護は炎か」
生まれつきの炎の“能力”。それは、聖守者としての自然の力。信じられない事実でありながら、それはニコの脳裏に浸透していく。なぜなら、それが実体験を説明したものにすぎないのだから。自分の拳を握りしめてみる。ふと、希望のカケラを取り出してみた。形を変える光が、手の中で渦巻く。
「なあ、何でこれは“希望のカケラ”なんだ?一体何の希望なんだよ。」
「それは、もう一度ザイノーアの話に戻る必要があるな。…ザイノーアは、人間の欲望や絶望、憎しみや恨みといった、負の感情から生まれる。それを魔武具で倒す事で浄化され、“希望”へと変わるそうだ。そして、希望のカケラを集めれば、ザイノーアは消滅し、世界は救われると言われている」
ガタン、と椅子が音を立てる。ニコは席を立ち、恭一を見下ろした。
「…面倒な話だ。結局おとぎ話かよ」
突然の行動に驚きはしたものの、恭一はニコの言葉に苦笑した。
「その通りだ。これは面倒なおとぎ話。でも俺は…例え微力でも、自分にしかできないことをやりたい」
ニコは反論できなかったし、しようとも思わなかった。無言のまま、店を出ようとする。
「…もったいねえな、筋はいいのに」
「俺は、自分が何者か分かればそれでいい。面倒な事件に巻き込まれるのは嫌だからな」
「そう…か」
恭一の残念そうな声が聞こえる。自分の分のお代だけ置いて、ニコは喫茶店から出て行った。あてなど、無いままに。
書いていたけど更新放置ー
ようやく世界観が見えてきた…ような気がする
そして、これにて1章は終了~
次回からは2章となります
…ここまで来て、メインキャラ7人のうち、6人は登場しているんだよね
名前が登場してないのがほとんどだけど
あと一人は…1章を書き終わったあとに追加されたので、次章以降に登場する…ハズ!