3.再度の襲撃
旅立ったのはいいが、行くあてがある訳ではない。特に目的がないまま、ニコは情報のありそうな中央へと行くことにした。
中央都市・アルケノイの駅で降り、とりあえず落ち着ける場所を探す。外に出たのは故郷にいると疲れると思ったからかもしれないな、とニコは独りごちた。が、突如聞こえた咆哮に、体をこわばらせる。ここにもあの怪物がいる…? 先日の事件を思い出し、身震いした。…いや、関係無いんだ。あの時は自分の命がかかっていた。でも今度は関係無い。ニコは自分に言い聞かせた。声の聞こえた方から離れようとしたが、どこから現れたのか、目の前にあの怪物がいた。姿は全く同じとは言えないが、あの時の怪物と同じ部類に入るのだということは分かった。それも、1匹ではない。5、6匹の怪物がいたのだ。突然のことに体が硬直し、ニコは逃げることすらできない。そんな彼に、怪物の腕が振り下ろされる。
その時だった。雷鳴が轟き、今まさにニコに襲いかかろうとしていた怪物が吹っ飛んだ。怪物の姿は消え、あの時と同じように“光”が舞う。その“光”を、一人の青年が受け取っていた。
「何ぼさっとしてるんだ!お前も聖守者ならザイノーアの1匹くらい片つけろ!」
現れた青年はニコを叱咤した。彼はスレンダーな体つきをし、左右の手に爪のような武器をつけている。言った直後、怪物をなぎ倒す。“テラ・ガード”も“ザイノーア”も、ニコは聞いた事がない。意味が分からず唖然としていたが、今はそれどころじゃないと判断した。この怪物どもを何とかしなければ…。ニコは赤い剣を握り、青年の背後に回った怪物に一閃する。奇声を上げ、怪物は倒れた。あとの何匹かは、もう既に青年が倒してしまったらしい。あとにはただ、“光”だけが浮遊していた。慣れた手つきで、青年はそれを回収する。そして、ニコに向き直った。
「ありがとう。ごめん、さっきは悪く言い過ぎた。でもお前は…立派な聖守者だ。」
「…別に。恩人が目の前で殺されたなんて寝覚めが悪いからな。」
青年はにっこりと微笑んだ。ニコはそんな彼に顔を背けて答える。
「そうか。俺の名は恭一。よろしく」
「…ニコだ」
恭一は手を差し出し、ニコと握手をした。
「そういや、あれはお前の取った“希望のカケラ”だろ? いらないのか?」
言われて、恭一の指さす方を見ると、怪物から出た“光”が一筋だけ浮かんでいた。ニコが手を伸ばすと、“光”は彼の手の中に収まる。
「ふーん。これ、“希望のカケラ”っていうのか…。」
手の中で輝く光を見つめながら、ニコはつぶやいた。だが、それを聞いた恭一は目を丸くした。
「お前、聖守者なのに希望のカケラを知らないのか?」
「その“テラ・ガード”が何なのか分からないんだが…。」
どうやら本来知るべき事らしいが、ニコにとっては初めて聞いたフレーズだ。そして恐らく、彼自身が知りたいことであるだろう。恭一はニコの態度に顔を引きつらせた。
「…それは俺をからかっているのか?」
「そんなめんどいことはしない」
素っ気ないニコの答えに、恭一はため息をつき、頭を押さえた。
「なるほど? つまりお前は本当に何も知らないんだな」
恭一の言葉に、ニコは軽く頷く。恭一はしばらく何か考えていたが、急にガシッとニコの腕を掴んだ。
「よし、なら俺が1から教えてやる。」
「え、ちょっ…」
そのままニコは恭一にどこかへ引きずられていった。
みんなのお兄さん恭一登場!
ここに来て、名前が出たのは二人目ー
次回は解説という名の説教が待っています(笑)
そして、3話目でようやく仮タイトルの“希望のカケラ”が出てきたw
これが何なのかは次回以降明らかに…!