第一章 第一話 欠けた日常
示された道は一直線。だが、その道はゴールがあっても遠ざかってしまうし、障害もある。
だから、疲れてしまったのかもしれない。遠ざかるゴールに辿りつけないのだから。
それでも、走るのをやめない。例え、疲れて走ることができないなら、歩いてでもゴールをすると私、エヴァリスは誓った。
「んー、飽きたなー。このゲーム」
ゲーセンでお気に入りだったゲームをノーコンティニューでクリアさせてから何気なく呟いてしまう。神術師とは神に仕える存在。それ故、普段は神父や修道女として神のために働く。だが、私は神に仕えるつもりはなく、自分の願いのために人殺しをする神術師の集団、神の手に所属している。なので、人殺しの任務がない平日の朝は現実のゲーセンで遊ぶのが日課になっている。
平日の朝、時間が時間なだけにうるさい学生がいなくて気軽に遊べるのは嬉しいのだが、少しだけ何とも言えない気持ちになってしまう。
結局、ゲーセンのゲームに飽きてしまったので古本屋や本屋、ゲーム屋に行く。古本屋では適当に漫画の立ち読みや面白そうな中古ゲームを探した。本屋では人気のある漫画雑誌を一通り立ち読みして、アニメ化しているライトノベルの冒頭を読んで気に入ったら一気に発売しているだけ買う。ゲーム屋では新発売のゲームを見て、面白そうだと思ったら買い、好きなシリーズの最新作が出ていれば迷わずレジに持っていく。
どこも、学生が好みそうな場所だった。特にゲーム屋はお金を持っている私と同年代の高校生がいても不思議じゃないだが、今はいない。今は平日の朝なので不思議ではない。それを思うと嫌な気持ちになる。
「しょうがない、あそこに行くか。ちょうど今ならいいかも」
自分を元気づけるため励ますように声を出す。今は疲れてしまったので何でもいいから励ましとかが欲しかった。ゴールに向かって走るために。
「楽しそうだなー」
姿を消し、声も遮断して私が見るのは近くにある高校。今の時間は校庭では体育の授業を行われており、生徒達が何らかの運動をしている。今日は男子生徒達がサッカーと野球をしていることが少し残念だった。私と同じ女子生徒達が何かをしていれば、そこにいる自分を想像できて楽しかったりする。
高校の敷地を区切るフェンスを掴み呟いてしまうが、サッカーや野球がやりたいわけではない。ただ、何事も無ければ自分も平和に学生生活を送っていたのだなーと遠い世界に羨望してしまう。そして、思い浮かべる。自分が遠い世界でどのように過ごすのか。
友人ができて馬鹿話に花を咲かせるのだろうか?誰かに恋をして悩んでしまうのだろうか?
そんなことを考える自分の顔は自分でも知りたくないし、誰かに見られるのも嫌だ。だから、普段は変装の術を使って補導防止をしているが、今だけは姿を消す。




