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転生令嬢は剣と舞う  作者: 夙川
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第4話 立ち塞がる壁

 ぼんやりとした中であの子の声が聞こえる……。


「ねぇ、聞いてよー。あの悪役令嬢のお兄様はどうしてあんなに魅力的な方なのよ……」


「いや私まだメインルート半分も終わってないんだけど」


 そうだ……。今あの子と話してて……。


「え?遅すぎない?まさか、アクションゲームに浮気してない?」


「ギクッ。な、なぜ分かったし」


 そう、あの子はなんでもお見通しで……。


「いや、大体〇〇ちゃんはそうじゃんか。気付いてなかった?」


「なんでもお見通しだね。さすが親友」


 そう、私の親友で……。私の、私の名前は?


「いつもいる男子に聞いても分かると思うけどね……」


「そんなことないです〜。それでそのお兄様が?」


「そうなのよ!聞いて!彼クールキャラだと思ったら…… 」


 だと思ったら?お兄様がなに?私の名前は?






「……私は!」


 自分が発した声で私は目覚めた。


(私はシンシア、シンシア・ロサード公爵令嬢の8歳。うん、頭は大丈夫みたい)


 昨夜(ゆうべ)夢で見た過去の記憶でこんがらがった頭を整理していく。そう、私は転生し公爵令嬢になった。転生したのはほんの2週間前だ。もちろん公爵令嬢としての8年の記憶もあり、前世の記憶はあるが癖や口調や食べ物の好みは公爵令嬢のものだし、誰だと聞かれれば全てにシンシア・ロサードだと答えるだろう。ただ、変わった点は前世で猛烈に嫌いだったものや逆に憧れていたもの、習慣などがこちらの世界でも引きずられていることだ。そうしているうちに落ち着いてきたので窓を開ける。涼しい風が入ってきて寝起きの目が覚めてくる。


(そういえば何かあった気がする。なんだっけ?)


 もやもやしたまま動きやすい服へと着替え、途中で厨房に寄り今日の朝食の献立を聞き、生活系の水魔法で生成されたばかりの水をもらい外へ出る。すると三人の護衛に囲まれた、やけに張り切ったお父様がいた。こちらに気付いたお父様はすごい笑顔でこちらに手を振ってきた。


(そうだった。今日からお父様と走るんだった)


「おはようシンシア。昨日はよく寝られたかい?私は楽しみであまり眠れなかったよ」


「お父様は立場のあるお方なのですから睡眠はしっかりととってください……」


「そうだね、明日から気を付けよう。では時間もあまりないことだし走ろうか」


「はい」


 そうしてお父様と並走して屋敷を二周したのだが、お父様は汗の一つもかかず息を切らした私に護衛から受け取ったタオルをイケメンスマイルと共に渡してくる。金色の髪に整った目鼻立ち、高身長、引き締まった身体の非の打ちどころのないイケメンが顔を近づけてくるのだ。例え親子であろうと赤面してしまうのは仕方がないことだろう。特に最高の姿ではない自分であるならば尚更だ。


「あ、あ、えっと、ありがとうございますわ、お父様。ちょ、朝食までに服を着替えてきますので!」


「あっ……」


 そういって私は差し出されたタオルを引ったくり部屋へ転がるように戻っていった。途中で使用人に怪訝な顔をされたがそこは察して欲しい。


「あ、あんなの無理……」


 私は服を脱ぎ急いで汗を拭き取り服を着替える。鏡の前に行き身だしなみを整えたところでメイドが朝食に呼びにきた。そのメイドにおかしな所がないか尋ね最終チェックをした後、食事場へと向かった。






 テーブルには既にお兄様とお母様が着いており、私が座るタイミングでお父様が来て食事が始まった。食事といっても前世より少しパサパサしたパンにハム、キャベツ、スープといったやはり物足りないものだった。しかし、ダイエット中の私にとっては最適な量であった。基本朝食の時には会話は無く、両親はすぐに仕事に取り掛かり、兄と私は家庭教師との勉強をするためあまり時間が取れないのだ。


 朝食を手早く終わらせ家庭教師が来るまで前回のおさらいをする為に足早に自室へ戻ろうとした。そんな時、私にしか聞こえない音量でお兄様が舌打ちをした。


「……バカみたいだな、ブスが……」


 小声で私を罵ったのである。兄であるアラン・ロサードは例のゲームの攻略キャラの一人で、クールで誰に対しても丁寧なキャラのはずだった。そんな彼に面と向かって、しかも小声で悪口を言われたことに愕然としたが、どうにか表向きの平静を保ち何も聞かなかった風を装いその場から離れることができた。






 部屋にたどり着き歴史の書物を開いたわいいが先ほどの出来事のせいかまったく集中できずにいた。


(確か、取説のキャラ紹介じゃクールで丁寧な貴公子であるって書いてあるだけだったし、メインルートではほとんど関わりがなかった。そういえばあの子が何か言っていた気が……)


 ノックの音が響きと私は飛び上がってしまった。瞬間に身だしなみをチェックし返事をする。


「どなたでしょう?」


「お嬢様、家庭教師のエルライ様がお越しです」


「お通ししてください」


 扉から入ってきたのは初老の男性だ。トリム・エルライと言って現トリム男爵の叔父にあたる人物で暇があったら私の勉強と魔法を見てもらっている。転生後は密かに略してトライさんと呼んでいる。


「ではシンシア様、今日の歴史の授業を始めますかな」


「はい、よろしくお願いしますわ」


 このトライさん、教え方は非常に上手く人の見極めもできる方だ。何せ私が生まれる前に起こった戦争では魔法士の大隊を率いて勝利に導いた英雄の一人だからだ。


 授業はいつも通り進んでいたはずであったがトライさんは授業を中断した。


「どうかなさったのですか?」


「それはシンシア様には何か悩みがおありの様子。いつもより上の空であった故止めさせていたただいた」


「そ、それは失礼しました!」


「いえ、優秀なのは相変わらずですので大丈夫ですよ。そうですね、今日はここまでとしておきましょう」


「申し訳ありません」


「いえいえ、たくさん悩まれるとよろしい。悩んだ分自らの糧となるのですから。もし、自分ではどうしようもないなら身近な大人に頼りなさい。きっと、力になってくれるはずです。もちろん私も微力ながら力をお貸しします」


 ダンディなトライさんを跪かせてしまいあたふたとする私に微笑むトライさん、何も言わず隅で待機するメイドという謎の空間ができてしまった。


「お、お立ちになってください。私は英雄を跪かせるような器ではございません」


「そんなことは……いえ、貴女はそういうお方でしたな。失礼。しかし、力になるというのは本心。なにかお困りなら何なりとお頼りください」


「ありがとうございます。ですが、もう少し自分の中で悩みたいと思います」


「そうですか。では私は何も言いますまい」


 そうして少し早く授業が終わりトライさんを見送った後、私は午後のダンスの練習までの時間トレーニングをしようと服を着替えた。


(走ったら少しは気が晴れるかな)


 屋敷をいつもより緩急の幅を大きくして屋敷を3周走った。当然体力がない私はいつもならへばってしまうのだが、もやもやを振り払おうと無我夢中だったためか走っている間は全然疲れを感じなかった。


(まぁ、終わってからどっと疲れが出てくるんだけどね……)


 早く汗を拭きたいと部屋に急いでいると曲がり角から誰かが現れた。びっくりして固まっていると、それはお兄様だった。お兄様は汗だくの私を見ると鼻で笑った。


「なんだ、暑苦しいと思ったらお前か」


「お、お兄様?」


「そうだ、お前に良い報告があるぞ。そろそろお爺様が来られるそうだ。私はお前のためにお爺様に訓練を付けていただけるように言っておいた」


「えっ!?そんな……」


「はんっ。せいぜい無駄な肉をそぎ落としてくるのだな!まぁ、絞られすぎて搾りかすになってしまうかもしれんがな、ははははは!」


 そういうとお兄様は私とは反対方向へと去っていった。私は愕然としたままその場に座り込んでしまった。







今回も読んで頂きありがとうございます。


私もトレーニングはしているのですがテスト勉強で引きこもりがちで体力面と肉体面にに多大な影響が……。

私はシンシアのようにチートボディではなく太り易いのでまだマシなうちに走って体力をつけたいと思います。

皆さんも夏バテで体力が無くなればトレーニングさえ出来なくなるので体力はつけておきましょう!その前に食事はしっかりと。抜いても体力無くなるだけですからね!

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