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男装のエース  作者: 刻野尾灯
6/6

第6球:4月21日 金曜日 午前7時30分

芝桜高校1年A組の祖師ヶ谷大蔵進そしがやおおくらすすむは、いつもクラスで一番早く登校する。

特に大きな理由があるわけではない。強いて言うなら、彼の性格的な問題だ。

毎日決まった時間に起き、テキパキと朝食を済ませ、さっさと家を出る、一種のルーティーンのようなものだった。


制服の着こなしも校則にしっかりと従っていて、髪の毛もセットされている。


祖師ヶ谷大蔵進という人間は、そういう真面目な性格なのであった。



午前7時30分、一部の教師と事務員しかいない校舎に祖師ヶ谷大蔵は入った。

そして教師のドアの前でふと立ち止まった。


祖師ヶ谷大蔵は教室の電気がついていることに気がついた。

入学して約2週間、毎日教室の電気をつけるのは、いつも祖師ヶ谷大蔵だった。



−珍しい。今日は、もう誰か来ているのか。−



教室のドアを開けると、佐倉南が祖師ヶ谷大蔵の席に座っていた。



「おはよう!」



「おはよう。佐倉さん、今日は早いね。」


「ちょっと祖師ヶ谷大蔵君に用事があってさ!」


「僕に?」


「うん。どうしても、祖師ヶ谷大蔵君とふたりきりで話したくて。

 いつも、早く来てるから、今日も来るかなって。」


「それは…まぁ…うん。」


「いつも、早く来て何してるの?」


「適当に…本、読んでる。」


自分の席に座っている佐倉を見下ろしながら、

祖師ヶ谷大蔵の鼓動は、少しずつ早くなっていた。


「本好きなんだ。なんか…本読む人ってカッコいいよね。」


佐倉の口から出た「カッコいい」という言葉で、

祖師ヶ谷大蔵の鼓動はさらに早くなった。


「それで、俺に用事って…なに?」


「あのね…。」


座っていた佐倉が立ち上がった。

その距離感の近さに、思わず祖師ヶ谷大蔵は一歩下がってしまった。


「祖師ヶ谷大蔵君…結構身長大きいんだね…。」


佐倉からシャンプーの良い匂いがする。

祖師ヶ谷大蔵の鼓動はもはや、バスドラムを叩いているかのようにドン、ドンと強くなっていた。


「あのね…。」



他の生徒が続々と登校して来たのは午前8時ごろ。

それまで佐倉と祖師ヶ谷大蔵は、ふたりきりの時間を教室で過ごした。

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