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‐殺伐淡白無気力少年は、捨て猫拾い、拾われる、

‐殺伐淡白無気力少年は、捨て猫拾い、拾われる、

 

 俺はニートだ


 どうだ参ったか、ドヤ顔ニート、ここに現れる


「あんたなんてっ、あんたなんてっ、!!すぅっ、、!ていへんっ!!なんだからねぇ!

って自分に恋する少女に言われたいニートな奴ぅぅぅーー!!」


 イヤホンから、某萌え声生配信者の声がする。


 さて底辺とは、何だろうか、誰だろうか?

 それは俺だ。


「はぁ、だりぃ」


 俺は公園でボウットしている。

 働きもせずに、平日の昼間から、余生老人のような暮らしをしている。

 生活の基盤は親、つまりニートだ。

 働いたら負けとか思ってない。

 生きる希望も、目標も活力も何もかもが無いから、何もしていないだけだ。

 別に働いてもいい、だけど燃料がないから、能動的なことが一切できない、受動人間なのだ。

 だからといって、マニュアル通りにも動いたりしない。

 俺以外の、例えば社会や世界や、目に見える他人が、俺に圧力や圧迫を与えるレベルで無いから。


 これから、果たしてどうしようか、、とか徒然考えている。

 公園のベンチに座って、五月の適度な日差しに焼かれながら、昼飯どうしようかも並行思考している。

 親に見捨てられたら、男らしく死のうとか、考えた。

 底辺で働いたり、ナマポをもらったり、いろいろあるだろうが、全て能動的である、だから死ぬのだ。

 それが結論、だが所詮は”暫定”のだ。

 次の一瞬間には、もう一人の僕的存在が、「それは嫌だ」とか言って、別の結論を振りかざして対論する。

 もう思考の迷路に嵌って、何もかも進まない、これが哲学かと悟った所で、一旦思考を切った。


 俺の自己紹介をしようか。

 一言に無駄にスペックが高い感じだ、働いてないのにな。

 税金払って無いのに、道路歩いて罪悪を感じながら、悦的なそんな思考しながら。

 道路隅に捨てられている、ダンボールが視界に入る。

 まともに働いてない癖に、事実として俺は一端に社会を知っている、ほとんど力技で学んだ。

 猫が入っていた、心なしか涙目である、俺をジッと見つめる瞳はキラキラしている。

 ロリ猫だ、幼女猫だ、いや女か知らんが。

 とりあえず、余りに庇護欲をそそるので、抱き上げてみる。

 猫らしく「にゃー」とか「にぃー」とか、泣くと思ったが、無言だ。

 それが更に保護欲、というか取得・収集欲すらそそってくる。

 俺は受動人間だ、だから俺はねこを持って帰った。


 家は一軒家だ、二階が俺の部屋だ。

 もちろん当然の事実として、平日の昼間、普通の人間はバリバリ頑張って働いている。

 母も父も共働きで、家に居ない、自分の部屋に猫を放って置く。

 なにかあげないといけない気がして、コンビニでペット用の食べ物を買いにいく。


「ほら、食べろ」


 猫にエサをあげた、いや、ここは食事と言っておこうか。

 むしゃむしゃ食べてる食べてる。

 そんな様子を眺めながら思う。

 さて、これからどうしようか?


 俺は夜まで考えて、所詮何も出来ない事を悟った。

 両親が帰ってきたので、素直に猫を拾ったことを告げる。

 もちろん反対された、俺の親は至極普通なのだ。

 それでも、俺は受動人間なので、猫が俺に与えた庇護欲には逆らえない。

 猫の為に働く、と言うと。

 親はまさかって顔をして目を丸くした後、なぜか態度を豹変させた、さて、なぜだろうね。


 とりあえず夜食を買いに行くついでに、コンビニのタウンワーカーの冊子を取得した。

 取る瞬間、なんとなく抵抗感があったが、なぜか意味が分からなくなり、どうでもいいと思った。

 家でペラペラ捲ってみる。

 家から近ければどうでもいい、何でもいい、それで探した。 

 あるある、腐るほど仕事があるじゃないか、って思った。

 とりあえず、近くのコンビニは駄目だな、俺がニートだって勘付かれてるしな。


 俺がそんな風にベッドに腰掛けていると、猫が寄ってきた。

 この時はじめて、実感として存在を認識した。

 うんてか、そういえば、ペット飼うのって、もっと大変じゃなかった?


 俺は次の日ペットショップに行こうと思った。   


 そして次の日、親から金をせびって、件の場所に行った。

 家から少し離れた、大型デパート、その内部テナントの一、そこにある事は知っていた。

 何時も何時も、可愛らしい猫が、購買欲をそそる為に、通路から見える位置にいるので、見ていたのだ。

 とりあえず店員に、一式をお願いした。

 そこからはスムーズで、金には糸目をつける必要が無いほど、低額で済んだ印象だ。

 両手を一杯にして、もてるかどうか、微妙な物量を家に運んで、猫を飼う為の領土を築いた。


 さて、昼も過ぎた頃だ。

 これからは就職の時間だ。

 昨日見た限りでは、家チカでたくさん仕事があった。

 個人的には、猫扶養の為の最低限度の金さえもらえれば、本当にどうでもいい。

 週2回くらい働ければいいだろう。

 あ、そういえば、さっきのペットショップに求人が掛かっていたっけ?

 それは、ショップ店員の女の子が可愛かったとか、そういうの関係ない。

 普通に家チカが理由だ、駅二つ経由するけど、十二分に家チカ圏内だろう。


 二十分後、ペットショップの電話番号を調べて、コールした。 

 さっきの店員さんの声がした。

 要件を伝えると、少し年上の上司っぽい人が出た。

 かくかくしかじか、面接の予定日を伝えられた、あと持ち物も。


 とくに用意するものも無い、面接予定日になった、猫は普通に可愛かった。

 祝日の午後、燦燦と太陽の中、普段着で行く。

 面接は上司さんで、いろいろ聞かれた、とにかく色々。

 普通に話した、話せると思っていたから、特に戸惑うことも無かった。

 マニュアル通りではない、臨機応変に、働かせてもらう為に、いま自分が言える最善を尽くした感触。

 大方終わって、是非働いて欲しいとのこと、次の週からシフトを出して欲しいので、その場で書いた。

 あとそれまでに銀行口座を開設して欲しいとの、こと。


 その日の胸を両親に伝える。

 色々言われたが、どうやら、これを切欠に社会復帰して欲しい、らしい。

 個人的にも吝かではないので、善処すると言っておいた。

 猫と戯れて、バイト初日まで徒然過ごした。


 駅で二駅、通勤は50分程度。

 四時間労働の為に、二時間程度を別に費やすのが疑問に思わなくも無い。

 大型デパートの、テナントペットショップ。

 これは接客である、まあ高確率で出来るだろう。

 通勤中、脳内シミュレーションとかしておくか?とか思ってる内に着いた、ちなみに昨日少ししていた。

 バイト初日はどうなることやら、緊張しなくも無い。


「俺は行かなかった」


 俺は、ニートで居たかったんだ。

 そう、ニートが、俺の唯一のアイデンティティのようなモノだと、失いかけて、初めて知ったのだ。。。

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