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異世界トリップ決定

 車の中には晴れやかに笑う先輩と、恐怖でゆがんだ顔の男。

 やがて僕らの行く先に、見慣れないヨーロッパ風の田舎町が見えてきた。

【リルムの町だ!】

それを見て男はひきつったまんまでちょっと綻んだ。逆にそれを聞いた先輩の方が苦虫を噛みつぶした顔になって、車を停めた。

「やっぱり、さっきの光で僕たちの方がとばされたみたいですね。異世界トリップってやつですかね」

思案顔で僕がそう言うと、先輩は僕の頭を叩いて、

「何、冷静に分析してやんだ。ったく、やっぱりお前と一緒にいると禄なことがない」

とハンドルに突っ伏した。

「だぁからぁ、先輩が運転してたんだし、僕の所為じゃないですって!」

「うるさい、黙れ! なら俺の所為だとでも言いたいか」

「別にそんなこと、言ってないでしょ!」

 だけど、僕たちがいつものように言い合いを始めた時、はじめは呆気にとられていた男がクスクスと笑い出した。

【おい、何笑ってんだ。それと、お前名前は?】

【マシュー、マシュー・カール】

すると先輩はむっとした顔のまま男に聞いた。

「先輩もこの人の言葉判るんですか?」

「お前がさっきこいつのしゃべってるのは英語だって言ったろ。お前にできることが、俺にできない訳あるか!」

僕が驚いて聞き返すと、先輩はそう言った。でも、よくよく考えてみると、名前聞いただけなんだよね。それだったら誰でもできる……なんてことは口が裂けてもいえないけど。

【で、勇者様方のお名前は】

【俺? 俺は鮎川幸太郎。あ、コータロー・アユカワ、わかるか?】

「OーOh,コータル、コータル!」

そしたら、マシューは幸太郎をコータルと聞き間違えて、妙な表情をした。だけど、

「コータロー」

と、先輩が口をひん曲げて訂正し、

「コータロ? コータロ」

と反芻すると、とたんに笑顔になった。先輩に似たコータルって名前のやつと、なんかあったのかな。

「ま、これが限界か。OK」

OKと言われて、マシューは次に僕を指さしたので、

【僕は宮本美久。ヨシヒサ・ミヤモト】

「ヨッシャ?」

「ヨシヒサ!」

幸太郎が、コータロ呼びなんだから、美久をちゃんと発音できるとは思わないけど、それでもヨッシャはいただけない。

「ヨッシャ?」

「よっしゃ、よっしゃそれでいい」

ヨッシャと言ったマシューに、先輩はうなづきながらOKを出す。

「勝手に決めないでください。よっしゃよっしゃって、何十年か前の政治家じゃあるまいし、良い訳ないでしょ!」

名前を聞かれてるのは僕なんですよ。

「お前も古いな。じゃぁ、音読みでビクとでも呼ばせるか」

「音読み? ヨシでもヒサでもあるでしょ?」

まぁ、ヨッシャよりはまし……そう言いかけた僕に、マシューはビクというワードに反応し、

「Oh,ヴィク! ヴィクトリア!! OK、OK」

と満面の笑みで理解? を示した。

 だけど、ヴィクトリアって……

【ダメです、やっぱりダメ!! ヴィクトリアって言ったら女性の名前じゃないですか。ダメ、Not Victria! I’m not female!】

「Not female?」

慌てて訂正した僕に、マシューは目をまん丸にしてそう聞き返した。


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