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変な、第一村人? 発見

 僕たちが駆けつけると、声の主は茶髪で碧眼の男だった。男は大きな荷物を今度は犬? オオカミ? みたいなヤツらに取られようとしていた。その男自身、先輩並みにデカイし、一匹くらいならどうってことなさそうだけど、相手は四匹もいて、その上その中の一匹が指揮して集団的に動いているという小賢しい群行動型で、追っ払いきれないよう。

 さて、参戦しようとした僕は、自分がリンゴを車の中に全部置いてきたことを思い出した。僕がそのことに気づいてあたふたしていると

「宮本、お前は下がってろ!」、

先輩はそう言って、スパナで犬もどきをボカボカと殴ってあっと言う間に退散させた。


【助けてくだすって、本当にありがとうさんでやんした。この中には王都にもって行かなきゃならんでぇじな手紙が入っていたもんで、焦ったです】

その男の人は何度も頭を下げながらで早口にそう言った後、先輩の顔を見て一瞬、顔色を変えた。

【オウト? オウトって何?】

けど、僕がオウトを尋ねるとなんかほっとしたような顔になって、

【王都と言えば、王都グランディーナに決まってるでしょ? おかしなことを聞かんでくださいよ】

と返す。

「先輩、この人変です」

「確かに変だな。

さっきから出てきている変な化けもんと言い、この外人と言い、確かに妙だがな、俺に言わせりゃお前も変だ。大体俺には何を言ってるのかさっぱりわからん。そんな男とちゃんと会話できているお前っていったい何だ?」

「えっ、先輩わからないんですか。この人王様に届ける手紙を守ってくれたってお礼言ってるんですけど」

「お前こいつがしゃべってることわかるのか?」

ものすごく驚いてそう言う先輩に、僕は逆にビックリしながら頷いた。確かに早口だったし、ものすごく訛ってるけど、この人のしゃべっているのは基本英語だ。それがわかれば、時々くるう文法を少し修正すれば内容はつかめる。それが証拠に、僕の頭はこの訛った英語をごく普通の日本語に変換し始めている。

「だって、この人のしゃべってるの英語ですよ」

「英語?」

「ええ、かなり訛ってますけど」

「宮本、お前帰国子女か?」

「いいえ。大学英文科でしたけど、外国なんて一度も行ったことないですよ、僕」

「じゃぁ、何で解るんだ?」

「僕授業ちゃんと出てましたもん」

外国に行ったことがないと言った僕に信じられないと目を瞠った先輩に、僕は胸を張って答えた。へへへ、大体、語学は昔から得意。というか、何も辞書を引かなくても単語は全部解かったし、授業で困った事はない。僕自身ネイティブ日本人で、周りに英語圏の人なんて一人もいなかったんだけど。変かな……

 

「……とにかくだな、この男が変なのかお前が変なのかもう少し行ってみれば判るだろ。おいそこの、お前も乗れ! ……Ride in this car」

先輩はひとしきり頭を抱えてから、そう言って男に車に乗るように強要した。

【この車に乗ってくださいと言ってます】

だけど、先輩に車に乗るように言われてもきょとんとしている男に僕が通訳する。

【コレに? 馬のない馬車に……ですかい? 勇者様方も、モンスターに襲われて馬を盗られたんですねぇ。それでおいらを助けて下さったんかぁ。ここでまず一休みしてから出発ってことですね。んじゃま、Lady】

男はそう言って、先に僕が乗り込もうとしていた助手席のドアを開けると、僕の手を取った。そして、僕が乗り込むとおもむろにドアを閉め、自分は後部座席のドアを開けて荷物をドンと放り込むと自分も乗り込んだ。僕は勇者様とLadyという単語にすごく嫌な予感がした。その部分だけは先輩も理解したらしく、僕の顔を見てぶっと吹きながら車に乗り込む。

【で、これからどうするんですかい】

それから身を乗り出しながら聞いた男に、先輩は答える代わりにエンジンをかけ、思いっきりアクセルを踏んだ。

【ば、馬車が……馬もないのに走って…… ぎゃぁ~ お助けを!!!】

 続いて車の中には、僕たちが駆けつける時に聞いたよりさらにひきつった悲鳴が響きわたったのだった。 


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