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異世界とりかえばや物語

 この世界には私たちの住むこのオラトリオの大地とは別に、いくつかの大地があるのです。その世界――仮に並行世界――と申し上げておきますが、その並行世界には私たちとそっくりな人々が違った生活を営んでいます。

 実は私は十一歳の頃、偶然ニホンに飛ばされたことをきっかけに、そのニホンのことを研究し、ニホンが魔法を介さずに病や怪我を治してしまう治癒技術を持っていることや、私の映し身の美久に私が殿下に仕えるようになった同じ時期に殿下にそっくりな男、鮎川幸太郎氏と職場で出会ったことを知っていました。

 最初、私はこんな強引な方法を採らず、ただ出かけていって、幸太郎氏に殿下との交替をお願いするつもりでいました。

 しかし、界渡りの呪文を唱えて私がニホンに現れたとき、彼らは道に飛び出してきた少女を避けて彼らの乗っている自動車という大きな鉄の塊を急旋回させてまさに道の端にぶつかろうとしていたのです。

 私が殿下に仕える時期に美久が幸太郎氏と出会ったように、この並行世界では、環境の違いで出来事は違ってはいますが、こちらが危険になればあちらでも似たような事が起こるようでした。私は、とっさに時間を止める魔法をかけました。

 私はどうしたものかと思いました。このまま時を進めても彼らは無機質な道具にぶつかっていくだけで、彼らもまた治癒が必要になるのは目に見えています。


 私はまず、彼らの乗っている自動車のレプリカを作りました。内部などは全く分からないので適当ですが、結果壊してしまうので、何ら問題はないと思いました。そこに彼らが持っていた火の属性をもつ魔道具(美久はそれをチャ○カマンと呼んでいましたが)を少量もらい受け、その上で、彼らを自動車ごとグランディールへと送りました。

場所の特定まではする余裕はなかったのですが、結果街道筋近くにたどり着いたようです。ただ、時間を止めた反動なのか、私たちが襲われてから約一月も経ってはいましたが。

 一方、私はそのままトレントの森に戻って殿下をニホンにお連れし、レプリカを障壁にぶち当てた後、魔道具に炎系の魔法をぶち当て、大破させました。

 そして私は、殿下とともにその大破した張りぼての中に倒れ込み、時を戻したのです。私自身も無傷ではありませんでしたし、高度な魔法を連発した衰弱も相まって、ほっとした途端私も一旦は意識を手放してしまいました。



【しっかしまぁ、よくそんなんで……お前が王子は無事だって言うからには、ちゃんと王子は俺として病院で治療受けてんだろ? 日本の警察はいったい何やってんだって感じだな】

と、呆れながら言う先輩に、

【ええ、しかし幾分衝突と言うには不可解な傷が多々あるにしても、私たちはあなた方の身分証明書を持参していますし、生存している間は治癒師の領分ですから、警備隊はそこまで関われないようですし】

セルディオさんはしれっとそう答えたそうです。

【まぁな。医者が必死こいて助けようとしてる時に、警察が茶々入れても医者が怒鳴ってそれで終わりだろうけどよ。それでもなんぼなんでも、王子目が覚めたら全部ちょんばれだろうが】

リスク高過ぎだろと言う先輩に、

【ええ、ですから殿下にはこちらにお連れする目途が経つまで眠りの魔法をかけてあります】

セルディオさんは笑ってそう答えました。

【は、至れり尽くせりなことで。ドッペルゲンガーなのに、宮本とはえらい違いだな】

先輩はお手上げしてそう返したそうです。(でも、僕とはえらい違いだって、それどういう事ですか)


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