何もしない感じで…?
初めてCASE4:YUZUがCASE3って誤入力されてたことに気付いた…紛らわしい間違い、すみません!
ちっくしょーアルビノボーイの誘いになんか、のるんじゃなかった。
私の周囲にいる人は、どれだけ顔ぶれが違ってもやることは変わらない。自分達には解決できないと思った面倒事を、私に押し付けてくる。自分達にはできなくて、私にはできると思っているんだ。ほんと、人間って何もしないよね。
…それをぶつくさ言いながら引き受けてしまう私も私だけどね。
アルビノボーイに面倒事を押し付けられてから…それからも香坂さんは学校で時々見かけたけど、その表情は日に日に沈んで行った。
何だか、調子が狂った。声をかけるタイミングが悪かったって言うか…
例えば、香坂さんを私のフレンズに加えて弁当食べようと考えた。香坂さんのことだから、いつも学校が早く終わってもいつも図書室にこもっているだろうと思った。ところが、だ。
いつもなら、香坂さんは図書室にいるところを見かけたのに、夏休みになってからその姿を見かけない。香坂さん=本の虫っていうのは、私の思いこみだったんだろうか?ううん、夏休みで文化祭準備とか、国立大学受験の補講の為に学校に来る以外は、私達はとくに時間に縛られない。
香坂さんだって、いつも図書室にいるわけではないのかもしれない。
と考えた私は、香坂さんを見かけた時を狙って声をかけようとして…無残にも失敗。私が急に彼女を気にかけるようになったのは、アニメイベントのチケットが欲しいという不純な動機もあったけれど…何だか、いつも通りの嫌な予感がしたから。
「――だっていうのに…」
今日だって、声はかけられなかった。
私が臆していたわけじゃない。香坂さんの方が、私を見た途端、まるで私を避けるようにして逃げていくからだ。つまり、急に彼女が私をシカトし、避けるようになったってこと。
ふつふつと苛立ちがわきあがり、いっぺん頭を蹴っ飛ばしてやろうかと思った。
「いきなり何なの…?」
かなり腹が立った。頭にきた。私も弱気メガネっ子を追いかけまわしていられるほどヒマじゃない。こんなことが二回も三回も四回も続くと、こっちだって頭にくる。私を避ける子を心配するなんて、ほんと馬鹿げてる。
そんな感じで、夏休みに入って一週間目が過ぎた、そんなある日のことだった。
メイド喫茶と執事喫茶の当番を決めたり、テーブルや椅子、メニューの確認とかする為に、再び桜組は清羅学園に登校していた。その頃には、最早メイド服は逃れられないと諦めきっていたし、咲真はクラスの中で一番嫌そうな顔で執事服を試着した。
この日は文化祭準備が終わっても帰れない。マジで最悪。学校主催の夏季講習に、私は参加申し込みをしていて、ちょうどその日の午後から夏季講習は始まる予定で…食堂は閉まっていたけど、売店は開いていた。私は自分の食事を買いに行く為に一人教室を出る。階段を駆け降りた。
その時に、前を歩く香坂さんの後ろ姿を発見した。私よりもずっとのろのろと階段を下りていた。次の階段で方向転換する時に彼女の俯いた顔が見えたんだけど、その顔…左頬に大きな湿布が張られていた。傍目にもわかるぐらい、左頬だけ大きく腫れあがっている。
…一体何があったっていうんだろう。あの傷さえなければ、私は彼女を無視して通り過ぎるつもりだったのに。
「香さ…」
かさん、と言いかけた。
でも、下から階段を駆けあがってきた誰かが、香坂さんに声をかける。
「ゆずちゃん!どうしたの!?」
てっきり香坂さんの友達かと思ってそっちを見て…へ?と間抜けな声を出しそうになった。
「えっと…ちょっと、親とケンカしちゃって」
「うっそぉ!その傷、マジでやばくない!?ちょーどゆずを呼びにいこうと思ってたんだ、一緒に売店行こう?」
「うん…いいよ」
その二人は、私のことなどまるっきり視界に入れずに仲良く階段を下りていく。
「…マジで、意味わかんない」
あんな、癇癪持ちの女が…
あれほど弱気メガネっ子をがみがみ怒っていた女が…?
っていうかあの弱気メガネっ子が静かに私に愚痴っていたあの女が。
アルビノボーイから聞いていたことと私が見たことを総合した限りでは、黒木里香が笑顔で香坂ゆずに話しかける可能性なんてゼロ%に近いんだけど…?
―――――…
「やっぱり、問題は起きてると思うよ」
夏期講習が終わるのを待ってアルビノボーイに問い詰めた。彼はバスケ部の試合に備えた合宿の為に学校に来ていて、必然的に私はバスケ部の部室から彼以外に誰も居なくなるのを待たなきゃいけなかった。あっさりと彼が私の疑問を肯定してくれたことで、私は安心して話を続ける。
「ねぇ。やっぱりおかしいと思った。香坂さんがあんまり仲良くしなさそうな人だし、…その、黒木?さんって」
「僕がちょっかいだしたら絶対面倒なことになるし…」
「おかしいことはもうひとつ。香坂さんって、初めて会った時はよく私に話しかけてきた。なのに今は、私が声かけようとするとシカトして逃げていくんだよね」
「そうなの?じゃあもっと面倒じゃん…」
「面倒なのはこっちだし。私は桜組で、そっちは若葉組なんだよ?あんな扱いされてもあいつを追いかけまわしていられるほど私はヒマじゃない」
「…千華。君ならわかってるんじゃない?香坂さんが、沢原千華に対してシカトするなんて勇気ある行動とれると思う?」
…う。そう言われると、何も言えない。
「やっぱり、何かあるんだよ。香坂さんが君を無視するようになったのも、急に黒木さんと仲良くなったのも…絶対、裏がある」




