表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
三秒殺しの日常  作者: 縁碕 りんご
日常~6月上旬~
53/104

身体測定

もう学校に疲れました…新学期早々。

 「心ちゃんっ…車椅子、とれたんだね…おめでとう!」

 「はい…分厚い包帯を巻かなくて良くて、本当によかったです」

 今日は身体測定。午前中の3時間目と4時間目を潰して、面倒なその行事が行われる日に、まだ包帯はとれないながらも、心ちゃんが車椅子なしで登校してくるというハッピーな出来事がおきた。

 

 ふと、4月のあの時を思い出して、私はちょっと気まずいながらも話しかける。

 「…まだ、犯人は捕まってないんだってね」

 「ええ…でも、もういいです。今は全然命を狙われるようなことはありませんから。もう一人で体操服に着替えられるようになることが、今は何より嬉しいんです」

 なんて、心ちゃんは笑顔で答え、ガッツポーズをつくってくれる。…なんだかけなげだ。こんな可愛い子を全力で殺しにかかる奴がいるなんて、とても考えられない。

 

 ふと、後ろからまた抱きつかれそうになり、さっと体を回して両腕をホールドアップさせる。私の首ぐらいまで身長が伸びた子規くんだった。まるで私が何かのエスコートしているみたいで何だか嫌になった…。男より身長高いって何だか悲しくね?

 「また抱きつこうとしたでしょう」

 「スキンシ…「それ以上言ったら両腕の関節外す」そんな怖いこと言わない言わない~」

 「……」

 他の教室で着替えていた男子がぞくぞく戻ってくる中に、黒錐咲真にしがみつき「もう疲れました」って顔をしている白石一樹がいた。

 「どうしたの二人とも」

 「女子に着替え中を盗撮されそうになって…咲真が追い出してくれた」

 「……」

 一眼レフを片手に頑張って男子が着替えているところを隠し撮りしようとする変態ファン達を想像した。…私までぐったりと両肩を落としてしまうじゃないか。

 「でも逆パターンもあるんですよ?」と子規が言うので、どういうことかと言うと、

 「ほら、カノジョランキングを知ってますよね?心の着替えとか、盗撮されてないといいんだけど…」心ちゃんの声をかなり低くした声と同じ口調で、子規は「どうだった?」って感じで私を見上げてきた。

 「あぁそれなら私が追い出した」

 あいつらね。カーテンの隙間から覗くカメラのレンズ。それを私が見逃すはずはない。

 「カノジョランキング」にベスト3入りした女子の顔写真とか、着替えの写真は高値で取引されるっていうけど…3位に入ってしまった私にとってもそんなことになったら嫌だし、何より心ちゃんの着替えを撮影するなんて私が許さない。

 …っていうかなんで私が3位に入ったんだろう…?と考えている側で、心ちゃんが長い髪を揺らして何かを力説していた。

 「カッコよかったんですよ、千華さん!カッターシャツの着崩し具合が何だかすごく似合ってました!」心ちゃん…一体何に着眼しているんだろう?


 ***


 …何だかさ。美男美女多すぎないかな。真剣にそう思うんだけど。

 ほら後ろからアルビノボーイが爽やかに挨拶してまたすれ違って行くし、エセ殺人犯は私の前じゃウソみたいに優しい笑顔になる。白石一樹はもともと美形だし、琴峰兄妹だって…超可愛い。アラステアはアレックスと一緒に、一定の距離を保ちつつ私達に着いて来ている。けど外人は美形だ。

 優子がこんなところにぽんと置かれたら、きっと興奮して騒ぎだすに違いない。


 「あのっ!」

 体育館に入る前に、男子に腕を掴まれ、それを無理やり振りほどこうとしている女子を発見した。その周りに、野次馬ができ始めている。男子の後ろには、「ふぁいっとー!」と応援する男子達の群れが。

 如月さんだった。

 この前から、私はハーフな人とばっかり友人になったり知り合いになったりしているような気がするんだけどね。

 「楓組の如月さんだ。また告白されてる」

 本当にご愁傷さまだ。如月さんのモテっぷりは学校内でも周知の事実だった。本人はきっと不愉快に違いない。好きでもない奴から繰り返し呼び出されて同じ言葉を言われるんだから…と、野次馬の中を通り抜けようとした時、如月さんの怒鳴り声が聴こえた。

 「…キモい。そんな手で私に触るな!」

 豊かなふわふわ髪が靡いて、つかつかと体育館に消えていく。


 一方、振られた方は悄然として、回りに慰められながら、彼女と同じ目的ー身体測定を受ける為に、同じ体育館の入り口に入って行った。

 「球技大会でもかなりアピールしていたらしいね」

 「へー…如月さんの気持ち、わかるなあ。あんた達を見てても、美男美女が必ずしも得をするとは限らないってわかったし。男子も女子も、誰かを好きになると随分と一方的になるようで…」

 「その点大いに助かってます。千華さんがいることで」と心ちゃんが口を挟んできた。

 「へ?なんで?」

 「男子も女子も、千華ちゃんに張り倒されるのが怖くて僕らに近付けないんだって♪」一樹がいかにも満足げに付け加えた。

 「千華ちゃんは、この状況を楽しんだことはないの?」

 「何を?」

 「だってー、自分で言うのも何だけど、子規も咲真も、この僕も心ちゃんも、けっこうモテるんだ。で、休み時間になるとその人気者達とご飯食べるし、人気者と一緒に行動するでしょ?逆ハ-だとか

考えない?」

 …自意識過剰だなあ…って言ってやりたいけど、本当にその通りだった。

 咲真はあの「殺人ビーム」のおかげで比較的平穏な生活を送っているけど、それでも複数の女子から熱い視線を浴びている(本人は気付いていない)。そして肝心の白石一樹と琴峰子規は、その美形から超モテモテ。女子からの「お呼び出し」は数え切れず、今は無視しているという。

 確かに、そういえば授業時間が終わる度、昼休みになる度、そのモテ系に取り囲まれている気がするんだけど…

 

 「楽しむとかいう前にどうでもいいかな。皆は皆でしょ。たまたま友達になった奴が美形だった。それだけだよ」



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ